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貧しい地域でも工夫すれば美味しく食べられるのだ=「飛騨の山と越の海」(42)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の42回目は「二〇 食物」の2回目です。飛騨地方の主食について詳述されており、言葉や漢字の勉強になります。麗水の旅に付いていきましょう。

 其の山間1)ヘキユウの村に至りては実に意想の外に在り、家には床なし、木葉、藁を積みて上に蓆を敷くに過ぎず、其の食ふところの物、枝は山躑躅に似、葉は2)木天蓼に似たる3)カンボク4)令法の5)ドンガを食ひ、梠樹(からたち)に似て葉の黄なる窶藪(はや)の葉を6)杵砕して雑炊とし之れを食ふ、山中食塩に乏しきをもて、菜を漬くるに些の塩をも加へず、7)サンパイして奇臭鼻を衝くを却つて8)しとして雑炊とし之れを食ふ、素菜漬といふ、今試みに其の常飯の品目を挙れば、稗飯、割飯、芋飯、大根飯、菜飯、蕪飯、小豆飯、角豆飯、稗粉飯、令法飯、雪花菜飯、小麦の9)ふすまなるカラコ飯、栃粥、稗炒粉、渋柿を臼につき粉としなしたる柿炒粉、10)シイナ炒粉、楢炒粉、菜雑炊、蕪雑炊、夕顔雑炊、素菜漬雑炊等是れなり、別に団扇餅といふものあり、冬春二期に之れを調味して朝飯の代りとなす、米、麦、粟、稗、黍、蕎麦、大小豆、11)エンドウ、12)もろこし、黍の新陳相雑りたるを13)きて粉となし、水を和して平扁なる楕円形を作り、14)でゝ竹串に貫き、味噌を抹して15)アブりたるものなり。




敢えて問題にしませんでしたが「稗飯、割飯、芋飯、大根飯、菜飯、蕪飯、小豆飯、角豆飯、稗粉飯、令法飯、雪花菜飯、小麦のふすまなるカラコ飯、栃粥、稗炒粉、渋柿を臼につき粉としなしたる柿炒粉、シイナ炒粉、楢炒粉、菜雑炊、蕪雑炊、夕顔雑炊、素菜漬雑炊」を読んでください。


団扇餅は「うちわもち」。形がうちわそっくりの楕円形。材料は麗水が書いている通り、とにかく穀物類を粉にして水を混ぜて餅状にするのです。

貧しいながらも最大限工夫した食物の数々。飽食の現代こそ思いだすべきではないか。大震災後に求められる日本人が求めるべき道筋の一つとも言える。贅沢は敵だとまでは言わないが、価値観の最上のものではないという事だけは言えるでしょうね。今一度、シンプルな生活に戻るべし。そこから初めて次のステップが見えてくるような気がします。

麗水が歩いた全国各地の風物を味わっていますが、たかだか100年ちょっと前の日本の現実。すこしだけ時計の針を戻してみると見えてくるものもあるでしょう。いましばらく、麗水の紀行文を味わうことによって、言葉や漢字だけなく日本の原点を見つけることが出来るかもしれません。

問題の正解などは続きにて。。。






1) ヘキユウ=僻幽。かたいなか。へんぴでくらい。

2) 木天蓼=またたび。マタタビ科の蔓性落葉低木。熱湯に浸して乾燥した果実は中風、リウマチに効あり、その名の由来は、食べるとまた旅が出来るからとする俗説がある。若芽も食用。

3) カンボク=灌木。枝が群がり生える木。ツツジ、ヤマブキなどの低木。対義語は喬木(キョウボク)。灌莽(カンモウ=草木が生い茂ったくさむら)。

4) 令法=リョウブ。リョウブ科の落葉小高木。山地に自生し、6月、白色の小五弁花をつける。若葉を煮て食用とする。令法飯(リョウブめし)は木曾御岳行者の食物。救荒食物でもある。

5) ドンガ=嫩芽。草木のわかい芽。わかめ、新芽。「嫩」は「わかい」。嫩日(ドンジツ=昇ったばかりのわかわかしい太陽)、嫩色(ドンショク=草木のわかわかしい色)、嫩晴(ドンセイ=長雨があがって久しぶりに晴れること)、嫩草(ドンソウ=わかく柔らかい草)、嫩竹(ドンチク=わかい竹)、嫩緑(ドンリョク=若草や若葉の緑、新緑)。嫩草山(わかくさやま)。

6) 杵砕=ショサイ。きねでついて細かくすること。「杵」は「きね」。杵臼之交(ショキュウのまじわり=)。

7) サンパイ=酸敗。有機物(主に酒類や脂肪類)が微生物・熱・光・水分などにより、酸化または加水分解されて種々の酸化物を生じ、味が変わって酸味をもつこと。産廃ではないので要注意。

8) 美し=うまし。美味。「美味い」。

9) ふすま=麩。小麦をひいて粉にした時に残る皮の屑。洗い粉または牛馬の飼料に用いる。もみじ。むぎかす。からこ。

10) シイナ=秕(粃)。殻ばかりで実の無い籾。また、果実の実らないでしなびたもの。しいなし、しいなせ、しいら、しいだ。

11) エンドウ=豌豆。マメ科の一年生、二年生作物。完熟豆が赤褐色の赤豌豆、花後の若いさやを莢豌豆。遺伝学では古典的な実験材料です。

12) もろこし=蜀黍(唐黍)。イネ科の一年草。熱帯アフリカ原産。穀物を食用とする。モロコシキビ、トウキビ、タカキビ、ソルガム。漢名は「蜀黍」(ショクショ)。

13) 碓き=つき。「碓く」は「つく」。うすでつく。「碓」は「うす」。音読みは「タイ」。碓舂(タイショウ=石うすでつく、碓擣=タイトウ=)、碓声(タイセイ=石うすでとんとんとつく音)。

14) ユで=茹で。「茹でる」は「ゆでる」。熱湯で煮る。うでる。音読みは「ジョ」。「くう、くらう」の訓みもある、というかもともとはこの意味。茹葷(ジョクン・クンをくらう=ニラ・ニンニクなどの臭いの強い野菜をたべる)、茹菜(ジョサイ・サイをくらう=野菜や山菜をたべる、茹素=ジョソ、ソをくらう=)、茹菽(ジョシュク=野菜と豆、シュクをくらう=豆を食べる、貧しい生活をする)、茹草(ジョソウ・くさをくらう=草をやわらかくしてたべる)。

15) アブり=炙り。「炙る」は「あぶる」。火にあててかるく焼く。火に当てて温め乾かす。「焙」でも正解。音読みは「シャ」。炙背(シャハイ=背中に日の光をうける、転じて気持ちの良いこと、せをあぶる=背中を炙る、苦しいことのたとえ)、燔炙(ハンシャ=てり焼き)、親炙(シンシャ=そばにいて直接教えをうけること)。


ひえめし
わりめし
いもめし
だいこんめし
なめし
かぶらめし
あずきめし
ささげめし
ひえこめし
りょうぶめし
きらずめし
からこめし=「カラコ」は「殻粉」で、小麦粉で作った団子、むぎかす、すなわち麩(ふすま)のこと。
とちがゆ
ひえいりこ
かきいりこ
ならいりこ
なぞうすい
かぶらぞうすい
ゆうがおぞうすい
すなづけぞうすい

「角豆」と「雪花菜」は熟字訓問題にこそふさわしい。「ささげ」と「きらず」。「ささげ」は「大角豆」と書いた方が一般的か。「雪花菜」は、豆腐の搾り滓でつくる「おから」のこと。「うのはな」ともいう。「炒粉」は「米の粉を炒ったもの、菓子だねにする、むぎこがし」。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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