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漢検1級試験問題演習=「中江兆民評論集」・その5―文章題

 「中江兆民評論集」シリーズも大詰めです。本番まで残り2日を切ったところですから、泰然自若としていかにも兆民らしい文章を翫わいながら最終盤の学習を進めてみてはいかがでしょうか。

 

 

 「狂人国」(明治24123日「自由新聞」)の一節です。

 

▼…我立憲自由党結党の初より今日に至るまでの歴史は、宛然たる狂病者なり。あるいは発汗し、あるいは①トシャし、②ゲンウンし、搐搦(チクジャク=けいれん)し、③ソウサクし、肥満し、時にあるいは肢体剝落し、時にあるいは自らその頭の毛を引抜き、自らその腹を搔割き、安穏無事に立働くことは今日まで一日もなし。しからば自由党は到底健全に復すべき見込なきか、彼れ狂病者なりとて打棄てて他に一個完全なる政党を造作するを得べきか。政党は個人を集合してなる所ろなり。しからば今の自由党中の個人を棄てて別に個人を集め来りて更に一政党を造るを得べきか。我日本国にて政党を造らんとせば、是非とも日本人を集めて造らざるを得ず。しかれば我日本人中にてこれまで自由党にもあらず、改進党にもあらず、保守党にもあらず、いはば政治的頑空無為の地に立居たる人物を拾ひ集めて別に一党を樹立することは、果してなし得べき事業なるか。吾人浅智の考にては、かくの如く政党的新規③マキ直ほしの仕事はなし得べしと思はれず。かつ我自由党が今日までかく自ら七顚八倒し、自ら病狂するは好事にはあらざるも、④テイシし来ればその中に極て末頼母しく前途極て多望なる分子あることを知らざるべからず。彼れそれ血溢れ肉肥へ筋骨太く逞しき一巨人なればこそ、一たび熱気を催すときは⑤テンキョウの態も発するなれ。もしこれ貧血の人物ならば精神脱落し、気心耗尽し、⑥コウゼンとして眠るが如く極て穏に死去りて、かく驚くべき症候を現ずることはなかるべし。唯それ血液に富み筋肉に富むの一点、これ正に医人にありて更に一匙の方剤を投ぜんとの望みを持する所以なり。

 

 ①〔 吐 瀉 〕 ②〔 眩 暈 〕 ③〔 瘦 削 〕 ④〔 蒔 〕 ⑤〔 諦 視 〕 ⑥〔 癲 狂 〕 ⑦〔 溘 然 〕

 

▼…誠に彼れ自由党の細胞たる各自由党員を看よ、彼れ党員は尽く壮猛⑧キョウレイの人物あらざるも、いづれも勇往敢為の気を負ふて、他人の⑨ショウカに㋐ふて走ることを甘んぜざる底の人物ならざるなし。彼れ党員いづれも金の鍬形を㋑むり金の采配を㋒り一方の大将たらんと欲せざるなし。黒笠を戴き番槍を㋓げ大将の馬後に下てその指揮を待つ者は一人もなし。さればこそ議院中にありても自身の意見と⑩シゴウの差違あるときは、目を㋔らし口を⑪トガらし、他党を問はず自党を問はず存分に胸中⑫ウツボツの気を散ぜざれば已まず。その議員と非議員との関係にても一点半点行違ひある時は、互に頭上より⑬フンジュウを㋕がるるの思をなして、直に攫合はんず勢に立至るが如きは、皆これ勇往敢為の気に富むの致す所ろなり。

 

 ㋐〔したが・ふ〕 ㋑〔・むり〕 ㋒〔・り〕 ㋓〔ひっさ・げ〕 ㋔〔いか・らし〕 ㋕〔そそ・がるる〕

 ⑧〔 強  〕 ⑨〔 牆 下 〕 ⑩〔 糸 毫 〕 ⑪〔    〕 ⑫〔 鬱 勃 〕 ⑬〔 糞 汁 〕

 

 

▼…また看よ、封建⑭センケンの習気、我㋖蜻蜓一洲の上天下地を蒙蔽し我数千百万人民の精神を懲(インチョウ=中毒症の一種)せし十数年の昔より、この自由の大義を把り来りて天下に呼号し、産を破り身を㋗ち、時勢潮流のしからしむる所ろとはいへ、その一心一気、最も今日自由田地の開墾に力ありたる板垣翁その人物を看よ。喜べば⑮エイジの如く怒れば赤鬼の如く、ロベスピヱールの卵ともいふべきダントンの⑯ドンガともいふべき一壮士の一時激昂の言を怒り、俄に分離状を発し、この愉々快々たるこの前途多望なる自由党を見棄てて、別に一箇の政党を樹立せんとまでに決心する厄介老人にあらずや。自身にこの自由党を産みて育てて今日までに至らしめて、この自由党が今日創始の国会中に頭まを入れて、その胸腹脚足を国会外に置きて、乃ちこの自由党が一大㋘蠎蛇の如く⑰エンエンとして全国に㋙まりて、今やその巨口長舌を議会中に現出せんとするにあたりて、この自由党の父たり母たり祖父母たる板垣翁は、その腕白なる一曾孫児一玄孫童の⑱キョウギを怒りて、六十に近き白髪頭を戴きて、この大勢の家族を跡にして家出せんとまで一時決心するにあらずや。今まこの文を艸する者は、一昨朝翁礫川邸に訪ひ、「翁は何故に早速星、河野諸氏隊長を呼びて一言せず、かく素短気に分離とまで決心し給ひしや。かほどの事は翁の年齢位地よりいへば叱付ても済むべきにあらざりしや」といひければ、翁は㋚ち笑ふて曰く、「少く短気なりしかも知れず、何様余が今日老後の楽とせる自由新聞社にまでとやかく㋛を入れ来ると思へばいかにも腹が立ちて、余はたとひ一人にてもこの自由の真義を立抜とまで決心したり。しかし余がかく短気なるは正にこれ余がいまだ老衰せざるの徴候にはあらずや」と自ら夸り居たり。この一言にても翁もまた我狂人党中の一人たる資格に富めること知るべきなり。ああ翁や、星、河野、大井、鈴木諸君その他我党員たる人物は、幕の内より三段目四段目に至まで、いづれも狂人の資格に富めり。我自由党は儼然たる一癲狂国なり。それこの六十齢の狂人、四十、三十、二十齢の狂人、自由の狂人、平等の狂人、何日も四十度以上の熱を有せる狂人が、今より以往相互にそのい毛皮を剝去り相合して一大肉塊となり、翁は政治的法王となり、星、大井諸子は存御の統領となり、行政部興り、立法部起り、紀律⑲シンゼンとして立ち、命令確然として行はれ、大経綸的の問題起るごとにこの一大肉塊たる自由党において、これを⑳コショウの上に弄し、直ちに一口騰げ一筆に論じ、以て輿論を打成するに至ればいかに愉快なるべきや。翁以下狂人どもの心得如何にあるべきのみ。

 

 ㋖〔あきず〕 ㋗〔なげう・ち〕 ㋘〔ぼうだ(うわばみ) 〕 ㋙〔わだか・まり〕 ㋚〔すなわ・ち〕 ㋛〔くちばし

 

 ⑭〔 擅 権 〕 ⑮〔 嬰 児 〕 ⑯〔 嫩 芽 〕 ⑰〔 蜿 蜒 〕 ⑱〔 驕 戯 〕 ⑲〔 森 然 〕 ⑳〔 股 掌 〕 

 

 

▼…唯この狂人どもは順境を喜ばずして逆境を喜ぶ。平遠の景色を喜ばずして峻嶺キュウタンを喜ぶ底の厄介動物なり。今や天下に立つべき反対党なし、故に爾く親子喧嘩をなす、故に爾く夫婦喧嘩をなす。

 

 〔 急 湍 〕

 

▼…我立憲自由党員がその四十度以上の狂熱を各々競ふて外に向ふて持出す時、その時はこれなん「巻地風来忽吹散、望湖楼下水如天」(地を巻き風来ってたちまち吹き散ず、望湖楼下水天の如し)の蘇黄州と米襄陽両景とを我蜻蜓洲裡にテンカンして美術的政治の能事ここに了はらんのみ。(P305~308

 

 〔 展 観 〕

 

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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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