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お元気な母上様にお目にかかれてこの旅は終わります…=「飛騨の山と越の海」(37)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の37回目です。母上との再会、相も変わらぬお元気な様子を見ることが出来ました。夏の間、健康のすぐれない我が子を避暑のために預かってもらっていたんですね。彼を迎えに行くのも、今回の10日間の旅の大きな目的だったのでした。


一六 帰途

 七日朝六時、汽車に搭じて来迎寺駅に下り、車を僦ふて小千谷町に入り少弟の家に到る、北越鉄道の沿線は、1)ソウユウの地たり、記すべきの事なし、初夏より2)ショウショの為めに児を3)ラッして来り居たまふ母甚だ4)セイケン、児も亦5)癒ゆ、都て喜ぶべし。

 翌早、少弟に導かれて、其の自から役を督せる信濃川水力電気工事の作業を観る、斯の大工事は実に新潟県の巨家山口権三郎氏の巨万の資を擲つて独力経営するところなり、6)シュンコウは応に明後年なるべしと、氏歯7)ジジュンを過ぎ長身清癯(せいく)、美8)シュゼンあり、自から奉ずること甚だ9)ケンソ、博愛衆に施す、凡て県下の殖産興業の事、一として斯の翁の参与せざるはなく、又た力を育英に致し、毎歳五千金を出して有為の人才に資給すといふ、誠に偉人なり。

 還る時、工夫をして10)サクヤクを信濃川の淵に投ぜしめ、鯉魚、香魚及び11)ザツリン約そ一籃を獲て帰り、大に晩餐の膳を賑はす。

 九日朝、母に陪し児を拉して終に帰途に上る、少弟送りて塚山駅に到りて相分る、直江津に至るの間は力士梅が谷一行と車を同して些の12)セキリョウを覚えず、善光寺は、来時母の既に詣でたまひければ今宵は上田に宿らんと思ひしが、駅を過る頃ひ児の睡りたるをもて更に数駅を渡り、六時軽井沢に至りて車を下る、細雨淋冷、寒きこと冬の俄かに来りしかを訝かる、十日の清游此に終る。

★「清癯(せいく)」→やせてはいるがすっきりとしたからだつき。「癯」は「やせる」の意。



本シリーズの第一回(ここ)に立ち返ってみますと「程を計るに往還約三百里、其の中舟車の便のあるは二百四十里、他の六十里は荒山乱水」とありました。八月三十一日の午後六時に東京・新橋駅を出立し、美濃・岐阜、飛騨・高山、神通川、越中を歴て、越後・小千谷まで十日間かかりました。仔細に見ますと「児と共に在す老母に陪して…」ともありました。この児は自分の息子だったんですね。なぜに東京から離れた越後にいたのかは冒頭には書かれていませんでしたが、病弱で避暑のためだったんですね。

ちなみに、山口権三郎(やまぐち・ごんざぶろう、1838~1902)とは明治時代の実業家、政治家。越後横沢村(現新潟県村上市)の庄屋の出身。県議会議長も務め、日本石油や越後鉄道、長岡銀行などの創設にかかわった。学校を創設し、子弟教育にも熱心な篤志家でもあったようです。

「少弟」とは、弟が二人いて若い方、すなわち下の弟ということなのでしょう。第一回では「次弟」となっていました。


問題の正解は続きにて。。。




1) ソウユウ=曾遊。以前に遊んだことがある、または、前に一度行ったことがある。「曾遊之地」。

2) ショウショ=銷暑。夏の暑さをしのぐ、避暑。消暑(ショウショ)・銷夏(ショウカ)とも。「銷」は「けす」。「弱まらせる」の意。銷厭は「ショウヨウ」。滅ぼし消す、病根や祟りを揉み消す。

3) ラッして=拉して。「拉」は「ラツ」。両手で引っ張ること。新常用漢字です。

4) セイケン=清健。さぱりとして健康であるさま。

5) 疾=やまい。急にひどくなる病気。急性で悪性の病気。転じて、ひろくやまいをいう。疾首(シッシュ=頭痛)、疾痛(シッツウ=病気の苦痛)、疾恙(シツヨウ=病気)疾癘(シツレイ=悪性の流行病)。

6) シュンコウ=竣功。建物がすっくと高くたつことから、工事が完成すること。落成。竣工でも正解。竣成とも。

7) ジジュン=耳順。六十歳。「論語」為政篇の「六十而耳順」から。「歯」は「よわい」と訓み、年齢のこと。

8) シュゼン=鬚髯。ひげ。正確に言うと、あごひげとほおひげ。髯鬚(ゼンシュ)ともいう。髭(くちひげ)も忘れずに。髭鬚(シシュ)もあり。髭鬚+鬚髯=髭鬚鬚髯→髭鬚髯。

9) ケンソ=倹素。質素で飾り気のないこと。倹朴(ケンボク)とも。「倹しい」は「つましい」「つつましい」。

10) サクヤク=炸薬。爆薬。「炸ける」は「はじける」。炸発(サクハツ=爆発する、炸裂=サクレツ=)。

11) ザツリン=雑鱗。種々雑多な小魚。「鱗」は「さかな」。鱗萃(リンスイ=うろこのように多くのものが寄り集まる)、鱗羅(リンラ=目が細かくきちんと並ぶ)。

12) セキリョウ=寂寥。音もなく、人影もなく、ひっそりとしているさま。寂歴(セキレキ)。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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