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「ショウジン」して「テイトウ」せよ!=兆民「続一年有半」⑬

中江兆民「続一年有半」シリーズの13回目です。

 

 

 (五) 精神の能

 

 それ世界万有は無始無終であつて、創造するの必要はないから、神を①エイセンするの必要もない、即ち神は絶対にないのである、而して精神は如何であるか。

 

 ①〔 影 撰 〕→意味〔その姿をイメージして描くこと〕・兆民語

 

 余はいふ、不滅としての精神はないのである、しかし軀体の働らき即ち作用たる精神は、軀体の解離せざる間は立派に存在して、常に光を発して居る。これ当然の訳で、そもそも吾人の身が生きている消息を示すは、何に由てであるかといへば、その働らき即ち精神の発揮に由つてである。目は視、耳は聴き、鼻は嗅ぎ、口は味ひ、手足皮膚は捕捉し、②コウホし、触接し、また感覚し、思考し、断行し、想像し、記憶する等、皆精神の発揮である、炭より発せる焰と一般である、薪より生ずる火と同様である。

 

 ②〔 行 歩 〕→意味〔足を動かして歩くこと、あゆむこと〕

 

 そもそも薪は③ショウカイの聚りに過ぎないが、これより発する焰はあるいは天を焦がすに至る、薪は山川の断片に過ぎないが、これより生ずる火はあるいは一都を④ショウジンするに至る、精神の軀体におけるもまたかくの如くである。彼の推理の一力を看よ、この理より彼理に赴き、⑤ソウルイして上りて乃ち十八里の雰囲気を透過して、㋐に太陽系天体の外にも馳騁するではないか。想像の一能を看よ、その働らきは更に自由自在で、あるいは天上に城市を建立し、海底に楼閣を幻出し、虎に翼を㋑け、狐を馬に乗せ、剣山を㋒だて、血海を湛へ何を為して成らざるなく、何を欲して得ざる莫く、而してこれ皆五尺の小軀体から発する作用にほかならぬのである。

 

 

 ㋐〔はるか・に〕→正確な送り仮名は「夐かに」・音読みは「ケイ」・「夐然」(ケイゼン)は〔はるかに遠いさま〕、「夐絶」(ケイゼツ)は〔非常に遠くへだたっているさま〕、「夐古」(ケイコ)は〔遠い昔、はるか昔

 ㋑〔・け〕→「傅ける」は「付ける」・「かしずく」とも訓む・音読みは「」。「傅育」(フイク)は〔そばについていて身分の高い人の子を守り育てる〕・ここでの出典は「韓非子・難勢」に出てくる四字熟語の「為虎傅翼」(イコフヨク)=〔強い者にさらに力をつけること〕から取っている

 ㋒〔そば・だて〕→正確な送り仮名は「峙つ」(そばだ・つ)・「そばだつ」はほかに〔岨つ、欹つ、屹つ、聳つ、崛つ、仄つ〕・音読みは〔ジ〕で「対峙」「峙立」は押さえましょう

 ③〔 小 塊 〕→意味〔ちいさなかたまり〕

 ④〔 焼 燼 〕→意味〔もやして炭火にすること〕・「」は「もえさし、もえのこり」・「燼滅(ジンメツ)は〔ほろび尽きること〕、「燼余」(ジンヨ)は〔燃えさし〕

 ⑤〔 層 累 〕→意味〔幾重にもかさなること〕・類義語は〔層畳・層沓

 

 記憶の能を看よ、三、四歳の幼児に見聞した事物より、六十、七十の高齢に至るまで、およそその経過せし事の⑥イショウは一々蓄へて逸しないで時に応じて引出さるるでないか。また一時わが記憶より⑦イッキョしたものが、思考の末再び浮出さるるなどは、随分奇な事ではないか。啻これのみでなく、吾人の智識の進歩し行くは記憶の能があつて、およそ経験して得るごとに脳中の倉庫に仕舞ひ込みて失はない、以て温故知新の財料と為すからである。即ち人の賢愚の別はその大部分において⑧キセイの強弱に関係して居る。

 

 ⑥〔 意 象 〕→意味〔観念、イデー、意識したイメージ、記憶〕・兆民語

 ⑦〔 逸 去 〕→意味〔のがれさること〕

 ⑧〔 記 性 〕→意味〔記憶力〕・「棋聖」「規制」「奇声」「麾旌」「既成」「既製」ではない

 

 その他感情や、感覚や、断行や、皆精神の発揮の種類である。それ若干元素の抱合より成れる語釈の軀から、かくの如く⑨サンランたる⑩コンペキの光彩が放たれて居るので、⑪マイシャはこの光彩を認めて本体と為し、主人と為して、五尺軀を以て奴隷と為して、彼の虚霊説の囈語が出来たのである。夜光珠の光が余り美麗なるが故に、珠よりも光が貴ばれて、光てふものが珠を離れて別に存在して居ると思ふたのも、やや無理もないといふても良い。

 

 ⑨〔 燦 爛 〕→意味〔あざやかにかがやいていてあきらかなさま〕・「」も〔〕も〔あざ・やか〕と訓む

 ⑩〔 金 碧 〕→意味〔きんいろにかがやくみどり〕とあるが、通常は〔紺碧〕→〔やや黒みを帯びた青色〕

 ⑪〔 昧 者 〕→意味〔おろかな人〕・類義語は〔愚 人〕・「」は〔道理にくらい〕〔おろか〕〔くらい〕の意・ちなみに「昧爽」(マイソウ)は〔夜明け方、早朝、暁、未明〕で類義語は〔昧 旦

 

 かくの如く精神即ち軀体の作用は、軀体より発しながら、これが本体たる軀体の中に局しないで十八里の雰囲気を透過し、太陽系の天体を透過し、直ちに世界の全幅をまで⑫リョウリャクするの能がある。即ち吾人が宗旨家の⑬ヒロウの見を打破して世界の⑭タイリを捕捉せんと擬するは、正に精神にこの振抜⑮テイトウの能力があるから出来るのである。ここにおいて乎、また古今哲学家の極て思を㋓し慮を労する事項がある、以下順次に論ずるであらう。

 

 ㋓〔ふかく・し〕→正確な送り仮名は「覃くし」・音読みは「たん」・「およ・ぶ」とも訓む・「覃及」(タンキュウ)は〔のびひろがって及ぶ、その物事の影響がそこまでふかくおよぶこと〕、「覃思」(タンシ)は〔ふかく思う、沈思黙考〕・「ふかい」はほかに〔邃い、窖い、窕い、穹い、澳い、潭い、淹い、窖い、浚い、泓い、汪い、湛い、淵い、濬い

 ⑫〔 領 略 〕→意味〔充分に理解してのみこむこと、なるほどと悟ること〕・類義語は〔領会、領解、領悟

 ⑬〔 卑 陋 〕→意味〔心根や身分が卑しいこと〕・「」は〔いや・しい〕〔せま・い〕と訓む・「陋廬」(ロウロ)・「陋宇」(ロウウ)は〔せまくむさくるしい家〕

 ⑭〔 大 理 〕→意味〔大きな道理〕

 ⑮〔 挺 騰 〕→意味〔独りぬきんでて飛び上がること〕・兆民語
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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