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飛騨の高峰で迎えてくれた一大鳥の正体とは…?=「飛騨の山と越の海」(15)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の15回目は「七 濃飛の境」のその3です。今回の旅の最大の目的地の一つである飛騨に到着です。標高も高く山岳描写は麗水の真骨頂です。またもや美文の筆が炸裂します。

 八時半、午餉(ひるげ)にと主婦の与へし握飯を腰に佩び、例の半襯衣、半股引、靴を穿ちて旅館を出で、三里の高峰高原の山を踰へて終に飛騨に入る、重巒複嶺、路窮まるがごとくにして復た通ず、度るところ都て大山深谷、水石の美の眼を喜ばすものあらざれど、其の荘高1)テットウの観は、望み観て人の2)キハクを動かすなり、A)之字の細路3)アエぎたどりて最高峰を踰れば、国は飛騨、郡は大野、清見が村なり、4)マナジリを決すれば余を繞りて皆な山也、東は乗鞍が岳、北は立山、西は白山、三山5)テイリツ、海抜何れも一万余尺、峻秀6)カイレイの7)を争ふ、天上の高寒、秋老ひて冬は早くも来りそめけむ、8)キキョウの色に冴えたる巓に淡泊粉を伝するがごときもの是れ雲ならず、支山傍嶺、鵠髪9)スイカン、嵐を帯び霞を披いて高低参差するもの其幾十百峰なるを知らず、霽陰雲を分ち10)ヒョウビョウとして11)サイガイなし、12)ま一大鳥あり、当頭の峰角に止まりゐしが、余の来るを見て徐に起ちて13)バンセンし遥空に向ふて去る、怪風14)サッとして至り堕葉皆な活く。


くねくねとした細い山道を辿り山頂に立ち、辺りを見回せば山ばかり。乗鞍、立山、白山の三者が三様の威容を見せています。初秋は既に冬景色。それぞれの頂には澹く雪の模様も見えます。高低さまざまの山が連なっています。大きな一羽の鳥が麗水を見て雄大に飛び立ちます。ふっと降り掛かる一陣の風。落ち葉が一斉に舞いあがります。最後の「堕葉」は落ち葉のことです。一篇の詩ですね。この鳥は何でしょうかね?隠者の随伴者ならば鶴が定番ですが、飛騨の高峰に鶴は似つかわしくありません。越後に在す母上の化身か?流石は美文のジャーナリスト。隠者の詠じた漢詩の如き奥深い味わいを感じます。感無量なのでしょうね。

問題の正解は続きにて。。。





1) テットウ=佚宕(跌宕)。おおまかでしまりがない。佚蕩でもOK。「佚」は「物事のちょうどよい程度をこすさま」。「イツ」と「テツ」の読み分けに注意。

2) キハク=気魄。しようとする気力、強い精神力。

3) アエぎ=喘ぎ。「喘ぐ」は「あえぐ」。呼吸が苦しくてぜいぜいいう。

4) マナジリ=眥(眦)。上瞼と下瞼が交わっているところ、目尻。「決眥」(まなじりをケッす)で「目を怒らして、かっと見張ること」。

5) テイリツ=鼎立。かなえの三本脚のように、三者がわかれて互いに対立すること。鼎分(テイブン=三分する)、鼎足(テイソク=かなえの三本脚)、鼎輔(テイホ=三公、大臣・宰相のこと、鼎位=テイイ=、鼎臣=テイシン=・鼎士=テイシ=)。

6) カイレイ=瑰麗。目立って美しいさま。「瑰」は「めだってすぐれたさま」。瑰偉(カイイ=すぐれていて珍しい、人柄がひときわ目立ってすぐれている、魁偉)、瑰意行(カイイキコウ=思想や行動が一般と違ってすぐれている)、瑰岸(カイガン=人相などがくっきりと目立つ)、瑰奇(カイキ=非常にすぐれて珍しい)、瑰詭(カイキ=珍しく不思議なさま)。

7) 容=かたち。すがた。わくのなかにおさまった全体のようす、かっこう。容華(ヨウカ=顔かたちがはなやかで美しいこと)、容儀(ヨウギ=立ち居振る舞いと姿かたち)、容範(ヨウハン=外にあらわれる姿かたち・ふるまい、容貌・態度・立ち居振る舞い・話し方など)、容与(ヨウヨ=ゆとりがあって静かなさま)。

8) キキョウ=桔梗。「ケッコウ」とも。キキョウ科キキョウ属の多年草。野山に自生する。初秋に紫または白い花をつける、根は薬用。秋の七草の一つ。「桔」は「ケツ」。桔槹(ケッコウ)は「はねつるべ。撥ね釣瓶」。

9) スイカン=翠鬟。輪型に巻いた、美人のつやつやしいまげ、緑の黒髪。

10) ヒョウビョウ=縹渺(縹眇、縹緲)。遠くかすかで、はっきり見えないさま。ほんのりと浮かぶさま。「縹」は「はなだ」。

11) サイガイ=際涯。はて、かぎり。際畔(サイハン)・際限(サイゲン)とも。

12) 会ま=たまたま。漢文訓読語法。おりしも、ちょうどそのとき。ある場面に出くわした意を示す。

13) バンセン=盤旋。ぐるぐる回る、めぐり歩く、ひと所を回るだけで進みかねる。槃旋とも。盤踞(バンキョ=木が根を張って動かない、わだかまる、あぐらをかいて腰をすえる)、磐桓(バンカン=とぐろをまく、ひと所を回り歩いて進みがたいさま、ぐずぐずして決心がつかないさま)、盤根(バンコン=曲がりくねった根、転じて、物事がなかなか解決しなくて困難なこと、盤根錯節=バンコンサクセツ=物事が複雑で、処置しにくいことのたとえ)、盤牙(バンガ=物事が入り組み乱れる、わだかまる、盤互=バンゴ=)、盤纏(バンテン=旅費、そろばんをはじいて金を身につけて持っていくことから、この盤は「そろばん」)

14) サッと=颯と。風のさっとふくさま。颯颯(サッサツ=さっと風の吹くさま、その音の形容、颯然=サツゼン=・颯爾=サツジ=)、颯爽(サッソウ=姿などが勇ましく、きびきびしているさま、きりっとして勢いのあるさま)、颯沓(サットウ=重なり合うさま、さっと近寄りたくさん集まりあうさま)。

A) 之字=シジ。「之字路」(シジロ・シジのみち)と用いて「之」の字型の道、曲がりくねっている道のこと。「之」の音読みは「シ」であることに注意です。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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