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顔見知りの熟年夫婦ならぬジュクメン夫婦とはこれ如何に=「飛騨の山と越の海」(6)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)シリーズから、「飛騨の山と越の海」の6回目は「四 橘の渡」の「その2」です。馬丁の勧めで泊まった宿はとんでもなく鬱悒の宿でした。襖子の引き手の金物が剥がれていて穴が二つ開いているさまは、「メクラのにらみ」と形容しています。おお~こわ。。

  雪隠に隣れる湯殿にて、式(かた)ばかりの浴(ゆあみ)したる後、盆を膝にして1)ザスイする2)ショウヒを幾たびか喚覚して寂しき夜食を終り、青より黄に3)ける破蟵子(やれかや)、石のごとき蒲団、木枕、携へ来りし空気枕して眠りに就きしに、蚤奴の4)バッコを奈何せん、午夜まで覚めたる後は知らず、夜明けて起きて膚を検すれば、宛ら紅5)コウケツ

 今日は九月の二日とて、二百十日の荒日なるを、日は麗かに霽たり、午熱こそ思ひやられる、A)■■(ゆふべ)の馬丁来りて、八幡まで馬車に乗らんことを勧め、主個(あるじ)も和して余に説きぬ、余が志すところは飛騨に在り、宜しく応に半日の脚力を6)みて、嶙峋(りんじゅん)踏破の勇を養ふべしと思ひて、其の7)カンゼイを容れ、終に復た馬車に乗りぬ、客は8)ジュクメンの祭文語夫婦、此の町の9)コジン二、鴻の台なる第一師団騎兵聯隊の下士君、余を合せて六人なり。

★蟵子(かや)は「蚊帳」。この「蟵」は国字です。

★嶙峋(りんじゅん)は、「山が重なり連なるさま、行っても行っても山また山」。



和訓語選択。

A) 「ゆふべ」=「ゆうべ」→セキジツ・コウコン・チュウセキ・シンタン・シンコウ

一刻も早く退散する麗水。この日は所謂「二百十日」。立春から数えて二百十日目。九月一日のころで、ちょうど中稲の開花時期に当たり、台風襲来の時期とも重なることから、農家では厄日として警戒するのですが、打って変わって快晴に恵まれました。逆に昼過ぎは暑くなることが思いやられます。すると馬丁が八幡まで再び乗合馬車に乗ることを勧めます。半日でも脚力を温存してきたるべき山岳旅程に備えようという誘惑に駆られ同意します。今回の客は六人。ジュクメンの祭文語の夫婦とは面白い表現。熟年夫婦ならぬジュクメン夫婦。商人が二人、そして、騎兵連隊の下士。きゃぴきゃぴの化しまし娘は今回はなしで~す。ちょっぴり残念??この項はまだまだ続きます。

問題の正解は続きにて。。。



1) ザスイ=坐睡。すわったままねむる、いねむりすること。坐賈(ザコ=行商に対して店を構えて営業する商人、坐商=ザショウ=)、坐致(ザチ=苦労しないでなしとげる、苦労しないで手に入れる)、坐忘(ザボウ=まったく雑念を去り、無我の境地になること)。

2) ショウヒ=少婢。わかい召使いの女。「婢」は「はしため」。

3) 之ける=ゆける。「之く」は「ゆく」。~に至る。ここは「~になる」。もともと青かった蚊帳の色が黄ばんでしまったということ。

4) バッコ=跋扈。あたりをふみにじり思うままに勢力をふるう。「跋」は「ふむ」。

5) コウケツ=纐纈。布のところどころをを糸でしばって染めた絞り染め。しばった部分が文様になる。「纐」も「纈」も「しぼりぞめ」。「コウケチ」の読みも。

6) 愛み=おしみ。「愛(し)む」は「おしむ」。いとおしむ、おしくてせつない、もったいないと思う。愛日(アイジツ=日時をおしむこと、一日一日をたいせつにして親に孝行すること、冬の日、対義語は「畏日」=夏の日=)

7) カンゼイ=勧説。説きすすめる。勧酬(カンシュウ=酒をすすめる、杯のやりとり)、勧侑(カンユウ=すすめる)、勧誡(カンカイ=善をすすめ、悪を戒める)

8) ジュクメン=熟面。よく知った顔、顔見知り。対義語は「生面(セイメン=初めて会う顔、面識のないこと)」。この「熟」は「奥底までよく知っている、すっかりなれているさま」の意。熟路(ジュクロ=なんども通っていてよく知っている道)、熟計(ジュッケイ=じゅうぶんにかんがえて立てた計画)、熟悉(ジュクシツ=じゅうぶんに知りつくす)。

9) コジン=賈人。商売をする人、商人。估人(コジン)もOK。「賈」は「うる」「かう」。飾賈(カをかざる=かけねをする)、賈客(コカク・コキャク=商人)、賈害(コガイ=自分から災いをまねくようなことをする、賈禍=コカ=)、賈衒(コゲン=かけ値をつけて商売をすること)、賈胡(ココ=えびすの商人)、賈市(コシ=いちば、商売)、賈豎(コジュ=商人をばかにしていうことば、いやしい商人)、賈船(コセン=商品をつみ交易するために使用する船、賈舶=コハク=)、賈販(コハン=商売をする、あきんど)、待賈(コをまつ・タイコ・タイカ=よい商人が出現するのを待って売る、また、よい売値を待って売る、転じて、賢君が出現する機会を待って仕えること、待価而沽=あたいをまちてうる=)。


A) チュウセキ=疇昔。昨日。この「疇」は「さきに」。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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