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束の間の夢見心地に酔い痴れる…=「飛騨の山と越の海」(22)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の22回目は、「九 高山の一夜」のその2です。



 出でゝ市街を散策し、白雲山の高山公園、光曜山浄蓮寺なる東本願寺の別院、高山八幡宮に詣りて還る、此の夜『盆踊』あり、往いて之れを看たり、踊の催されしは郵便電信局ある高山屈指の町にして、簷より簷に町を1)ヒシヌイにして綱を懸け、花笠の燈火を列ぬ、別に地上に燭台を置くもの双行幾十基、踊手はいづれも毎家の娘、若衆、女の男に2)フンせるあり、男の女に装ふあり、手拭の姐様冠り、友禅の帯の猫ぢやらし、奴の姿せるあり、外道の仮臉(めん)を被るもあり、女は皆3)コウフンを粧ひたるが、中には裾綿入れたる友禅の振袖、4)ハマグリふきの裾模様、紋付着たるものもあり、町の一端より他端まで相連りて5)ホウジンを作り、中央に涼棚を置き、太鼓を撾(う)つもの一人、三味線を弾じるもの両三人、交り交り歌ふもの五六人、歌に伴れて一斉に手を拍ち足を揚げて舞ふ、良家の処女、他の6)シモクを避けんが為めに、白紗若しくは紅紗の覆面して来り伍するものもありき、歌ふところの謡に曰ふ。

 飛騨の高山高いといふが、山は高うない名が高い。
 さいた盃中見てあがれ、中は鶴亀五葉の松。
 竹に雀は品よく止れ、止めて止まらぬ恋の道。

 観る者町を傾く、士女の風装は東京と大差なし、言語は愛岐と京阪と相交はる、おきアせと云ひ、とろくさいと呼び、時に居やはりますの7)オンジュウ語を雑ゆればなり、又美人多し、髪は漆黒、眼は重瞼、顔の容は余の所謂8)ボサツ式若しくは内裏式なるあり、夜闌けて旅館に還る、午夜夢より回るの時、尚ほ遥街に鼓声を聞けり。




束の間の夢心地。旅の疲れも吹っ飛びます。吁、高山は良いところ~。麗水のここの描写を読んだら是非とも一度は訪れてみたいと思いますね。




1) ヒシヌイ=菱縫。兜の錏、鎧の袖・草摺および栴檀の板の裾板などの横縫いの上を、×形に赤革または赤糸で綴じつけた飾り縫い。「ひしとじ」ともいう。本来は甲胄の用語ですが、ここは家々の軒に網を×形に張り巡らしたさまを喩えたのではないでしょうか。

2) フンせる=扮せる。いでたつ。姿を飾って通常とは違った形になる。扮飾(フンショク=身なりなどを装い飾る)、扮装(フンソウ=顔や身なりなどを装うこと、装い)。

3) コウフン=紅粉。べにとおしろい。紅鉛(コウエン)とも。

4) ハマグリ=蛤。ここは蛤型の模様。

5) ホウジン=方陣。兵士を方形に配列する陣(じんだて)。

6) シモク=指目。他の人が目を付けること。男が女を狙うこと。

7) オンジュウ=温柔。あたたかでやわらかなこと。

8) ボサツ=菩薩。観世音菩薩のようなおだやかな表情。女性の顔だちを形容する麗水独特の言い回しのようです。内裏式とは御雛様の内裏様のことか。
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2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
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