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師匠から弟子への教えが「スイジ」=兆民「続一年有半」⑨

 中江兆民の「続一年有半」シリーズの9回目です。

 

 (十)神に遇ふ

 

 モイーズ、アーロンの徒が神に某山の㋐で遭つたとか、㋑斯々云々の①スイジを授かつたとか、当時風気未開の世にあつて、かつ宗教上衆生済度の方便としてかくの如き言を為しても、必ずしも咎むべきではなかつたが、学術進闡した今日にあつては、たとひ宗旨家といへどもその②コウタン無稽この度に至るを容さない。まして哲学者としてはこれを主張するは勿論、これを攻撃するさへ恥かしさに堪へぬほどである。

 

 ㋐〔いただき〕→音読みは〔てん

 ㋑〔かくかくしかじか〕(宛字訓み)

 ①〔 垂 示 〕→意味〔禅宗で、師がでしに示す短い教訓。「すいし」ともいう。「碧巌録」に頻出〕・「炊事」ではない

 ②〔 荒 誕 〕→意味〔言っていることが大袈裟で、全くよりどころがないでたらめであること〕・類義語は〔荒唐・虚誕〕・四字熟語の「荒唐無稽」も〔でたらめ〕・この場合の「」は〔でたらめ、あざむく、いつわる〕という意味

 

 かつ日用器具③ジシンギの類も、人巧を経なければ自然に出来べきものでない、まして世界万彙が自然に出来できはずがない、必ず造化主宰の出来たに違ひないとは、これ正に余が前に論じた如く、人類社会に局しての言語である。目を世界の上に放ち、心を塵寰の表に遊ばしての言論ではない。なるほど時辰儀は人巧に成れるに違ひない、しかしこれが④ザイリョウたる金属宝石の類は、元より存在して居たものである。即ち時辰儀工はこれら財料を㋒めて、時辰儀と号する一箇の形を与へたるに過ぎないのである、文字の真の意味においての造ではない。

 

 ㋒〔あつ・め〕→ほかに〔攢、斂、醵、逑、轂、萃、翕、纉、緝、攅、彙、鳩、鍾、輯、蒐、纂、綴〕がある・音読みは〔しゅう・じゅ〕・四字熟語に〔聚蚊成雷〕(しゅうぶんせいらい)=〔小さなものもたくさん集まると大きな力になること〕=〔衆口鑠金〕(しゅうこうしゃっきん)

 ③〔 時辰儀 〕→意味〔時計の呼称〕・単に「時辰」ともいう・この場合の「」は〔とき

 ④〔 財 料 〕→意味〔材料、高価なもののニュアンスがあるか

 

 神の造物の業におけるのはこれと異なる。従前あつた所ろのザイリョウを聚めて、世界万彙を製出したのではなく、全く無よりして有、即ち真空の中にこの⑤シンゼンたる世界万彙を造つたもので、それかとすれば、また物は造らねば自然には出来むといふて、無よりして有なると、有の中でただ場所を換ゆるのとを混同して居る。余は繰返していふ、この広大無辺の世界、この森然たる万物が、一個の勢力に由りて一々に造り出されたといふよりは、従前他の形体を有せしものが自然に化醇して、この万彙に変じ来つて乃ち自然に出来たといふこそ、更に数層哲学的である。完全なる判断力を有するものは、この二説の間に、決して躊躇せぬであらうと思はれる。

 

 ⑤〔 森 然 〕→意味〔こんもりとしておごそかなさま〕・「こんもりしげってそびえている」のは〔シンショウ〕→〔森聳〕、「おごそかに並ぶ」のは〔シンレツ〕→〔森列

 

 

第二章     再論

 

 以上論ずる所ろによりて更に積極に立証すれば、精神は不滅のものでない、精神の本体源頭たる軀体こそ、若干元素の抱合になれるもので、たとひ解離しても不滅である。

 

 即ち㋓拿破崙、豊太閤の死するや、その体軀を構成した元素の中でその気体のものは、あるいは空中を⑥ヒショウする禽獣に吸収せられたかも知れない、その固体のものは地中の水に溶解せられ㋔胡蘿大根に摂取せられて、誰人の腹中に入つたかも知れないのである。しかしかくて輾転して居所を変じつつあつても微塵もなくなるはずはない。故に人死すれば従前あつた所ろの五尺の軀は解離して、散りぢり㋕破落破落になつて、各元素皆不滅である。故に人一旦死すれば、天道の望むべきもなく、地獄の畏るべきもなく、かつまた二度再び人体を受けてこの世に生れ出るはずはない、この世における吾人の二代は即ち児子である。

 

 ㋓〔ナポレオン〕(人名)

 ㋔〔にんじん〕→〔人参、蔘、胡蘿蔔

 ㋕〔ばらばら〕(宛字訓み)

 ⑥〔 飛 翔 〕→意味〔空中をとびかけること〕・「」は訓読みで〔かけ・る〕〔・ぶ〕

 

 神は多数にもせよ唯一にもせよ、始めよりあるべきはずでない。この世界万彙は無始無終で、現世の状を為す前には何の状を為せしかは知れないけれども、ともかくも何らかの状を為して居たものが、絪縕浸化して現状を為し来りたるに違ひない。神などといふ怪しき物体の干渉を㋖らずとも、元素離合の作用で、甲より変じて乙に之き、丙丁と変化して窮已なく、以てこの世界の大歴史を成して居る。

 

 ㋖〔こうむ・ら〕→「蒙る」はほかに〔被る、罹る〕・音読みは〔もう〕、〔くら・い〕とも訓む・四字熟語の「無知蒙昧」(むちもうまい)は〔知恵がなく、物事の道理がわからないこと〕・「ワ」と「豕」の間の「」を忘れずにね
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2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
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