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信濃川の上流部の千曲川は筑摩川とも書くんです=木曾道中記「日本道中記」(12)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の12回目です。今回の旅の最後のハイライトである木曾街道を膝栗毛します。今回はその出発のシーンで「その1」といたします。木曽義仲こと源義仲の地元です。一事は征夷大将軍にまで任ぜられたが源義経・源範頼連合軍に敗れ近江粟津で戦死しました。


五 木曾道中


 『小坂花岡白帆が帰る、お城並木に日が残る』の諏訪の駅を過ぎて、岡谷より天龍に傍ひ、やがて別れて塩尻駅、正に木曾街道の振出しなり、中央線の開通してより久しけれど、街道には尚ほ残る昔の面影、急がぬ人には汽車を捨てゝ、1)ヨバの旅こそ面白けれ。

 洗馬の駅、唯ある茶亭の屋後の崖路、老ひたる檜の蔭に湧く清泉に、2)を架して蛍袋の花さく草叢の中に湛えし3)一泓の浅き池は、木曾義仲の乗馬の蹄の泥を洗ひしところと伝ふ、駅の名もこれに4)むと頷かる、本山の駅はせゝらき人家の前を流れて、御嶽構社の納手拭を長き竿に5)がり懸けて店頭に高く掲げし旅館多し、本山より山に入りて桜沢、若神子には小町茶屋といふがあり、木曾の小町と歌はれし美人の、今は梅干婆となりて茶を売るなり。

★「蛍袋」(ほたるぶくろ)は「山小菜」とも書く。キキョウ科の多年草。原野・路傍に自生し、高さ30~50糎。夏、茎頂に淡紫色の大きな鐘形花を数個下垂、そのさまが提灯に似る。

 これより路は筑摩の上流に傍ふて走る、三里にして奈良井の駅、低き石屋根は雨を聴くに好かるべく、長き簷、6)袖廂は雪の日を思はしむ、何さま古駅の趣きあり、これより登り一里下り一里半の鳥居峠となる、頂に御嶽7)ヨウハイ所あり、峠の高さは三千五百尺、『雲雀より高くやすらふ峠かな』と芭蕉の歌ひしところにて、筑摩と、木曾との分水嶺なり、嶺を下れば藪原の駅、山の8)に並ぶ家の、軒に張子の櫛の9)招牌を懸けたるが多きは、名物のお六櫛を売る店なり宮の腰には巴ケ淵、山吹の里、木曾義仲の拠りたる山吹城、軍の旗揚げしたる八幡社は鉾杉の木立のうちに在り、日義村の徳音寺には木曽義仲の木像あり、其の遺品も数多し、七笑の川に架けたる同じ名の橋、橋の10)タモトに同じ名の酒を売る店あり、一杯聊か木曽殿に酹するも亦た妙ならむ。

★酹(ライ)は「酒つぼを手にとり、酒を地に注いで神霊をまつること」。


途中に出てくる芭蕉の『雲雀より高くやすらふ峠かな』ですが、ネット検索に因りますと、元禄元年(1688年)芭蕉45歳の作で「雲雀より空にやすらふ峠かな」が正確な字句であって、しかも、「臍峠・多武峰より龍門へ越ゆる道なり」との前詞がある。現在は「細峠」と呼ばれ、桜井から吉野への途次にある、と芳野(奈良)で詠んだものであり、木曾路の鳥居峠で詠んだという麗水の記述が怪しい。勘違いでしょうか?

「筑摩の上流に傍ふて…」の筑摩は「千曲川」ですね。この字を当てるのは知りませんでした。信濃川の上流、長野県内を流れる部分をいいます。

「名物のお六櫛」は、中山道藪原宿に伝わる伝統工芸。その種類は多彩で梳き櫛、解かし櫛、挿し櫛、鬢掻き櫛などがあります。「お六」というのは、偏頭痛に悩む娘、お六が「みねばり」という木で作ったすき櫛で毎朝夕髪を梳かして治ったという伝説から名づけられました。かの太田蜀山人の『壬戌紀行』にはも「お六櫛のことをとうに、お六といえる女はじめてみねばりの木をもて此の櫛を引き出せり。しかるに此のあるじのおじなるもの此業をつぎて、みねばりの木をつげの木をもて此櫛をひき、諸国にひろめしより、あまねくしれりといえる、薮原またやご原ともよぶ…」とお六櫛の記事が掲載されているとあります。(ここ
1) ヨバ=輿馬。車と、それをひく馬。「輿」は「こし」。輿隷(ヨレイ=こしをかつぐ人民、召使い、輿台=ヨダイ=)、輿輦(ヨレン=天子の乗る車、輿駕=ヨガ=)。

2) 樋=ひ。木や竹でつくったとい、かけひ。音読みは「トウ」。

3) 一泓=イチオウ。水が広いさま。「泓」はななか「オウ」とは読めませんが、「汪」と同義です。これと関連付けて覚えられれば。。。。泓宏(オウコウ=声が大きいさま)、泓量(オウリョウ=深くて水嵩のあること)、泓泓(オウオウ=水が深く広くたたえているさま)。

4) 縁む=ちなむ。ある縁によってあることをなす。縁による。「因む」の方が一般的か。

5) 簇がり=むらがり。「簇る」は「むらがる」。むらがってあつまる。音読みは「ソウ」。簇火(ソウカ=むらがってもえる火)、簇出(ソウシュツ=たくさん、むらがりあらわれる)、簇簇(ソウソウ=むらがりあつまるさま)、簇生(ソウセイ=草木などが群がって生えること、族生=ソウセイ・ゾクセイ=)。

6) 袖廂=そでびさし。そでのように伸びたひさし。雪よけなのでしょう。

7) ヨウハイ=遥拝。はるかに離れた所から、神仏などを礼拝すること。遥礼(ヨウレイ)ともいう。遥曳(ヨウエイ=ながく尾を引く、物が長くたれること)、遥昔(ヨウセキ=遠い昔)、遥碧(ヨウヘキ=はるかに遠いあおぞら)、遥望(ヨウボウ=はるか遠くからながめる、遠くを眺める、遥眺=ヨウチョウ=・遥矚=ヨウショク=)、遥夜(ヨウヤ=ながい夜、遥夕=ヨウセキ=・遥昔=ヨウセキ=)、遥領(ヨウリョウ=はるか遠くから仕事をとりしまる、自分は中央にいて地方の政治を他人にやらせること)。

8) 峡=かい。はざま、山と山の間にはさまれた渓、水路。「山峡」は「やまかい」。音読みは「キョウ」。峡雨(キョウウ=谷間に降る雨)、峡雲(キョウウン=谷間にかかる雲)、峡中(キョウチュウ=谷あい)、峡天(キョウテン=谷あいから見える天)、峡湾(キョウワン=フィヨルド、峡江=キョウコウ=)。

9) 招牌=かんばん。当て字ですが音読みなら「ショウハイ」。看板。招麾(ショウキ=さしまねく)、招撫(ショウブ=人を、支配下にまねき寄せて安心して生活できるようにする)、招聘(ショウヘイ=礼を尽くして人を招くこと)、招辟(ショウヘキ=官職につかせるために賢人をまねくこと、召辟=ショウヘキ=)、招邀(ショウヨウ=まねいてその人を待ちうける)。

10) タモト=袂。かたわら、そば。橋の袂(はしのたもと)。「そで」とも訓む。音読みは「ベイ」。聯袂辞職(レンベイジショク=大ぜいが行動を共にして一斉に職を辞すること)。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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