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天下の奇峰との別れを惜しみつつ目指すは諏訪湖・木曾路=木曾道中記「日本道中記」(10)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の10回目は、「三 金泉湯と瑞垣山」の「その5」です。雄大な姿を湛える美しい山、瑞垣山を凝視する麗水は、ありったけの美辞麗句を並べ立てて褒めまくります。


 瑞垣山の1)ホウランのたゝずまゐを観むれば、一峯先づ北より延びて、2)トッコツとして大いなる凹字を描き、更に3)キョシ状の峭峯攅まり立ち、其の裾長く夷なりと見れば、忽ちにして4)セントウのごとき奇峯となり、其の根を三十度ばかりに引いて円きランを成し、ランに隣りて復た5)エボシの形せる一大雄峯を現はしつゝ、南の方金峯の山に走れり、峯や全く巌、ランや都て樹、巌の6)ソウジュン、樹の7)シンペキ、昨雨に洗はれて其色更に鮮かなり、其の一峭峯の頂より、一線の白を曳いて8)バクフの長く懸りたるは、雨の新たに作りしものとぞ、山の沃、更に七段のバクフありて、七潭相並び、誠に天下の9)キカンなりといふ、但し山の太だ奇峭なるが為めに、人の絶て登るものなし、村の人にても、この山に入り迷はずして還り得るもの一両名のみといふ。

 渓畔の石に10)キョして11)モタラし来れる午餉をしたゝめ、終にこの山に別る、茅が峯の麓を下ること二里、黒森の橋にて少年と袂を分ち、御門、江草の寒村を過ぎ、須王川を渉ること三度、七里、大豆生田より馬車に賃し、夜七時韮崎駅に着く、瑞垣山は誠に天下の奇峯なり。


「観むれば」は「ながむれば」。これまでに見たこともないほどの素晴らしさ。村人によれば、迷わないで帰れたものはほとんどいないという。村人も恐れる山なのです。

長かった金泉湯と瑞垣山の訪問を終え、いよいよ諏訪湖、木曾路を目指します。

問題の正解は続きにて。。。



1) ホウラン=峰巒。連なった山々。峰嶂(ホウショウ)とも。「峰」も「巒」も「嶂」も「みね」。幾つも続く山々を指す。連山。岡巒(コウラン=高い台地と山)、層巒(ソウラン=めぐり重なった山)、巒壑(ランガク=山と谷)。「みね」はほかに「嶺、岑、岫、崟」。

2) トッコツ=突兀。山や家などが高く突き出てそびえるさま。

3) キョシ=鋸歯。のこぎりの歯のように鋭い牙。鋸牙(キョガ)ともいう。

4) セントウ=尖塔。先端がとがった塔。「尖」は「とがる」「するどい」。尖新(センシン=流行の魁)、尖繊(センセン=とがって細い)、尖風(センプウ=つきささるように吹く激しい風)、尖兵(センペイ=部隊の前方を進み、敵情をさぐる任務の兵)、尖鋭(センエイ=考え方や行動が急進的なこと、先鋭)、尖端(センタン=最も新しいこと、さきがけ、先端)、

5) エボシ=烏帽子。元服した男子のかぶった略装の帽子。烏(カラス)の羽のように黒い。さまざまな形があるが、公家が用いた立烏帽子(たてえぼし)が基本でしょう。麗水がいう烏帽子の形はおそらくこれ。中央アルプスに烏帽子岳というのもある。サザンの「チャコの海岸物語」にも神奈川・茅ケ崎の烏帽子岩が出てくる。

6) ソウジュン=蒼潤。うるおいのあるあお黒さ。

7) シンペキ=深碧。ふかい緑色、濃い緑。「深~」の熟語は、深潭(シンタン=ふかいふち)、深間(シンカン=スパイ)、深窺(シンキ=物事の本質を見通す)、深仇(シンキュウ=ふかい恨みのあるかたき、深讐=シンシュウ=)、深閨(シンケイ=家の奥ふかくにある、婦人のへや、深窓)、深堅(シンケン=戦争で守りが非常にかたいこと)、深痼(シンコ=長く罹っていて治りにくい病気、宿痾=シュクア=)、深巷(シンコウ=奥まった路地)、深邃(シンスイ=山や家などが奥ふかいこと、学問・思想などが奥ふかくて簡単にわからないこと)、深阻(シンソ=山が奥深くて峭しい)、深造自得(シンゾウジトク=物事のいちばん奥ふかい事がらをきわめて我が身にわきまえる、孟子・離婁篇)、深中隠厚(シンチュウインコウ=人情に厚く、思いやりのある性質のこと)、深図(シント=よく考えたふかいはかりごと、深計=シンケイ=・深策=シンサク=)、深窈(シンヨウ=奥深くもの静かなさま)、深林(シンリン=よく茂った奥深い林)、深傷(ふかで=負傷の重いこと)。

8) バクフ=瀑布。たき。瀑泉(バクセン)、瀑流(バクリュウ)。

9) キカン=奇観。めずらしくてすばらしい眺め。「奇~」の熟語は、奇穎(キエイ=才能が人にぬきんでて非常にすぐれている)、奇贏(キエイ=思いがけない商売上の利益)、希覯(キコウ=思いがけない巡り合い)、奇崛(キクツ=山の険しいさま)、奇觚(キコ=めずらしい書物)、奇峭(キショウ=山などが険しくそびえたつさま)、奇勝(キショウ=めずらしくてすぐれた景色、奇景=キケイ=)、奇瑞(キズイ=めでたいことの不思議なしるし)、奇羨(キセン=あまり、利益)、奇譚(キダン・キタン=めずらしい話)、奇挺(キテイ=ぬきんでていてすぐれている)、

10) キョ=踞。「踞す」は、しりをおろしてすわりこむ。「うずくまる」の意もありますが、ここは坐る意。「おごる」の意もあり、踞敖(踞傲、キョゴウ=おごりたかぶる)、踞肆(キョシ=えらそうに構えている、長い間そこに腰を据えて勢力をふるう)、踞侍(キョジ=うずくまって傍にひかえる)、蹲踞(ソンキョ=うずくまる)。

11) モタラし=齎し。「齎す」は「もたらす」。もって来て、またはもっていって人に与える。そろえて差し出す。齎志(セイシ・こころざしをもたらす=志をあの世まで持ち続けること、志を果たさないで死ぬこと)、齎送(セイソウ=持って行く、とどけ送る、シソウ=葬式のとき死者の遺体と共に墓に埋める物品)、齎用(セイヨウ=日常用いる品物や金銭)、齎糧(セイリョウ=旅に食糧を持って行く、また、その携行食、食糧を持って行って与える)。
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2006.6  2級合格
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