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記念すべき劈頭は「芋粥」の「品騭(隲)」〔芥川龍之介作品学習シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕①

弊blog「髭鬚髯散人之廬」は今年3月30日から開設いたしており、ようやく3ヶ月が経ちました。実はそれ以前、迂生は会員制のSNSである「mixi」の日記において2007年12月より漢字学習を進めておりました。初めて漢字検定1級を合格した後、何をやろうかと思案していたさなか、mixi日記を始めるきっかけとなったのが芥川龍之介です。



彼の全小説(実は違うのですが)がまるごと一冊になって網羅されている「ザ・龍之介」という便利な本に出遭いました。芥川と言えば「杜子春」や「蜘蛛の糸」などが義務教育時代に読まされた記憶がほのかにある程度。ところが、改めて読んでみると、彼の用いる語彙が漢字検定1級試験で役立ちそうなものばかりであることに気づいたのです。そこで、半分以上思い付きだったんですが、彼の作品を一から読み直してみた成果として、気になった語彙や漢字を取り上げてつらつらと書き綴ったのが始まりです。すべて終えるのに3~4ヶ月かかりました。



そして、この6月21日に行われました2009年度第1回の漢字検定1級試験で、芥川の「開化の殺人」が文章題の一つに採り上げられたということを白魚一寸様のblog「鑿壁偸光 漢字検定1級抔」(「ここ」)で知ることが出来ました。逆を言えば、漢検の本番の文章題で、誰の作品が採り上げられたかについては、彼のblogでしか知ることが出来ないので大変貴重で助かります。さらに、その記事に対して迂生が投稿したコメントのお返事の中で、「mixi日記は、誰でも見れて、検索し易いブログへ転載して欲しいなあと思いますが、ご面倒でしょうね。」と、ご提案というか、ご要望をいただきました。



 確かに、芥川の作品からmixi日記に認めた語彙の数々は本番試験で出るものばかりだという確信はありました。改めて「開化の殺人」が出されたことで、不特定多数の方にも御覧戴いたほうが役に立つのではないかと思いました。mixi日記の閲覧者はかなり限定的でした。



 ただし、ヴォリュームは半端な量ではありませんので、ゆっくりとやらせていただきますが、芥川の漢字学習は洩らさず転載いたします。およそ1ヶ月はかかるでしょう。通常のblogの更新をやりながらは大変で、なるべくその二兎を追いたいと思いますが、時には一兎になるかもしれないことをご了承くださいませ。しかし、改めて自分で言うのもなんですが、よう書いたなぁ…と半ば呆れています。。。。



 2007年12月16日の記念すべき第1回の記事で採り上げた「芋粥」を皮切りに、数日分を一挙に転載いたします。

 

[「芥」の章]





 【芋粥】

 ●品隲(ヒンシツ)

 「…烏帽子と水干とを、品隲して飽きる事を知らなかった。」
 →品定め、品評。「」(「阜+歩」の下に馬)であるならば1級配当漢字なのですが、芋粥の漢字は「隲」(「阜偏」に「少」の下に「馬」)と微妙に異なり、配当外です。もしかしたら異体字かもしれません。「チョク」とも読んで、意味は「さだめる」とか「おすうま」。些し艱しいですね。

 ●《楚割》(すわやり)

 「…、近江の鮒、鯛の楚割、鮭の内子、…」
 →魚肉を細かく割いて乾かしたもの。熟字訓。《魚条》とも書きますね。食物系はことばの宝庫です。

 ●《行縢》(むかばき)

 「某と云う侍学生が、行縢の片皮へ、両足を入れて馬に乗ろうと…」
 →鹿・熊、虎などの毛皮でつくり、腰から脚にかけておおいとしたもの。元々鷹飼いが使ったが、平安末期には武士が狩猟や遠行にあたり騎馬の際に着用した。歴史の勉彊にもなります。熟字訓です。これは熟字訓問題で出そう。

 ●潺湲(センカン)

 「白けた河原の石の間、潺湲たる水の辺に立枯れている蓬の葉を、…」
 →水が流れるさま。これは1級受検者にとっては基本中の基本ですね。「湲」は「エン」とも読みますが、一般的には「カン」でしょう。耳慣れれば迚味わい深いことばだと思います。「潺」は読むのが艱しい。

 ●的(テキレキ)

 「その鞭の下には、的として、午後の日を受けた近江の湖が…」
 →白くあざやかに光り輝くさま。これは配当外。祖めて見ました。「」は音符(礫、轢など)から読みは容易。意味も文から琵琶湖の燿きですね。とてもきれいなことばです。

 ●罩める(こ・める)

 「灰色のものが罩めた中で、赤いのは、烈々と燃え上がる釜の…」
 →込める、籠める。「こめる」では普通は用いない漢字ですが明治の文豪の作品には能く出て来ます。音読みは「トウ」。魚を捉る「たけかご」のことですね。「四」(あみがしら)から何となく類推可能か。「罧」(ふしづけ)もありますね。

 【鼻】

 ●震旦(シンタン)

 「内供は、震旦の話の序に蜀漢の劉玄徳の耳が長かったと云う事を聞いた時に、それが鼻だったら、…」
 →中国の異称。振旦、真丹ともいう。

 ●《鑷子》(けぬき)

 「…不承不承に弟子の僧が、鼻の毛穴から鑷子で脂をとるのを眺めていた。」
 →熟字訓。毛抜きのこと。今で云う「ピンセット」。音読みは「ジョウシ」。「鑷」は1級配当。音符「聶」は「ショウ」と「ジョウ」の二つが存ります。読み分けが難しいかも。「ジョウ」は「鑷」(之れ一字で「けぬき」)「顳」(顳顬=こめかみ)「躡」(ふむ、躡足附耳)「囁」(ささやく)、「ショウ」は「聶」「懾」(おそれる)「囁」(ささやく)「顳」。

 【魔術】

 ●荒肝を挫ぐ(あらぎもをひしぐ)

 「私を囲んでいた友人たちは、これだけでも、もう荒肝を挫がれたのでしょう。」
 →度肝を抜く。ひどく駭かせる。「荒肝」は「きもだま」「Guts」のこと。つぶす意味の「ひしぐ」は通常「拉ぐ」(拉致の拉)ですから、「挫ぐ」は少々当て字っぽいですが、宮本武蔵の五輪書に用例が見つかります。こちらは通常、「くじく」ですね。
 漱石の「坊っちゃん」と中里介山の「大菩薩峠」に同じ表現が見つかりました。

 【文章】

 ●頓死(トンシ)

 「保吉はきのうずる休みをしたため、本多少佐の頓死を伝えた通告書を見ずにしまったのである。」
 →急死のこと。類義語で「急逝」(キュウセイ)。頓は準1級配当で「とみに」。意味は違いますが、「頓服」(トンプク)も覚えておきたい。「薬を必要なときに飲む意味」で対義語は「分服」(ブンプク)。

 ●慓悍(ヒョウカン)

 「やはり禿げ鷹に似た顔はすっかり頭の白いだけに、令息よりも一層慓悍である。」
 →動作が素早く気性がきつくて強いこと。「剽悍」とも書きます。いずれも1級配当漢字。基本でしょう。


 【お富の貞操】

 ●香箱をつくる(コウバコ)

 「…台所の隈の蚫貝の前に大きい牡の三毛猫が一匹静かに香箱をつくっていた。」
 →猫が姿勢を低く座り、かつ前足を内側に折り曲げて足先を隠しているさま。「香箱を組む」「香箱座り」とも云うようです。これはおもしろい表現です。初めて見ました。猫マニアではごく一般的な表現のようです。漢検では出ないでしょうが、ぜひとも覚えたいことば。ネット検索で写真を見ましたがとても可愛らしく吹き出してしまいました。猫のそうした態が「香箱」(お香を入れる化粧箱、直方体か?)のように見えるからのようですが、まさに云い得て妙。そういえばエジプトの「獅子女(スフィンクス)」もまさに香箱を作った態ですね。あ、でも足先は隠していないか。

 ●讒訴(ザンソ)

 「『お黙りよ!お上さんの讒訴なぞは聞きたくないよ!』」
 →かげぐちのこと。「讒」は1級配当漢字。覚えるのは難しいですが、よく出ますね。つくりの音符は、わたしは「ク・ロ・ヒ(比)・メン(免)・テン(、)」と覚えました。讒訴といえば通常、人を陥れる「讒言」のことを言います。菅原道真ですね。今回はもう少し軽い意味です。



【鼠小僧次郎吉】

 ●平ぐけ(ひらぐけ)

 「…形のごとく結城の単衣物に、八反の平ぐけを締めたのが、…」
 →平絎け。帯の種類で、「丸絎け」が対義語。「絎縫い」(くけぬ・い)の「絎」(くけ)です。1級配当漢字です。

 ●《剳青》(ほりもの)

 「手首まで彫ってある剳青が目立つせいか、糊の落ちた小弁慶の単衣物に算盤珠の三尺をぐるぐる巻きつけたのも、…」
 →入れ墨の事ですね。熟字訓ながら「剳」は配当外。「箚」(「駐箚」がよく出る)と似ているので異体字と見ることもできましょうか。こちらも《箚青》と書いて「ほりもの」、「いれずみ」、音読みで「サッセイ」。入れ墨は、「黥刺青」「文身」とも書きます。「黥」は1級配当。「ゲイ」とも読み、ファッションではなく刑罰の一種。

 ●微醺(ビクン)

 「時たまここに流れて来るそよ風も、微醺を帯びた二人の男には、刷毛先を少し…」
 →ほろよい。一字で「醺い」(ほろよ・い)。音符は、燻製(薫製)の「燻(熏)」(クン)と同じ。燻す(いぶ・す)、燻らすくゆ・らす、燻ぶる(くす・ぶる)、燻べる(ふす・べる)。「葷酒山門」(クンシュサンモン、寺院内に入れてはならないもの)の「葷」とはちょっと違う。こちらは蒜、薤、辣韮など臭いがきつい野菜のこと。

 ●陰徳(イントク)

 「悪党冥利にこのくれえな陰徳は積んで置きてえとね、…」
 →人知れず行う恩徳。〔陰徳あれば陽報あり〕(成語林から)=陰で善い事を行う者には、必ず表に現れたよい報いがあるということ。出典は「淮南子」。

 ●極月(ごくげつ)

 「忘れもし無え、極月の十一日、四谷の荒木町を振り出しに、…」
 →師走。年の極まる月で、十二月ですね。

 ●鶸(ひわ)

 「その桑の枝を掴んだ鶸も、寒さに咽喉を痛めたのか、…」
 →アトリ科の小鳥の総称。スズメより小さい。季語は秋。熟字訓では《金翅雀》と書く。「鶸色」(ひわいろ)は、黄色の強い萌葱色。

 ●〔胡麻の蠅〕(ごまのはえ)

 「あのでれ助が胡麻の蠅とは、こいつはちいと出来すぎたわい。…」
 →旅人を脅したり、騙したりして金品を巻き上げる者。〔護摩の灰〕(ごまのはい)が元々の言い方で、成語林によると、「弘法大師の行った護摩の灰と称して押し売りをした者がいたことから」。転じて「胡麻の上にたかる蠅は見分けがつきにくいところから、蠅が物にたかる連想から」。

 ●すんでの事

 「―と思ったら、すんでの事に、おれは吹き出す所だったが、その胡麻の蠅と今が今まで、いっしょに酒を飲んでいたと思や、…」
 →もう少しのところで。あわや。漢字で書くと表外読みで「既の事」。



【煙管】

 ●《煙管》(キセル)

 「前田斉広は、参覲中、江戸城の本丸へ登城する毎に、必ず愛用の煙管を持って行った。」
 →熟字訓。きざみタバコをつめ、火をつけて吸う道具。

 ●増長慢(ゾウチョウマン)

 「…人に見せびらかすほど、増長慢な性質のものではなかったかも知れない。」
 →つけあがって高慢になること。「増上慢」(ゾウジョウマン)、「増上天」(ゾウジョウテン)とも云います。自信過剰ですね。

 ●寛濶(カンカツ)
 「煙管をはたきながら、寛濶に声をかけた。」
 →心がおおらかで、ゆったりしていること。「濶」は心がひろいこと。1級配当。訓読みは「ひろ・い」。「闊」の異体字です。こちらの形が一般的でしょう。「自由闊達」「闊達自在」「闊歩」「横行闊歩」「久闊を叙する」「迂闊」「疎闊」などよく出ます。基本中の基本漢字でしょう。

 ●賀節朔望(ガセツサクボウ)

 「が、賀節朔望二十八日の登城の度に、必ず、それを一本ずつ坊主たちにとられるとなると、…」
 →大名は、賀節、則ち慶事、祝賀の折と、参府や帰国の時、月々の一日と十五日に江戸城に登って将軍に拝謁した。朔望は月の盈ち虧けで陰暦の一日と十五日のことです。

 ●八朔(ハッサク)

 「ことに、了哲が、八朔の登城の節か何かに、一本貰って、嬉しがっていた時なぞは、…」
 →旧暦八月一日のこと。「朔」は「ついたち」。「徳川家康が天正18年8月1日(グレゴリオ暦1590年8月30日)に初めて公式に江戸城に入城したとされることから、江戸幕府はこの日を正月に次ぐ祝日としていた」(ウィキペ)

 ●遺誡(イカイ)

 「金無垢の煙管に懲りた斉広が、子孫に遺誡でも垂れた結果かも知れない」
 →後人のために貽した訓戒。「遺戒」が書き換え。誡は「いましめる」。「箴め」「鐫め」「撕め」「飭め」「戒め」「警め」。さまざまな「イマシメ」があります。すべて覚えましょう。どれも出ます。「箴言」「戒飭」「提撕」「鐫録」「警句」などいずれも熟語としても覚えましょう。

 【将軍】

 ●烱眼(ケイガン)

 「『軍司令官閣下の烱眼には驚きました』」
 →眼力の鋭いこと。慧眼の方が一般的でしょう。「烱」(ケイ)は1級配当。「炯」の異体字。訓読みは「あき・らか」。「眼光炯炯」「炯然」=目つきが鋭いさま。同じ音符は「迥」。こちらは「はる・か」。是非とも読めるようにしておきましょう。「迥然」(けいぜん)=迥かなさま、「迥出」(けいしゅつ)=抜きん出ていること。

 ●浩歎(コウタン)

 「…大仰に天を仰ぎながら、長々と浩歎の独白を述べた。」
 →大いに嘆くこと。深いため息。「歎」は「嘆」の書き換え。「浩」は孟子で有名な「浩然の気」で「ひろい」。「なげく」もいっぱい存ります。「欷く」「慟く」「慷く」「愾く」「嗟く」「嗚く」「喟く」「唏く」「咨く」「吁く」「慨く」。もちろん書き取りが出たら「嘆く」でOKで、(書き取り問題では出ないでしょうが)、読めるようにはしておかないといけません。そして、それぞれ熟語が存ります。これらは書けるようにしなければなりません。「欷歔」「唏嘘」「慟哭」「慷慨」「愾然」「咨嗟」「嗚噎」「喟然」(キゼン)「嗟吁」(ああ)「嗟嘆」「慨然」などなど。意味はすべて「なげくこと」「ため息」。

 ●《榲桲》(マルメロ)

 「『また榲桲が落ちなければ好いが、…』」
 →熟字訓。和名は、ポルトガル語の marmelo から。音読みは「オツボツ」。いずれも1級配当外。《榠櫨》とも書きます。(1級配当外、ベイロ)。「バラ科Cydonia属の唯一の種。西アジア、コーカサス地域原産の落葉高木。カリンやボケに近縁な果樹。リンゴや西洋ナシとも比較的縁が近い。果実は偽果で、熟した果実は明るい黄橙色で洋梨形。果実は芳香があるが強い酸味があり、硬い繊維質と石細胞のため生食はできないが、カリン酒とほぼ同じ分量で果実酒が作れる。成熟果の表面には軟毛が少し残っている場合があるので、よく落としてから切って漬け込む。カリン酒に似た、香りの良い果実酒ができる」(ウィキペ要約)。

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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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