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粋な東京弁を操る仁侠肌の救世主に感謝感激=「飛騨の山と越の海」(14)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の14回目は「七 濃飛の境」のその2です。いぶせき木賃宿の夜が何とか明けてさあ早めの出発と思いきやまたしてもトラブルが発生。。。大ピンチです。

 翌三日、快よく霽れたる暁なりき、午熱のほど想ひやられたり、勉めて早く起き、六時に出立せんとて、生憎1)ノウチュウ小銭の2)しかりければ、五円の紙幣を出して宿銭を払はんとしたるに、主婦は剰銭なしとして却けぬ、他家にて両替しては呉れまじきやと云ひたりしに、主婦は出でゝ此の数十家ある村を踏遍したれども、両替し呉るゝ家なしとて帰り来りぬ、斯る間に八時は過ぎたり、如何はせんと途方に暮れ居りしに、偶ま近き山の鉱坑の工夫頭と覚しきA)■■(わかもの)来りて店前に憩ひ居りしが、余の当惑の様を見て、軽快なる東京弁にて、俺が頽して上げやせうとて、腹掛の衣兜(どんぶり)に手を挿し入れ、3)皺み襞める幾枚の紙幣、銀銭銅銭相雑る数枚を4)ツカみ出し、余が喜色の5)キクすべきを顧みて袂を掲げ臂を露し、腕上の刺青を6)ブマして乾笑一番せり。

和訓語選択の問題

A) 「わかもの」=カクドウ・チョウシン・ソウカン・アカン・ソウカク




旅先で小銭がない場合に不便することが多いですよね。木賃宿だけに宿代は安くて済みますが、山中の寒村では5円札を崩すのもままならないのです。近所に当ってもダメ。6時に出発する予定がもはや8時に。「俺が頽して上げやせう」――。焦りといら立ちが募り始めたところに救世主が現れます。快活な東京弁を話す「山の鉱坑の工夫頭」とみられる若者です。「腹掛の衣兜(どんぶり)」は、お金などを入れる袋のこと。彼が無造作に手を突っ込むと、幾枚かの紙幣に銀銭銅銭が混じって取り出されました。「乾笑一番」とは、乾いた笑い、作り笑いというよりは、がはははと腹の底からの大笑いでしょう。仁侠肌の兄ちゃんの屈託のない笑顔といったところでしょうか。「人助けは気持ちのいいものですね」。喜色に溢れる麗水は旅慣れているはずですが、ピンチを脱することが出来ました。。。んでも、はなから5円が崩れないなら最悪、5円を支払って去ればよかったではないでしょうか?というのは外野の声か。今なら2、3千円のカプセルホテルに泊まったのに1万円札を出してお釣りがないと言われた感じでしょうか?ん~、やっぱ惜しいか。出発を2時間遅らせてでも拘る価値はありますかね?時間とカネの価値は時として絶対的なものではなくなりますが、今回の麗水は時間より金を取ったということですな。

問題の正解は続きにて。。。





A) ソウカン=壮漢。血気盛んな若者。働き盛りの男、三、四十代の男、壮年の男。

1) ノウチュウ=嚢中。財布の中。この「嚢」(ふくろ)は財布のことをいう。

2) 匱しかり=とぼしかり。「匱(し)い」は「とぼしい」。中がからっぽになっているさま。音読みは「キ」。匱窮(キキュウ=貧しくて苦しむ、貧窮、匱困=キコン=)、匱竭(キケツ=中身がつきてとぼしい)、匱乏(キボウ=衣食が足りない、からっぽで乏しい、貧乏)、匱盟(キメイ=内容が充実していなくて便りにならない同盟)。

3) 皺み襞める=しわみたためる。「皺」も「襞」も「しわ」。「皺める」は「しわを寄せる、しわを作る」。「襞める」は「折り返して重ねる」。「皺」の音読みは「シュウ」。皺月(シュウゲツ=波に映っている月)、皺面(シュウメン=しわのある顔)。「襞」の音読みは「ヘキ」。襞積(ヘキセキ=衣服のひだ)。

4) ツカみ=攫み。「攫む」は「つかむ」。手の中につかみとる、わしづかみにする。音読みは「カク」。攫噬(カクゼイ=つかんでかみつく)、攫鳥(カクチョウ=ほかの鳥をつめでつかみ殺す強い鳥、鷙鳥=シチョウ=)、攫搏(カクハク=つめでつかんで、翼でうつ。鳥獣がつめや翼で獲物をとらえること)。

5) キクす=掬す。「可掬=きくすべし」と用いて、「手にすくうほど多いこと、手にとって見るほど明かである」。ここは「喜色満面であるさま」をいう。

6) ブマ=撫摩。なでさすること。「撫」は「なでる」。撫慰(ブイ=安んじ慰める、いつくしみいたわる)、撫御(ブギョ=いつくしんで統率する、撫馭=ブギョ=)、撫軍(ブグン=太子が君主に従って従軍すること)、撫事(ブジ・ことをブす=昔のことを考えて思いに耽る)、撫恤(ブジュツ=物を恵み与え、あわれみをかける)、撫循(ブジュン=いたわって服従させる、手なずける、撫順=ブジュン=)、撫掌(ブショウ・たなごころをブす=手のひらをうつ、我が意を得たりと喜ぶさま)、撫心(ブシン・むねをなず=胸を撫でる、心を安んじる、むねをブす=悲しんだり憤ったりして手で胸をたたく)、撫綏(ブスイ=民の不安をないようにしてやること、撫寧=ブネイ=・撫安=ブアン=)、撫世(ブセイ=世の中を治め、天下の人々が安心して生活できるようにしてやる)、撫存(ブソン=まあまあと慰める)、撫髀(ブヒ・ヒをブす=ももをたたく、興奮したり喜び勇んだりするさま)、撫民(ブミン・たみをなず=人民をなで安んじる)、撫有(ブユウ=かわいがって服従させ自分の物とする)、撫養(ブヨウ=いつくしみ養う、撫育=ブイク=・撫字=ブジ=)、撫臨(ブリン=安んじおさめる)、撫弄(ブロウ=なぐさみにもてあそぶ)、撫和(ブワ=なだめ柔らげる、撫輯=ブシュウ=・撫緝=ブシュウ=・撫柔=ブジュウ=)。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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