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急げ!海水浴客も遊ぶ四方の浜へ=「飛騨の山と越の海」(29)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の29回目は、「一三 四方の浜」のその2です。みすぼらしい風体から乞食に思われたため、冷遇された麗水。道行く人から失笑を買うくらいまでは我慢が出来ましたが、茶店に入って同じ客なのに明らかな差別待遇を受けたのには我慢がならない。さあ、爆発するのでしょうか?


 不平に1)へざりしが、2)寒丐相を作せる此の日の余に対しては相当の待遇なれば3)センカタなし、三両枚の林檎を4)下物に一陶の麦酒を喚びて僅かに渇を5)し、主人に直江津行の汽船の事を問へば、此を距ること北二里にして四方(よかた)の町あり、船の伏木を発するもの、毎夕六時四方の浜に停まるといふ、時に四時半、剰すところ一時半、直ちに命じて車を僦はしめ、6)トッサ四方を指して発せり、道は神通川の左岸に傍ふこと数町、西に折れて野橋茅店、幾個の村を過ぎて終に四方の町に入る、四方の町は日本海の浜に在り、左に能登の青山を望み、前は積水天に連なる、多くは魚戸、海風甚だ7)さし、海浜に到れば8)キテイあり、富山市の士女の海水浴を試みんとて来り遊ぶもの甚だ多く、余が汽船の来るを俟たんが為めに借り得たる一室は、浴後の9)ケンスイを貪る青年都て七人、十字様をなすもの、大字様をなすもの、逸枕傍に在り尤字様をなすもの縦横10)ロウゼキし、11)カンセイ齁々然たり。

★齁々然(コウコウゼン)は「ぐうぐうといういびきをたてて寝ているさま」。「齁」は「はないき、いびき」の意。齁熟(コウジュク=いびきをかいてぐっすり眠る)。




いやいや、麗水は大人です。今日の自分の身なりなら乞食と思われても仕方なし。諦めモード全開です。越中ごときで喧嘩していてはこの先、越後に赴き、母上様にお目にかかるという所期の目的が達せられなくなる恐れもある。そんなことをおもったかどうかは知りませんが、さすがに疲れもピークに達しているのでしょう。怒る気力すら失せているようです。寂しそうに林檎を頬張り、ビールで喉を潤して主人に直江津行きの汽船のことを尋ねます。すると、主人から得た情報によると、四方という町に行けば六時なら乗船が可能だという。俄然、元気の出た麗水。さっそく車をやとって疾駆、四方の港まで急行します。富山市内から遊びに来た海水浴の客に溢れていますが、ビキニねーちゃん(んなもん居るか?)を看て楽しむ暇もなく、酒屋の一室で時間待ち。むさくるしい若者たちが大いびきで眠っている中に独りぽつねんと黙考するのでした。

ところで最後の惰眠を貪る若者たちの「十字様」や「大字様」の寝姿は分かるのですが、「尤字様」とはどんな寝姿なのか?「尤」の字みたいな形って成れるものなのでしょうかね。

問題の正解は続きにて。。。







1) 禁へざりし=たへざりし。「禁える」は「たえる」。おさえる、我慢する。「不自禁」(みずからきんぜず=おさえられない、がまんできない)。

2) 寒丐=カンカイ。こじき。この「寒」は「貧乏でつらい」の意。寒人(カンジン=貧しい人、寒民=カンミン=・寒士=カンシ=・寒生=カンセイ=)、寒酸(カンサン=貧しくて生活が苦しいこと、貧乏)、寒村(カンソン=活気のないさびれた村、貧村)、寒陋(カンロウ=貧しく身分の低いこと、寒微=カンビ=)。

3) センカタ=詮方。なすべき手段、すべ。「詮方なし」で「どうすることもできない」。もともとは「とく、解き明かす」の意。所詮(ショセン・センずるところ=要するに、結局)。

4) 下物=さかな。熟字訓で覚えたいところですが、素直に「カブツ」でもOK。酒の肴のこと。下酒物(カシュブツ)ともいう。

5) 医す=いやす。病気や不調な点を治す、治療する。「医渇」(カツをいやす=のどのかわきをうるおす)。

6) トッサ=咄嗟。物事の急なこと、またたくまであること。

7) 腥さし=なまぐさし。なまぐさい。なま肉や脂肪の、つんと鼻にくるにおい。また、そのようなにおいがするさま。音読みは「セイ」。腥血(セイケツ=つんと鼻を刺激して、なまぐさい血)、腥膩(セイジ=なまぐさく、あぶらぎっている)、腥臭(セイシュウ=なまぐさいにおい)、腥羶(セイセン=なまぐさい、けものの肉、外国人をののしっていうことば)、腥聞(セイブン=身持ちが悪いといううわさ、また、悪いことをしているといううわさ)、腥穢(セイワイ=なまぐさくて、けがれている)。

8) キテイ=旗亭。酒屋、また、料理屋。看板として旗をたてたことから。

9) ケンスイ=倦睡。つかれてねむること。「倦」は「つかれる」。倦憊(ケンパイ=あきて疲れる、倦罷=ケンピ=・倦弊=ケンペイ=・倦労=ケンロウ=)、倦憩(ケンケイ=つかれてくつろぐ)、倦色(ケンショク=あきた顔つき)。

10) ロウゼキ=狼籍。乱暴なこと、無法なこと。もともとは物が散乱したさま。オオカミは寝る時、下草を踏み荒らすことから。

11) カンセイ=鼾声。いびき。鼾息(カンソク)ともいう。「鼾」で「いびき」「ねいき」。↑の「齁」と同義です。鼾睡(カンスイ=いびきをかいて眠る)、鼾息(カンソク=いびき)、鼾雷(カンライ=雷のようないびき、おおいびき)。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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