スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「澎湃」「橄欖」「棗」…本日も出そうな言葉が目白押し〔芥川龍之介作品学習シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕③

 

【煙草と悪魔】


  ●磔(クルス)

 「これなら、ちょいと磔を爪でこすって、金にすれば、それでもかなり、誘惑が出来そうである。」

 →十字架のことですが、宛字の訓読みですね。ポルトガル語の「Cruz」からの連想でしょう。1級配当で、普通は「はりつけ」。音読みでは「タク」。熟語に「磔刑」(タッケイ、タクケイ)があります。

  ●《漏斗》(じょうご)

 「その中に、この植物は、茎の先に、簇々として、花をつけた。漏斗のような形をした、うす紫の花である。」

 →液体を口の小さい容器に入れる際に使う喇叭形の道具。熟字訓。音読みで「ロウト」。ちなみに、「簇々」は「ソウソウ」で「集まりむらがるさま」。「簇」は1級配当で、訓読みは「むら・がる」。「むらがる」は、「叢る」「
がる」「麕がる」「蝟る」「蜂がる」。

 ●禁遏(キンアツ)

 「それから、豊臣徳川両氏の外教禁遏に会って、始の中こそ、まだ、姿を現わしていたが、とうとう、しまいには、完く日本にいなくなった。」

 →おしとどめてやめさせること。「遏」は1級配当。音読みは「アツ」、訓読みは「とど・める」。故事成語の「遏雲の曲」(アツウンのキョク=流れ行く雲を止めるほど美しい曲)や、四字熟語の「遏悪揚善」(アツアクヨウゼン=勧善懲悪)で有名ですね。基本単語。


 【おしの】


 ●笄髷(こうがいまげ)

 「女は慇懃に会釈をした。貧しい身なりにも関らず、これだけはちゃんと結い上げた笄髷の頭を下げたのである。」

 →「笄」(1級配当、音読みは「ケイ」)は、髪を掻き上げるため「髷」を形作る装飾的な結髪用具。かんざしの一種。頭が痒い時に髪型を崩さずに掻いたり、女性の装身具としても使われた。髪を掻き揚げやすいように頭部から長細い二本の足が出た形をしているか(頭部はイチョウの葉型が一般的)棒形が普通。「笄冠」(ケイカン)は、男女とも成人の礼をあげること。「笄年」は、初めて女子が笄を差す15歳を云い、結婚適齢期です。大河ドラマ「篤姫」で、於一が調所広郷への弔いのため、髷から抜いて土中に埋めていたものは、「笄」かなと思いましたが、じっくり見ると「簪」ですね。
 「笄髷」は「笄のまわりに髪を巻き込んだもの」。「髷」(まげ)、「髻」(もとどり、たぶさ)、「髱」(たぼ)、「髫」(うない)、「鬘」(かつら)、「髢」(かもじ)など、「髪」に関する言葉は覚えましょう。

 ●顋鬚(あごひげ)

 「神父は顋鬚を引張りながら、考え深そうに頷いて見せた。」

 →ともに1級配当で、「顋」は「えら」「あぎと」「サイ」、「鬚」は「シュ」。「あご」はほかに「頷」「腮」「顎」「頤」があり、ひげは、「髭」(シ)、「髯」(ゼン)があります。「顎関節」(ガクカンセツ)、「頤指・頤使」(イシ=頤でこき使う)は書けるように。「頤」は「おとがい」とも訓みますね。
 「ひげ」はパーツで微妙に使い分けて、「鬚」はこれだけで「あごひげ」、「髯」は「ほおひげ」、「髭」は「(鼻の下の)くちひげ」。英語でも使い分けていますよね。
 「顋門」とかいて「ひよめき」。赤ちゃんの頭部にある「ひょこひょこ」と動くところのことですね。

 ●橄欖(カンラン)

 「…驢馬の背にジェルサレムへ入られたことを、悲しい最後の夕餉のことを、橄欖の園のおん祈りのことを、……」

 →木の名。①カンラン科カンラン属の常緑高木。中国南部原産。実は蜜漬けや塩漬けにして食用にする。カンラン。②モクセイ科オリーブ属の常緑高木。オリーブ。地中海地方原産。果実は食用、また、オリーブ油をとる。いずれも1級配当ですが、この熟語でしか使いません。熟字訓問題で出たら「オリーブ」と読ませるのでしょうね。ちなみに「驢馬」は「ロバ」。「夕餉」は「ゆうげ」。

 ●《惘気》(あっけ)

 「神父は惘気にとられたなり、しばらくはただ唖のように瞬きをするばかりだった。」

 →「呆気」の宛字でしょう。「惘」は1級配当で、音読みは「ボウ」、訓読みは「あき・れる」。「惘然」(ボウゼン、ぼんやり)が一般的。


 【神神の微笑】


 ●巴旦杏(ハタンキョウ)、沙門(シャモン)

 「羅馬の大本山、リスポアの港、羅面琴の音、巴旦杏の味、『御主、わがアニマ(霊魂)の鏡』の歌――そう云う思い出はいつのまにか、この紅毛の沙門の心へ、懐郷の悲しみを運んで来た。」

 →アーモンド。唐桃、扁桃ともいう。

 →宗教の世界における男性修行者。僧侶。本文の場合は修道者か。

 ●《金雀花》(えにしだ)

 「それはまた事によると、祭壇の前に捧げられた、水々しい薔薇や金雀花が、匂っているせいかも知れなかった。」

 →マメ科の落葉低木。《金雀枝》、《金雀児》と書く方が一般的。熟字訓読みでは頻出です。緑色の細い枝が竹箒のように伸びて、目も覚めるような黄色の蝶形の花を咲かせる。高浜虚子が「えにしだの 黄色は雨に さまし得ず」と詠んでいます。ちなみに、《金糸雀》は「カナリア」。よく似ているので間違えます。「薔薇」は「バラ」。1級受検者は書けなければいけません。

 ●鬨をつくる(ときをつくる)

 「すると彼の真後には、白々と尾を垂れた鶏が一羽、祭壇の上に胸を張ったまま、もう一度、夜でも明けたように鬨をつくっているではないか?」

 →大勢で一斉にときのこえを上げる。騒ぐ。戦場での「えいえいおう」。「とき」は《鯨波》とも書きます。なんで鯨の波なのでしょうか?「鬨」は1級配当で、音読みは「コウ」。「哄笑」(コウショウ)と共通の音符で覚えましょう。「喧鬨」(ケンコウ=大声で喊ぶ)はやや艱しい。

 ●榾火(ほたび)

 「その内にだんだん内陣の中には、榾火の明りに似た赤光が、どこからとも知れず流れ出した。」

 →「榾」は囲炉裏に焼(く)べたり焚火に使う木の切れ端を指す。それを燃やした火。「榾」は1級配当で音読みは「コツ」。「榾柮」(コツトツ)は「榾」と同じ意味。これで「ほた」とも訓みます。「赤光」は「シャッコウ」と読みます。斎藤茂吉の処女歌集でも有名ですな。

 ●澎湃(ホウハイ)

 「彼はただ大光明のために、烈しく眩暈が起るのを感じた。そうしてその光の中に、大勢の男女の歓喜する声が、澎湃と天に昇るのを聞いた。」

 →水がぼんぼんとぶつかり合う音の形容。水のわきたつさま。物事が盛んな勢いでわきおこるさま。いずれも1級配当ですが、なかなか艱しい言葉。「ボウ」ではなくて「ホウ」と濁らないのがポイント。「ほう」「はい」→「h音」の連続。なんとも味わい深い響き。意味は分からなくてもなんとなく音で伝わりますね。「滂湃」「彭湃」とも書きます。ちなみに「眩暈」は「ゲンウン」とも読みますが、今回は熟字訓で「めまい」が正解。

 ●霞光(カコウ)

 「そうしてその裂け目からは、言句に絶した万道の霞光が、洪水のように漲り出した。」

 →雲の輝き。朝焼けや夕焼けなど。「霞彩」(カサイ)という言葉もあり。「万道」(バンドウ)は、四方八方にあふれるさま。ちなみに「漲り」は「はり」ではなく「みなぎり」。1級配当です。

 ●《篠懸》(すずかけ)

 「しかし後には夕明かりが、径を挟んだ篠懸の若葉に、うっすりと漂っているだけだった。」

 →鈴懸、鈴掛とも。スズカケノキ。プラタナスです。実が、山伏が着る「篠懸」(鈴掛)についている丸い房状のものに似ていることから。

 

【河童】


 ●《毛生欅》(ぶな)

 「もっとも時々霧の中から太い毛生欅や樅の枝が青あおと葉を垂らしたのも見えなかったわけではありません。」

 →椈。熟字訓では《山毛欅》が一般的。白神山地の原生林は世界遺産になっております。まっすぐに伸びない巨木であることから、建築材には不向きで、昔は「役立たずの樹」とも言われ、「■」(■=木+無)を宛てることもあります(こじつけの可能性もあります。ぶなの音を当てた可能性も高い)。ちなみに「欅」は「けやき」、「樅」は「もみ」。ともに1級配当です。

 ●茘枝(レイシ)

 「しかし茘枝に似た細君や胡瓜に似た子どもを左右にしながら、安楽椅子にすわっているところはほとんど幸福そのものです。」

 →ライチーのこと。ムクロジ科の常緑高木。中国原産。亜熱帯で果樹として栽培。果実はうろこ状の皮で覆われ、多汁で甘い。「蔓茘枝」と書くと「ニガウリ」に早変わりします。《胡瓜》はきゅうり。
「瓜(うり)」系の熟字訓は、「西瓜」(すいか)「南瓜」(かぼちゃ)「甜瓜」(メロン)「蕃瓜(樹)」(パパイヤ)「木瓜」(ぼけ)「蜜瓜」(メロン)「王瓜」(からすうり)「黄瓜」(きゅうり)「冬瓜」(とうがん)「糸瓜」(へちま)「苦瓜」(にがうり、ゴーヤー)「甘瓜」(まくわうり)「割木瓜」(われもこう)「越瓜」(しろうり)「梵天瓜」(まくわうり)「真桑瓜」(まくわうり)「味瓜」(まくわうり)「都瓜」(まくわうり)「唐瓜」(まくわうり)「味瓜」(まくわうり)。「黄瓜菜」(にがな)もありました。まだありますかね。ちなみに「瓜」と「爪」って似ていて微妙ですよね。「うりにつめあり、つめにつめなし」と覚えると微妙な差異が覚えられます。

 ●恬然(テンゼン)

 「こういう問答を聞いていたゲエルは手近いテエブルの上にあったサンドウィッチの皿を勧めながら、恬然と僕にこう言いました。」

 →安らかでのんびりしたさま。ゆっくりと落ち着いたさま。「恬」は1級配当で訓読みは「やす・らか」。「安閑恬静」(アンカンテンセイ)、「恬澹」「恬淡」(テンタン)などの熟語があり、いつもこうでありたいと思います。

 ●矜誇(キョウコ)

 「矜誇、愛慾、疑惑――あらゆる罪は三千年来、この三者から発している。同時にまたおそらくはあらゆる徳も。」

 →誇らしく思う気持ち。自分の才能を誇っている。「矜」は1級配当で訓読みは「ほこ・る」「あわ・れむ」。「キン」とも読みます。「矜恃」(キョウジ)はプライド。「矜恤」(キョウジュツ)はお恵み、「矜育」(キョウイク)は子供をあわれみ育てること。

 ●《水松》(いちい)

 「巡査は右手の棒をあげ、(この国の巡査は剣の代わりに水松の棒を持っているのです。)『おい、君』とその河童へ声をかけました。」

 →イチイ科イチイ属の常緑針葉樹。熟字訓。「一位」、「蘭」(アララギ)とも。器具材、細工物、彫刻材、鉛筆などに使用。「イチイ」の名前の由来は、仁徳天皇がこの木で笏(しゃく)をつくらせ、それで正一位を授けたので「一位」と呼ばれるようになったとの説も。とすると、この巡査が持っている警棒は「笏」ですね。

 ●穹窿(キュウリュウ)、龕(ガン)

 「コリント風の柱、ゴシック風の穹窿、アラビアじみた市松模様の床、セセッションまがいの祈祷机、――こういうものの作っている調和は妙に野蛮な美を具えていました。しかし僕の目をひいたのは何よりも両側の龕の中にある大理石の半身像です。」

 →アーチ形の屋根。ドーム型の建築物。ともに1級配当。穴かんむりに音符から、読むことは簡単ですよね。「穹」は、訓読みで「そら」。「蒼穹」(ソウキュウ)、「天穹」(テンキュウ)があります。

 →岩壁や仏塔の下に彫り込んだむろ、またはくぼみ。中に仏像や宝物をおさめる。1級配当漢字で、訓読みは「ずし=厨子」「もこし」。これは知らないと読めないでしょう。しっかり覚えましょう。熟語には、「龕灯」(ガンドウ・ガントウ)、「石龕」(セキガン)、「龕室」(ガンシツ)があります。


 【蜃気楼】


 ●《秦皮樹》(とねりこ)

 「僕は秦皮樹のステッキを挙げ、O君にちょっと合図をした。」

 →熟字訓。《秦皮》(シンピ)で「とねりこ」。モクセイ科の落葉高木。山地に自生し、春に淡緑色の小花をつけ、翼のある実を結ぶ。材は弾力に富み、家具・バットなどにする。《水松》もそうですが、芥川の作品には植物が小道具で多く登場します。そして、濬い意味がある。

 ●《瀝青》(チャン)

 「O君はそこを通る時に『どっこいしょ』と云うように腰をかがめ、砂の上の何かを拾い上げた。それは瀝青らしい黒枠の中に横文字を並べた木札だった。」

 →熟字訓。そのまま「レキセイ」とも読む。ピッチ。タールを蒸留して得る残滓、油田地帯に天然に流出する黒・濃褐色の粘質の高い有機物。《土瀝青》は「アスファルト」。熟字訓問題で頻出。「瀝」は1級配当で、訓読みは「したた・る」。「歴」の中は「木」ではなく「禾」であることに注意。「披瀝」(ヒレキ=披露)、「滴瀝」(テキレキ=したたるしずく)があります。

 ●《心太艸》(てんぐさ)

 「成程一本のマッチの火は海松ふさや心太艸の散らかった中にさまざまの貝殻を照らし出していた。」

 →熟字訓、当て字。《心太》は「ところてん」(瓊脂)。その材料となる海藻が「てんぐさ」。紅藻類。寒天も作ります。普通は「天草」。「艸」は1級配当で、「くさかんむり」の原形です。《海髪海苔》(オゴノリ)とも云います。ちなみに《海松》は「みる」。ミル科に属する緑藻類の一種。全体の形はマツの木のように末広がりになっているのでこの字を当てている。

 ●閾の外(しきい)

 「けれども僕はその人の顔に興味も何もなかったんだがね。それだけに反って気味が悪いんだ。何だか意識の閾の外にもいろんなものがあるような気がして、……」

 →「閾」は1級配当で、「敷居」を宛てたりしますが、かぎり、くぎりの意味。音読みは「イキ」で「閾下」(イキカ)、「閾値」(イキチ)があります。「しきいチ」は誤用ですが現在は勢力が拡大しているようです。いずれにせよ、「意識から離れたところ」といった意味で、芥川が「死」に一歩一歩向かっている中での作品を象徴する言葉といっていいでしょう。次第に現世での反応が薄れていく。幻である「蜃気楼」(シンキロウ)という作品名そのものが暗示していますね。

 

【歯車】

 ●棗(なつめ)

 「自動車にはちょうど僕のほかにある理髪店の主人も乗り合せていた。彼は棗のようにまるまると肥った、短い顋髯の持ち主だった。」

 →秋に赤い楕円形の実がなる。食用になるほか、お菓子や薬用にもなる。古代中国では、桃、李、杏、棗、栗(トウリキョウソウリツ)を「五果」と呼び、重要な果物として重用してきたようです。「棗」は1級配当で音読みは「ソウ」。四字熟語には「渾崙呑棗」(コンロンドンソウ=鵜呑は禁物)、「棗栗」(ソウリツ=女性が人を訪ねるときに土産にした)があります。字体は「朿(とげのある木)」が縦に2本並んでいるのですが、横に並ぶと「棘」(とげ、キョク)になるので要注意。「顋髯」(あごひげ)は「顋鬚」の方が正確かと思います。

 ●詛う(のろ・う)

 「僕は二度も僕の目に浮かんだダンテの地獄を詛いながら、じっと運転手の背中を眺めていた。」

 →のろいの言葉をはくこと。怨みのある人に災いがふりかかるように祈る。ひどく怨む。「詛」は1級配当で、音読みは「ショ、ソ」。「呪詛」(ジュソ)、「怨詛」(エンソ)があります。「呪咀」(ジュソ)もありますが、こちらの「咀」は、「か・む」で「咀嚼」(ソシャク)が一般的でしょう。

 ●〔邯鄲の歩み〕(カンタンのあゆみ)

 「それは邯鄲の歩みを学ばないうちに寿陵の歩みを忘れてしまい、蛇行匍匐して帰郷したと云う『寿陵余子』であるのに違いなかった。」

 →故事成語。成語林によりますと、「(邯鄲は中国の戦国時代の趙の都)自分の本分を忘れてやたらに人の真似ばかりしていると、竟には中途半端になり、何も実につかなくなってしまうという喩え」(出典は「荘子」秋水)。「寿陵余子」はこの話に出てくる寿陵という田舎町の若者・余子のことで、都会のスマートな歩き方が身につくことはおろか、田舎での本来の歩き方も忘れてしまって、「匍匐」(ホフク=腹這うこと)で帰郷するしかなかった。歯車では「韓非子」を出典としていますね。勘違いか??

 ●〔屠竜の技〕(トリュウのギ)

 「僕はまた『韓非子』の中の屠竜の技の話を思い出し、展覧室へ通りぬけずに幅の広い階段を下って行った。」

 →これも故事成語。成語林によりますと、「(竜を切り裂いて殺す技術を折角努力して身につけても、竜は存在しないことから)実際には役に立たない技術、無用の技芸のたとえ」(出典は荘子「列禦寇」)。「屠竜」は「トリョウ」とも読みますが、こちらの方が一般的でしょう。こちらも芥川が書いている出典は、「韓非子」になっています。どうしたことか??「屠」は1級配当で訓読みは「ほふ・る」。熟語に「屠殺」(トサツ=家畜を殺す)、「屠蘇」(トソ=おとそ)、「屠肆」(トシ=肉屋)、四字熟語に「屠所之羊」(トショのひつじ=軈て殺される運命の人)。別の故事成語に「屠者は■を羹にす」(■はくさかんむり+霍、トシャはカクをあつものにす=紺屋の白袴)。これの出典は淮南子「説林訓」。

 ●《天鵞絨》(びろうど)

 「そこへ幸いにも来合わせたのはある先輩の彫刻家だった。彼は不相変天鵞絨の服を着、短い山羊鬚を反らせていた。」

 →ビロード。ポルトガル語の「veludo」。表面が毛羽・輪奈(わな)で覆われた、滑らかな感触のパイル織物。本来は絹。江戸初期に西洋から輸入され、のち京都で織り出された。ベルベット。熟字訓問題では基本です。「鵞(鵝)」は1級配当で「がちょう」。「絨」も1級配当で「ネル・ラシャ・ビロードなど、羽毛のある厚手の織物」。「絨毯・絨緞」(ジュウタン)に使用される。

 ●《鼹鼠》(もぐらもち)

 「モオルは鼹鼠と云う英語だった。この聯想も僕には愉快ではなかった。」

 →モグラの異称。「エンソ」とも読む。「もぐら」は《土竜》《田鼠》が一般的です。「鼹」は此れ一字で「もぐら」。音読みは「エン」。1級配当です。「エンソ」では「偃鼠」もあります。有名な故事成語に「偃鼠河に飲むも満腹に過ぎず」(出典は荘子「逍遥遊」)があり、成語林によると、意味は「(もぐらが川の水を飲んでも腹いっぱいになればそれ以上は飲まないということから)人は其の分に応じて満足することが大切だということ」。四字熟語で云うと、「飲河満腹」(インカマンプク)。「田鼠」では、「田鼠(デンソ)化して鶉(うずら)となる」があり、意味は「陰暦三月のこと」。こちらの出典は「礼記」。


 【ある阿呆の一生】


 ●赭い(あか・い)

 「しかしパンの神の額の下には赭い鉢に植えたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしていた。」

 →赤といっても赤土色。「赭」は1級配当で音読みは「シャ」。「あかつち」とも訓みます。熟語では、「赭顔」(シャガン=赤ら顔)、「赭土」(シャド=あかつち)、「赭鞭」(シャベン=あかつちいろのむち)があります。「あかい」は、「殷い」「絳い」「紅い」「赫い」「■い(■=魚偏+貞)」「丹い」さまざまな言葉があります。「殷紅」(アンコウ=あかいろ)、「絳帳」(コウチョウ=先生や学者の書斎)、「紅裙」(コウクン=芸妓)、「赫赫」(カッカク=功績が著しいさま)、「■尾(■=魚偏+貞)」(テイビ=人民が暴政に苦しむさま)、「丹堊」(タンアク=あかく塗った壁)などいろんな語彙が詰まっています。

 ●粗朶垣(ソダガキ)

 「蠣殻のついた粗朶垣の中には石塔が幾つも黒ずんでいた。彼はそれ等の石塔の向うにかすかにかがやいた海を眺め、何か急に彼女の夫を――彼女の心を捉えていない彼女の夫を軽蔑し出した。……」

 →「粗朶」は、里山などの雑木林から間伐や剪定で切り出される枝のこと。これを格子状に組んで海中に沈めて、海苔や牡蠣を着生させる材料としたのが「粗朶垣」。「朶」(ダ)は1級配当で「木の枝などがたれるさま」。「万朶」(バンダ=花が多いさま)、「朶頤」(ダイ=顎を動かして食べるさま)、「朶雲」(ダウン=もらった手紙の敬称)、「耳朶」(ジダ=みみたぶ)などがあります。

 ●檣(ほばしら)

 「『あすこに船が一つ見えるね?』『ええ。』『檣の二つに折れた船が。』」

 →帆柱。1級配当で音読みは「ショウ」。熟語に「檣竿」(ショウカン=帆柱)があります。同じ音符の「牆」(ショウ)も1級配当。訓読みは「かき、へい」。「鬩牆」(ゲキショウ=兄弟、身内であらそう。うちわのあらそい→故事成語に「兄弟牆(かき)に鬩(せめ)げど外其の務(あなど)りを禦ぐ」<詩経「少雅・常棣>、「蕭牆(ショウショウ)の憂え」<韓非子「用人」>があります。頻出の語彙です。ほかに「牆垣」(ショウエン=周囲を取り巻いた塀)というのもあります。

 ●《薄氷》(うすらい)

 「彼女はかがやかしい顔をしていた。それはちょうど朝日の光の薄氷にさしているようだった。」

 →薄く張った氷。熟字訓。「春氷」とも書きます。早春の季語ですね。味わい深い響きがあります。しかし脆いうえに、割れないまでも日の光で溶けていく儚い存在…。

 

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。