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「ウロ」は囲碁、「カツユ」に塩?=兆民「続一年有半」⑧

 中江兆民の「続一年有半」シリーズの8回目です。本日はヴォリュームがややあります。

 

 (九)造物の説

 

 曰くこの世界の森羅万象は、神の創造する所ろである。その㋐め世界は実に無極であつたが、神がその大威徳を発揮し、その大通力を①ハヨウして、無極よりして太極を造り、ここに以てこの宇宙、この世界、山河草木、人獣虫魚より土石②ガレキに至るまで、その③ショウリから④ネッシュツせられて、この整然たる万有始て成立することを得たのである云々。

 

 ㋐〔はじ・め〕→音読みは「ちょう」・「肇歳」(ちょうさい)は〔一年のはじめ、年始

 ①〔 播 揚 〕→意味〔事を起こすこと〕・ここの「」は〔あげる〕という意味だが、通常は〔・く〕

 ②〔 瓦 礫 〕→意味〔かわらと小石。価値のない物のたとえ〕・対義語は〔珠 玉〕・「」は〔こいし〕〔つぶて〕とも訓む・成句に「闇夜の」(やみよのつぶて)があり〔人はいつどんなことに出くわすのか見当も付かないというたとえ、闇討ちを食らうたとえ

 ③〔 掌 理 〕→意味〔つかさどり管理下におさめること〕・引っ搔け問題で〔燮理〕や〔牆籬〕などと1級配当絡みを書きたくなるが、残念、常用漢字です。

 ④〔 捏 出 〕→意味〔土をこねて物をつくる〕無論「捏造」のニュアンスのある言葉で「形だけ似せて造る」

 

 これ無よりして有を得る、これ何の言ぞ、完全な脳髄を所持する者に、理解し得らるべき言であるか。無は何処までも無なるべきはずである、無が有となるを得るほどならば、その無は真の無ではないので、何かの種子を包容して居たものではないか。排気鐘中の真空を、一年の間放過したとして、何物にも変ずるを得るべきはずはあるまい、これ無の有となるべからざる証拠である。如何に万能の神でも、悖理の事の出来べきはずはないのである。造物の説はミケランジ、ラファエルの㋑が、その⑤キケツの腕前を⑥キカクするための画題と為すには極て適当ではあるだろうが、冷澹平静一も非論理の禁を犯すを容るされない哲学者の口からして、神の造物の説を主張するとは驚くべきの極である。

 

 ㋑〔ぞく〕とルビが附られているが、〔ともがら・やから〕と訓んでもいいでしょう

 ⑤〔 奇 傑 〕→意味〔めずらしくすぐれた人物。風変わりな豪傑〕・同音異義語は「帰結、詭譎、虧欠、匱竭、冀闕、既決

 ⑥〔 揮 霍 〕→意味〔腕前などをふるうこと。勢いがはげしく速いさまの意もある。金品を無駄遣いするの意も〕・「」は〔にわ・か〕〔はや・い〕とも訓む・同音異義語は「規格、亀鶴、麒閣、輝赫、亀殻、掎角、羇客、羈客、几閣、企画

 

 かつ神の造物の説が真だとすれば、実に近時の学術において大攪乱の種子を播き来ることとなる。何となれば、彼の仏蘭西ラマルクに由りて創唱せられ、英国ダーウインに由りて集大成せられて、近代の科学に大効力を及ぼした事物進化の一説と造物の説とは、固より両立するを得べからざるものである。

 

 それ神万物を造りて、大は天体より小は㋐蠛蠓に至るまで、一定㋑ゆべからざる模型を製した以上は、甲の物は何日までも甲の形を保ちて親子相ひ伝へ、乙丙丁皆かくの如くで、即ち吾人の⑦エンソが尻尾を有したなどの説とは相容るることは出来ない、㋒の或る種族が進化して人と成つたなどの論とは並び立つことは出来ない。古昔学術⑧ソウマイの世、今時よりいへばほとんど精神病者の如き人物に由りて想像せられて、一も論理に適はない造物の説と、尋常に度越して居る博学俊傑の士がこれを理に㋓り、これを学に質し、観察し、経験し、苦心⑨サンタンの余に得たる進化の説と、いづれを信じいづれを非とすべきである乎。胸中いささかの為めにする所ろのない者は、この間に㋔することあるまいと思はれる。

 

 ㋐〔べつぼう〕→意味〔雨の後などに空中に飛ぶ小さい虫、ヌカガ、ヌカカ〕・「」も「」も配当外で同じ意味「ヌカガ、ヌカカ」

 ㋑〔・ゆ〕→「渝える」は〔変える〕で音読みは〔〕・「渝替」(ゆたい)は〔変質して衰える〕・「渝盟」(ゆめい)は〔約束をたがえる、誓いに背く〕=〔寒盟

 ㋒〔びこう〕→意味〔おおざる〕・「」は配当外で「アカゲザル」、「猴」は1級配当で「アカゲザル」・四字熟語に「猿猴取月」(えんこうしゅげつ)=〔身のほど知らずが身を滅ぼすたとえ

 ㋓〔はか・り〕→「揆る」は〔コンパスを廻してはかること〕で〔はかりごと〕とも訓む・音読みは「」で「揆度」(きたく)・「揆測」(きそく)は〔全体をおしはかること〕・「一向一揆」(いっこういっき)は農民の反乱

 ㋔〔ちゅうちょ〕→意味〔ためらって足が止まること〕・「」は配当外で「たちもとおる」、「躇」は1級配当で「たちもとお・る」とも訓む・1級配当を使えば「躊躇」とも書ける

 ⑦〔 遠 祖 〕→意味〔遠い先祖

 ⑧〔 草 昧 〕→意味〔物事が始まったばかりのころ。万事がぞんざいで、まだすべてに秩序のととのわない時

 ⑨〔 惨 憺(澹) 〕→意味〔あれこれと心を悩ますさま〕・「」は表外読みで〔いた・む〕

 

 造物の説にまた極て⑩ビュウコウなのがある。

 

 ⑩〔 繆(謬) 巧 〕→意味〔巧に人をあざむこと〕・「」は〔あやま・り〕〔いつわ・る〕とも訓む

 

 曰く、吾人途を行いて物を拾ふことがあるとせよ。⑪チクトウボクセツならばともかくも、いやしくも人巧を経たる物、譬へば各種器物であるとか、更にはまた極て㋕の機械を具へてる時辰儀等であつた時には、誰れかこの物を作つた者があるだらうといふことは不言の間に明瞭である。箇様の品物が偶然独りで出来て途に落て居る道理はないからである。しかるにこの世界の万有は如何、その巧妙なること人造の器物時辰儀の比すべき所ろでない。それ鳥は空中を飛行する、故に㋖がある。それ魚は深淵に潜む、故に㋗がある。⑫カクロは泥沢に下りて、⑬シュウマンの属を食とする、故に㋘が長い。⑭オウガは水中に住て常に游泳する、故に足に水搔がある。その他⑮キンジュウ禽獣について言ふならば、これを大にして⑯シュウゲイの類がある、これを小にして蠛蠓の属がある。蚊の足の繊いのも神経筋肉細胞より成立して、而して細胞中にはまた核を具へて居る。更に人体に至りてその⑰セイチはまた他の獣魚の⑱ヒチュウでない、肺の呼吸における、胃腸の消化における、⑲の血球における、肝の胆液における、脳神経の運動知覚における、その他極精の顕微鏡にさへ看るべからざる神血管の末梢細胞組織等に至て、いよいよ研究すればいよいよセイチなことが解る。もしそれ天体に至ては、日月⑳セイシンの大物が空中に㋙廻転して、各々その軌道を守つてスンゴウも違はない、あるいは一月一廻転、あるいは一年一廻転、あるいは十年十数年一廻転して、かつてその約を渝へることがない。この精微の極、広大の極、微妙の極、雄深の極たる世界万物人獣虫魚の属が、造主なくして自然に湧出したとは受取れぬ議論である、護持する者なくして保たれて居るとは承諾の出来ぬ言ひ事である。一箇の時辰儀すらなほかつ造主なくして独りでは出来ない、この世界万象が造主なしに出来たとは何の論理であるか云々。

 

 ㋕〔しんみつ〕→意味〔細工や文章が細かくて緻密であること〕・「」は配当外で「織り目がつまって細かくて緻密である

 ㋖〔うかく〕→意味〔鳥のはねとつばさ〕・「」は配当外で「つばさ、鳥の羽の付け根」

 ㋗〔おひれ〕→意味〔尾鰭〕・「」は配当外で「魚の背びれ」で「」と同義・「鰭鬣」は「きりょう」と読み、〔魚の背びれ

 ㋘〔くちばし〕→音読みは〔〕、〔はし〕とも訓む・「喙・觜」とも書く・成句の「が黄色い」は〔年が若く経験が足りず未熟なこと〕、「の食い違い」(いすかのはしのくいちがい)は〔物事が食い違って思うようにならないことのたとえ

 ㋙〔せんてん〕→意味〔まわりながらめぐること〕・「」は配当外で〔やどり〕とも訓み、「足跡を残してめぐる。月や星が運行する」

 ⑪〔 竹頭木屑 〕→意味〔役に立たないもののたとえ〕・「」は〔くず〕のほか〔いさぎよ・い〕とも訓む

 ⑫〔 鶴 鷺 〕→意味〔鶴と鷺(さぎ)〕・「烏鷺」(うろ)は〔囲碁〕、「闇夜に、雪に白鷺」「闇の夜の、月の夜の白鷺」は〔まわりとよく似ていて見分けがつかないたとえ〕

 ⑬〔 鰌 鰻 〕→意味〔どじょうとうなぎ

 ⑭〔 鴨 鵞 〕→意味〔かもとがちょう〕で「鵞鴨」とも書く・「」は「」の異体字・「鴨嘴獣」は〔かものはし〕・「の水搔き」は〔のんびり見えていても人知れぬ苦労をしているたとえ〕・・・「鵞毛」は〔雪など白くて軽いもののたとえ〕

 ⑮〔 禽 獣 〕→意味〔鳥とけだもの〕・「」は〔とり〕とも訓む・四字熟語に「禽獣夷狄」があり〔中国国境付近の異民族の蔑称〕

 ⑯〔 鷲 鯨 〕→意味〔わしとくじら〕・「鷲山」は〔じゅせん〕、「鷲嶺」は〔じゅりょう〕とそれぞれ読む

 ⑰〔 精 緻 〕→意味〔非常に細かくて詳しいこと〕・対義語は〔粗 笨〕・「」は訓読みで〔こま・かい〕

 ⑱〔 比 儔 〕→意味〔なかま、比類〕・「」は〔ともがら〕と訓む・類義語は〔同朋・吾儕・儕輩・匹儔

 ⑲〔    〕→意味〔ひぞう、五臓の一つ〕・故事成語の「脾肉之歎」(ひにくのたん)は通常「髀肉之嘆」と書く。この場合の「」は〔もも〕で〔実力を発揮し、功名を立てる機会が中々得られないことを嘆くたとえ。別に言い方を得れば「轗軻不遇を喞つ」

 ⑳〔 星 辰 〕→意味〔星宿=星座、ほし〕・この場合の「」は〔日・月・星の意

 ㉑〔 寸 毫 〕→意味〔ほんのわずかなこと〕・類義語は〔秋 毫

 

 吾人は反対に言ひたくなる、人巧に出たる器具の時辰儀の類は、如何にも緻密でも、これを天然物に比すれば、天然物の最も㋚麁末なるもの、ナメクジの如きクラゲの如きものに比しても、なほ遠く及ぶべきでない。いはんや人獣の構造組織の如き、広大無辺なる星象の旋廻転の如き、如何なる通力あるにせよ、一箇の力でこれを造つたとは、それこそ論理において受け取れぬ、自然の理に頼りて、絪縕し、摩蘯し、カジュンし、㋛浸漬して出来たといふ方如何ほど道理に近くはあるまいか。

 

 ㋚〔そまつ〕→意味〔粗末に同じ〕・「麁」は「」の異体字で〔あら・い〕とも訓む・四字熟語の「麁枝大葉」(そしたいよう)は〔細かい規則にこだわらず、自由に筆を振るって文章を書くこと

 ㋛〔しんし〕→意味〔じわじわと長く浸透すること〕・注意すべきは「漬」で「」は珍しい表外の音読み・「漬浸」とも書く・「漬墨」(しぼく)は〔よごれて黒くなること

 ㉒〔 蛞 蝓 〕→熟字訓の書き取り〔かつゆ〕の音読みもあり・「蛞蝓に塩」は〔苦手なものの前では何も出来なくなるたとえ

 ㉓〔 海 月(水 母)〕→熟字訓の書き取り・「海月の骨」は〔きわめて珍しいことの譬喩、盲亀浮木

 ㉔〔 化 醇 〕→意味〔変化して清醇になる、混じり気のない純粋なものになること〕・「醇化」とも書く

 

 また果してこの世界万象を製造したる神があるならば、世界の那処に居るのであるか、もしまた神はあらざる所ろなしといへば、何日か何処かで吾人にこれがチョウチンを㋜はしさうな物である。神の形が既に吾人人類に同じといへば、その顔はいくばくの大さである、そのシシはいくばくの長さである、その胸腹はいくばくの容積である、宗旨家は神が某処に現はれたる事があると言て居る、けれどもこれは特にその仲間中での言のみで、固より信を置くには足らぬ。

 

 ㋜〔あら・はし〕→表外訓み・〔現すと同義

 ㉕〔 兆 朕 〕→意味〔表面に現れたきざし、しるし〕・これは兆民語で難しい・「」も「」も〔きざし〕・「朕兆」とも書く

 ㉖〔 四 肢 〕→意味〔人間の両手両足。また、動物の前足と後ろ足〕・」「」は〔てあし〕・「すらりとしたシタイ」は〔肢体〕であるのに対し、「なまめかしいシタイ」は〔姿態

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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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