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魚は美味い!だから詠むのか?詠まないのか?=「鶉衣」(24)

江戸中期の俳人、横井也有の「鶉衣」(岩波文庫上・下巻、堀切実校注)シリーズの24回目は、「百魚譜」(前編下四四、上巻191~204頁)の3回目です。とにかく魚に綢わる故事来歴を交えながら魚を語ります。たくさんの漢字が出てきますので、熟字訓も含めて読めるのは勿論として、書けるかどうかをチェックしておく好機としましょう。

1)は鵜川の2)カガリビに責められ、3)ナマズは濁江の瓢簞におさへらる、比目魚は黒白に裏表をあらはし、4)ナマコは跡も先もなし。

歯にもたまらぬゑいの骨は何の為に持ちたるや、それも5)クラゲのなきにはまされるか。

こゝに蛸の入道は壺に入りてとらるゝこそ愚なれ。那智の滝壺ならば、文覚が行力をも伝ふべきを、一休の口にはほめられながら、まさなの法師の身の果かな。

かながしらといふ名のめでたくてぞ、産屋の祝儀にはつかはれ侍る。さるを石持といふものゝかね持ともいはゞ、世にいかばかりもてなされむを、益なき名をもちて口をしとや思ふらん。

6)キス・さよりはをさなき心地ぞする。大男の髭口そらしてくふべきとも覚えず。

7)ハゼはたゞ釣る比の面白きなり。里は砧に蚊屋しまひて、木曾に便よき人は、まだき新蕎麦喰ひたりなどほのめかされて、うらやましき比ならん。

8)ドジョウは酒の上に赤味噌ほどよく調じて、唐がらしくはへたるこそよけれ。白味噌がちなる大みや人は、いかに喰ふらんとさへ覚束なし。

9)フグとは先名のふつゝかなり。いかで無比の美味をそなへてあやしき毒をもたりけむ。その味ひと毒の世にすぐれたれば、くふ人を無分別ともいひ、くはぬ人を無分別ともいへり。

10)イワシといふものゝ味ひことにすぐれたれども、崑山のもとに玉を11)ツブテにするとか、多きが故にいやしまる。たとへ12)は田畠のこやしとなるとも、頭は門を守りて天下の鬼を防ぐ。其功、13)ワニ・鯨も及ぶべからず。

されば歌人は鳥虫に四季をわかちて、魚に四時の題詠はなし。俳人兼て魚を品題とするは、もつぱら味ひの賞翫を捨てざる故なり、しかれば歌よみは耳目の愛にとゞまりて、食は野卑なりとてとらざるに似たれど、「かの喰ふべき若菜をもつぱらによみて、菜の花のうつくしきを歌の沙汰に及ばぬは、喰はれぬ故によまざるにや、無下に口惜し」と人のいひたる、さがなき詞ながらおかしかりけり。


和歌に於いて春夏秋冬、それぞれの季節ごとに鳥や花を賞でていますが、魚を四季で分けて詠むことはないと也有は言います。俳諧の世界では魚を題材に取り上げるのはもっぱらその美味なる味を惜しむからである。鳥のさえずりや花の艶やかさだけを和歌の世界では第一とするのに対して、食べることや味はあまり取り上げないのに似ているかもしれません。生きる上で大切なはずの「食」ですが、歌に詠むのは「野卑」であるととらえているからでしょう。「かの喰ふべき若菜をもつぱらによみて、菜の花のうつくしきを歌の沙汰に及ばぬは、喰はれぬ故によまざるにや、無下に口惜し」とあるのは誰の言辞か分かりませんが、也有の壺に嵌まったフレーズのようです。「さがなき詞」とは「皮肉が効いている悪口」くらいの意味でしょうか。「若菜」は本来食べるもの、「菜の花」は本来美しいもの。しかし、和歌の世界ではもっぱら若菜ばかり詠んで菜の花を詠むことは少ない。本来逆ではないのかと揶揄している。和歌の世界の形式ばかりを重んじる堅苦しさをあざ笑うと同時に、俳諧の自由闊達さを誇っているのかもしれませんね。しかし、その俳諧の世界にも形式主義が訪れようとしているとの危惧も包含されているのかも。

1) =はや。「はえ」でも正解。コイ科の淡水魚。アユに似ていて細長い。川の水の清い所に棲む。オイカワ。

2) カガリビ=篝火。夜間の照明・警備・漁猟などのために、屋外でたく火。「篝」は、木や竹を四角く組んで火をつける組み木。音読みは「コウ」。「コウカ」と音読みもあり。篝灯(コウトウ=かごで灯火をおおう、かがり火をたく、灯火をともす)。

3) ナマズ=鯰(魸)。国字。「ネン」。中国に逆輸入。

4) ナマコ=海鼠。熟字訓。

5) クラゲ=海月(水母)。熟字訓。中国語なら、虫篇に「宅」で「ダ・ジャ」。

6) キス=鱚。国字。中国にも逆輸入された。

7) ハゼ=鯊(沙魚)。ハゼ科の淡水魚。沙に棲息。

8) ドジョウ=泥鰌(鯲、鰌、鰍)。野田首相のキャッチフレーズ。最近は積極的に用いることはしない。

9) フグ=鰒(河豚)。音読みは「フク」。

10) イワシ=鰯(鰮)。国字。小物、つまらないことの喩えとしても用いられる。

11) ツブテ=礫。こいし、小つぶの石。音読みは「レキ」。礫石(レキセキ=小石、つぶて)、礫岩(レキガン=小石で出来た岩)。

12) 骸=から。「むくろ」「もくろ」でも正解か。人のからだを言いますが、ここはイワシの身を食べた後の残りのからだです。「から」の訓みは当て字ととらえていいでしょう。音読みは「ク」。軀幹(クカン=からだのほねぐみ、からだつきのこと、身体)、軀体(クタイ=からだ、体軀=タイク=)、軀命(クメイ=からだと、いのち、身命、重大な出来事を必死に処置する時に用いる言葉)。

13) ワニ=鰐。音読みは「ガク」。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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