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飛騨山中にいるという「大人」という怪物に会ってみたいものじゃ=「飛騨の山と越の海」(39)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の39回目です。今回の余話は荻生徂徠が「飛騨山」という文章を書いた中で、飛騨地方に住む原人「大人」(おおひと)について、麗水がそのまま引用しているくだり。さながら雪男といったところでしょうか。あまり漢字はありませんがご容赦のほどを。。。



一八 徂徠の飛騨山


 『飛騨の山に大人といふ者あり。長け九尺ばかり、木の葉を綴りて衣とす、物を言ふにや聞きたる人なし、或猟師山ふかく分入りて獣多き処を尋ねけるに、思はず行逢ひける、其の走ること飛ぶがごとく、逃るべきやうもなければ、詮方なくせめては斯くしてもやと飢の用意に持ちたる団飯を取り出でゝ手にすゑて差し出しつ疾く食ひて得ならず悦べるやうなり、誠に深き山中に自づから生れ出でたるものなれば、1)コウコウとかやいふ世のためし思ひ出でられて、斯る物食ひたらんは始めての事なるべしと思はる、暫くありてしゝむじな2)オビタダしく殺しても来り与へぬ、団飯の恩に報ゆるなりけり、猟師労なくして獲物多きを悦び思ひて、夫れより日毎にまろめ飯を包み行きて獣に易て帰りける、隣なる猟師怪しみて窃かに窺ひ置き、夜深に先立ち行きて俟つに、思はず例の者に逢ひぬ、鬼となりと思ひけん、玉そろへて打ち、打たれて逃げゝれば猟師も帰りぬ、初めの猟師、此の事をききてあな不便の事かなと奥深く尋ね入り、峯より覗き見れば谷底に倒れ伏し居たるを、同じやうなる者の傍に添ひ居たるは介抱するなるべし、されど近づきなば、人に打れし仇を我にも怨みむずらんと、誠に怖ろしくて止みぬ、斯くては死につるなるべしと、後に此事を人に語りける』



☆団飯は「まろめめし」。今でいう握し飯、御結びのことです。

ストーリーはそれほど難解ではないでしょう。身長2メートルを遥かに超す巨大な「大人」と、猟師の人間との触れ合い。握り飯と獲物とを交換するといった、ささやかな交流が描かれている。お約束の妬んだ猟師の「横槍」「介入」によってその交流が崩壊することとなりました。飛騨地方にはそんな「怪物」がいたという伝説です。
麗水が何を言いたかったのかは定かではありませんが、人里離れた寂しい飛騨の道を歩いていて、この徂徠のお話を思い出し、大人という奴に会いたいやら会いたくないやら、複雑な思いが去来したのかもしれません。

問題の正解は続きにて。。。







1) コウコウ=洪荒。広大で、とりとめのないこと。世界のはじめ。「洪」は「おおい、おおきい」の意。

2) オビタダしく=夥しく。「夥しい」は「おびただしい」。
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2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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