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烏水ワールドを味わうには荘子ワールドも必須です=「鎗ケ嶽探険記」(24)

明治のアルピニスト、小島烏水の「鎗ケ嶽探険記」(岩波文庫、「山岳紀行文集「日本アルプス」所収、近藤信行編)シリーズの24回目は、いよいよラストの章、「その十 鎗ケ嶽裏山越えの記 下」に突入です。

時に午前九時を過ぐること、四分の一時。

霧の澎湃として脚下にひたうつ鎗ケ嶽の絶巓を、南へと伝ひて辿るに、心地愴然として1)ソウヨウの渚に沿ひて歩むごとく、これ平地か、これ高嶽かのけじめを忘る、頭上はこれ第一の無限、脚下はこれ第二の無限、彼は水の如くこれは鏡の如く、相磨し相反して、現世の深淵と未来世の清潭と、一髪の汀線に劃せらるるところ、生命の2)ヨドみ死の色は沈む。

我初め山の高きに登りて、他の引くきもの小なるものに、王者の威を挿んで臨まむことをおもひぬ、3)底事ぞ、鎗ケ嶽彼自身は、自己のいかばかり高きかを知らざるが故に、我もいつしかその高きを忘れぬ、山に入りて山を知らざるはなほ凡境、山に登りてなほかつ山を知らざるに至りて、我や4)ムカユウの帝郷に5)ショウヨウユウをなしぬ。

よしや天の才は徴されて天上の6)シュウブンロウともなれ、我らは到底永くこの7)高御座を領するの人にあらじ、かくて8)遠謫の命運今や我に迫りぬ。



問題の正解は続きにて。。。





1) ソウヨウ=蒼洋。あおい海、あおうなばら。蒼海(ソウカイ)・蒼溟(ソウメイ)ともいう。意外に難語でしょう。動物と組み合わせた蒼蠅・蒼鷹ではない。

2) ヨドみ=澱み。「澱む」は「よどむ」。「淀」でも正解でしょうか。水中のかすが沈んでたまること。また、泥がたまって水が流れないこと。音読みは「デン」。澱淤(デンオ=よどみ、おり、澱汚=デンオ=)、澱江(デンコウ=大阪の淀川の中国ふうの呼び名)、澱粉(デンプン=穀類・イモ類などに含まれる炭水化物。白色の粉末状で、食用や工業の原料とする)。

3) 底事=なにごと。「底」は「なんぞ、なに」との俗語よみがあり。覚えておきましょう。唐・宋代の俗語として、疑問詞として用いられていたようです。ここは面白い用例です。

4) ムカユウ=無何有。「~之郷」と用いて、「形ある物のない世界。無辺無涯の仙境」。荘子の説く理想郷。

5) ショウヨウユウ=逍遥遊。物事のあるがままに任せて、こだわらないこと。「荘子」の同名の篇名による。

6) シュウブンロウ=修文郎。あの世(冥途)における架空の官名。「修文」とは「文人の死」をいい、古代中国の書物「三十国春秋」に「死亡した中牟の県令、蘇韶(ソショウ)が生き返った際、従弟の節に対して、(孔子の弟子であった)顔回と卜商(ボクショウ)があの世で修文郎という(架空の)官に就いていたと話した」という故事が載っていると、「蒙求」にあります。「太平御覽」にも出ているようです。烏水はこれを踏まえて、あたかも天空の冥途にいるかのような錯覚に陥っていることを表現しています。

7) 高御座=たかみくら。天皇の玉座。天皇の位の称。

8) 遠謫=オンタク。遠国に流すこと。流罪の一つ。「謫」は「つみ」「せめる」。地方に流すこと。左遷。「エンタク」とも読めますが、岩波文庫のルビは「オンタク」。遠流は「オンル」。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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