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ひだひだひだ…飛騨の由来は何ぞや?=「飛騨の山と越の海」(38)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の38回目です。越後・小千谷に在す母上様の許に預けていた子供を迎えに行く旅は無事終わり、既に東京への帰途に就いております。旅のお話はひとまずさて置き、これから暫くは飛騨地方に関する補遺というか、余話のようなお話が続きます。

一七 飛騨雑俎

 飛騨は古、斐陀(ひだ)と書きたり、万葉集には斐太(ひた)、和名抄には比太(ひた)、山岳重畳して国の形宛がら衣の襞襀(ひだ)のごとければ1)か名けたりともいひ、工匠の木材を造る者を挽手人(ひきびと)又は挽板人(ひたびと)といふに起り、やがて国の名となりしといひ、或は山田磽确(げうかく)、樋を以て水を引くに依りて名けたりともいひ、高山四境に2)ちたれば夜明くれども日出でず、其の日を仰ぐは常に中天に在るを以て国の名は応に日高に基づけるなるべしなどいへる、若くは天智の帝近江大津の宮を造営したまひし時、此の国の人良材を3)コウノウし、六十里の山河、馬に駄して走しること飛ぶがごとく、一日にして達せるをもて帝大に4)タンショウし、飛騨の名を賜ひしといへるに至りては、説くこと愈々牽強附会なり。

 国を挙げて皆な山なり、唯だ高山附近数里に平野を見るのみ、5)チョウラン複嶺は世と相隔絶して斯蕞爾(さいじ)たる山国を別乾坤となし、人文の発達を6)ソショウしたれば、高山大沢英霊の気7)りて傑人を出すといふにも関せず、余の寡聞なる、飛騨の木匠(たくみ)といふのみ人口に8)カイシャし居るの外、大人物の出でたるを記せざるなり、されば物の本にも此の国に人を称して、愚痴にして迷信多く、道理を識らずなどいへり、9)ジョコン文教10)カジに普及し、数家村といへども亦た校舎を見るの有様なれば、昔此の国を罵しりし人は、重泉の下にて其の文を焚かんと思ひ居るなるべし、而も猶悍(くわうかん)親しむべからざるの民ありとは信乎、若しあらば、葢(そ)は仁徳帝の御宇、一体にして両面四手、手毎に弓箭刀戟を執りて山谷を走しること平地のごとく、蹻捷(けふせう)比なく、婦女を掠め財宝を奪ひ、終に難波根子武振熊の11)チュウリクするところなりし宿儺(しゅな)の12)ビョウエイか、或は徂徠の記するところ大人(おほびと)の遠孫か、非乎。

★「蕞爾」(さいじ)→国やからだなどが小さいさま。「蕞」は「小さいさま、ひとつまみの」。

★「悍」(こうかん)→荒々しくて凶暴なこと。「」は「わくにはまらない、荒々しいさま」。

★「葢」は「蓋」の異体字。

★「蹻捷」(きょうしょう)→走るのが速いさま。




「別乾坤」は「別天地」。飛騨の名前の由来が幾つも書かれています。山の多い地方で他国から隔絶されたため、大人物の出ない地方だと小馬鹿にする人もいたとありますが、いまや学問は普及しそんなことはないといいます。
気性の荒い民族だともいいます。その伝説の由来は、最後にある「徂徠の記するところ大人」。これは荻生徂徠の解説で次回詳細に説明があります。

問題の正解は続きにて。。。







1) 爾か=しか。それ、そのような。近くにある事物や前に述べた事物・事がらを示す指示語。

2) 峙ち=そばだち。「峙つ」は「そばだつ」。じっと動かないでまっすぐにたつ。音読みは「ジ」。峙立(ジリツ=じっとそびえたつ)、対峙(タイジ=対立する両者が激しく張り合ったまま動かないこと、高くそびえる二つがむかいあってたつ)。

3) コウノウ=貢納。みつぎものを納入する。「貢」は「みつぎ」。

4) タンショウ=嘆賞。感心してほめたたえる。嘆称・嘆美・嘆誉とも。「嘆」は「歎」で置き換えてもOK。嘆傷だと「ながき悲しむ」。嘆悼(タントウ)とも。

5) チョウラン=重巒。いくえにも重なっている山々。「巒」は「連なった山々」。

6) ソショウ=阻障。はばみさえぎること。「障」は「さえぎる」。障扞(ショウカン=ささえふせぐ、ふせぎ守ること)、障翳(ショウエイ=おおって光・雨・風などをさえぎる)、障蔽(ショウヘイ=さえぎりおおう、ふせぎ守る)、障癘(ショウレイ=むし暑い地方で、山川の毒気にあたっておこる病気)。

7) 鍾まり=あつまり。「鍾まる」は「あつまる」。かたまってあつまる。他動詞で「あつめる」の方がポピュラー。鍾愛(ショウアイ=愛を集める、非常にかわいがること)。

8) カイシャ=膾炙。なますとあぶりにく。人々の口にのぼり、もてはやされる。「膾」は「なます」。膾炙人口(ジンコウにカイシャす=詩文や言い回しが広く人々にもてはやされ知れ渡ること)。「炙」は「あぶりにく」。いずれも美味の象徴。

9) ジョコン=如今。今、ただいま、現在。

10) カジ=遐邇。とおい所と、近い所。遠近。「遐い」は「とおい」。遐異(カイ=世俗とかけ離れて異なっていること)、遐域(カイキ=はるかとおくにある土地)、遐遠(カエン=はるかにとおく離れていること)、遐観(カカン=はるかとおくをながめやる)、遐棄(カキ=見捨てて遠ざける、自分の職分をみすて離れる)、遐挙(カキョ=とおい所に行く、名誉がはるかとおくにまで伝えられること)、遐荒(カコウ=都からとおく離れた、異民族の住む未開の土地)、遐陬(カスウ=中央からとおく離れたへんぴな土地、辺地)、遐想(カソウ=はるかにとおく行った人を思う、俗世の事がらを超越した気持ちになる)、遐登(カトウ=はるか高く登る、人が死ぬこと)、遐年(カネン=長生きすること、遐齢=カレイ=)、遐念(カネン=はるか昔をおもいやる)、遐福(カフク=おおいかぶさるほどの幸せ、非常に大きな幸福)。

11) チュウリク=誅戮。罪のある者をころす。「誅す」は「ころす」。誅求(チュウキュウ=金銭・財産をむさぼり求める、税金などをきびしく取り立てる)、誅屠(チュウト=罪を責めて殺す)、誅鋤(チュウジョ=草木を根こそぎ堀取って除く)、誅翦(チュウセン=罪を責めて罰として殺す)、誅殄(チュウテン=罪を責めてほろぼす、誅滅=チュウメツ=・誅絶=チュウゼツ=)。

12) ビョウエイ=苗裔。血筋のつながった遠い子孫。苗嗣(ビョウシ)・苗胤(ビョウイン)・苗緒(ビョウショ)とも。「裔」は「着物のすそ」の意。「苗」は「ほそぼそとつながっていく血筋、子孫」の意。苗末(ビョウマツ=遠い子孫)。
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不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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