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寄ってらっしゃい!獲れたて新鮮な魚がより取り見取りだよ~=「鶉衣」(22)

江戸中期の俳人、横井也有の「鶉衣」(岩波文庫上・下巻、堀切実校注)シリーズの22回目は、「百魚譜」(前編下四四、上巻191~204頁)を取り上げます。この段は別名、「衆魚譜」とも言います。冒頭なんの前文もなくそれぞれの魚の説明が始まり、途中まとめもなく20種類以上が羅列されて、最後に魚の俳諧における題材としての特色について解説されて締めくくられます。俳諧師にとって魚をどう句に詠むのかといった思いなどを斟酌しながら読むのも面白いかもしれません。いずれも中国の故事、日本古典の来歴が盛りだくさんです。迚勉強になります。割と長編ですので都合3回に小分けして進めることといたします。

A)人は武士、柱は檜の木、魚は■とよみ置きける、世の人の口にをける、をのがさまざまなる物ずきはあれども、此魚をもて調味の最上とせむに1)トガあるべからず。糸かけて台に据ゑたる、男ぶりさへ外に似るべくもなし。しかるをもろこしには、いかにしてか、ことに2)ショウガンの沙汰も聞えず、是に乗りける仙人もなし。されば夷三郎殿も、他の葉武者には目もかけず、たゞ是にこそ釣もたれ給へ。

B)■を3)の司といふは、食味はなれたる理屈にして、さは是を料理せんと学びたる人は、むかし愚なる名をこそとゞめたる。

C)龍門滝にのぼらんとする魚有りて、おほけなくもα)大聖の御子にも、此名をからせ給へる。されば世の名声はかの鯛にも並ばむとす。かれはいかなる幸にかあらむ。味ひ美なりといへども、鯛の料理の品々なるにはにるべくもなし。4)乾物・5)炙物にせず、6)すましによろしからず、くずし7)カマボコに用ひがたく、塩にも調ぜず。只さし身・あつ物にとゞまるは、多能を恥づといひけんを、中々ほまれと思へるにや。昔平家に悪七兵衛景清と名乗りて、今民間には泣く子をも8)すべく、朝比奈・弁慶に肩をならべんとす。しかるに記録の上にしては、しころ曳の外はさせる働きなくて、只二郎兵衛も五郎兵衛もおなじつらなる侍なり、「いかに世に名のことごとしきぞ」と、ある人評したるものあり。β)かれたゞ七兵衛が類なるべし

D)松江の名産、我朝にも品くだらず。γ)張氏は是を秋風に思ひて9)シトを辞し、平家は是を船中に得て10)カンロに進む。進退いづれをかうらやむべき。




■A)~D)はそれぞれある魚(ただし魚でないものも含む)を説明したくだりである。それぞれ漢字一文字で記せ(ただしA)、B)は■に漢字が入る)。

■下線部α)は、誰のことか。

■下線部β)は何を言おうとしているのか、「かれ」「七兵衛」がそれぞれ何であるかに注意しながら、説明せよ。

■下線部γ)の故事に基づいた四字熟語とその意味を記せ。

まずは四種類。そのいちいちは解説を付けませんが、いずれも故事来歴を味わいながらその魚の特徴を彷彿とさせてみてください。もちろん、漢字も。。。

A)→鯛。

B)→龍。

C)→鯉。

D)→鱸。

α)→孔子。ここはその子の名前が「鯉」(リ、字は伯魚)であることをいう。生まれた時、魯の昭公より鯉を賜わったことから名付けたと「史記」にあるという。

β)→「かれ」は「鯉」、「七兵衛」は平家物語に出てくる「平景清」。屋島合戦で豪力を発揮する以外に活躍はなく、「源平盛衰記」でも、敗走する平家の落ち武者の象徴的存在。ところが、後の世の演劇や語り物では英雄視されている変わり種。朝比奈三郎義秀や武蔵坊弁慶ら伝説の英雄と同一視もされるが、平家物語ではいたって地味な取り扱い(「しころ曳」はそのエピソード、岩波によると、巻十一の「弓流」の条に見えるとある)しかされていないので、二郎、五郎ら世の無名兵士と同じだろう。かの魚、鯉もそれと同様に伝説が先行しているきらいがあって、その調理方法や食べ方はいたって地味なものであるということ。ちょっと鯉がかわいそうかな?

γ)→蓴羹鱸膾(ジュンコウロカイ)。故郷を懐かしく思う心情のたとえ。ここは晋の張翰が故郷の料理である蓴菜のお吸い物と鱸の鱠のおいしさにひかれ、官を辞して故郷に帰ったことをいう。ちなみに「平家は云々」の故事は、巻一に平家の繁盛が熊野権現の御利益のお陰で、清盛が安芸守だったころに、権現詣りの途中の舟に鱸が躍り入ったことを指す。精進潔斎の身でありながら一族にその鱸を振る舞って権現に詣でた結果、かの栄達に及んだ。すなわち平家にとって鱸は守り神なのです



1) トガ=咎。さしさわり。「とが」はほかに、「過、科、謫、辜」。これらも正解です。音読みは「キュウ」。咎殃(キュウオウ=さしさわり、災難)、咎悔(キュウカイ=とがめと後悔、さしつかえ)、咎罪(キュウザイ=罪、過失、咎過=キュウカ=・咎愆=キュウケン=)、咎徴(キュウチョウ=天のとがめのきざし、災いのしるし)。

2) ショウガン=賞翫(賞玩)。物の美しさや、味のよさなどをめでて、たのしみ味わう。珍重する。

3) 鱗=うろくず(うろこ)。魚類、魚。「いろくず」とも。

4) 乾物=ひもの。保存がきくよう、魚・貝などを干して作った食品。干物。

5) 炙物=あぶりもの。火にあてて焼いたもの。特にあぶった魚肉。やきざかな。「炙」は「あぶる」。音読みは「シャ」。燔炙(ハンシャ=照り焼きにする)、親炙(シンシャ=そばについて直接教えをうけること)、炙背(シャハイ=背中に日の光をうける、転じて、気持ちのよいこと、「せをあぶる」と訓めば、苦しいことのたとえ)、膾炙(カイシャ=だれにもたしなまれている物のたとえ)。

6) 鱠=なます。薄く細く切った魚肉を酢に浸した食品。「膾」とも。

7) カマボコ=蒲鉾。白身の魚のすり身に卵白・調味料をまぜてこね、板に盛り、または簀巻きにして、蒸したり、焼いたりした食品。その形がガマの花穂に似ていたから。

8) 威す=おどす。力づくで相手をへこませる、おそれさす。

9) シト=仕途。役人になるという進路。「仕塗」とも。

10) カンロ=官路。役人としての身分・職務。宦途とも。
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char

Author:char
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言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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