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睹る者のハートを鷲掴みにする瑞牆山=木曾道中記「日本道中記」(9)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の9回目は、「三 金泉湯と瑞垣山」の「その4」です。金泉湯を後にしてであった、崢たる「瑞垣山」。「天下何れの山か、この山の姿の美しきに匹敵するものぞと思ひたりき」と麗水に言わしめたほど、この美山は彼のハートを鷲掴みにしたようです。



 谷を渉りて又山に入る、二里にして奈良の1)嫩草山に似たる草山の四つ五つ、笠を重ね覆せたるごとく続きたり、大楢、松など絵の心に2)フチして、放牧の野馬の幾群、児を3)いて其の間に遊ぶ、烟る草の雲と相交はるところ、崢たる瑞垣山は、4)セイメイを5)げてそゝり立つなり、草山に唯だ一軒の農家の門を敲いて、山の芋の糠味噌漬を6)茶媒に手摘の新茶を7)ススりつゝ、黒木の縁に腰かけて、この山の姿を8)タンカンしたる余は、天下何れの山か、この山の姿の美しきに匹敵するものぞと思ひたりき。

麗水が見蕩れていた瑞垣山は、奈良の若草山に似ているという。ネットで検索してみますと、正確には瑞牆山と云うようです(ここ)。標高2230メートル。一軒家の農家に立ち寄り、新茶を飲みながら山芋の味噌漬けを頬張る。その美しい姿を凝視するばかり。その細かな描写は次回に譲りましょう。

問題の正解は続きにて。。。




1) 嫩草山=わかくさやま。奈良市東部、春日山北西にある丘陵。標高431メートル。全山芝草に覆われ、毎年2月11日(1950年以降は1月15日)山焚きをする。三段に重なっており俗に三笠山とも言う。若草山の方が馴染みがありますが「嫩」(わかい)=「若」は必須です。音読みは「ドン」。嫩芽(ドンガ=柔らかい若芽)、嫩日(ドンジツ=昇ったばかりのわかわかしい太陽)、嫩色(ドンショク=草木のわかわかしい色)、嫩晴(ドンセイ=長雨があがって久しぶりに晴れること)、嫩草(ドンソウ=わかく柔らかい草)、嫩竹(ドンチク=わかい竹)、嫩緑(ドンリョク=若草や若葉の緑、新緑)。

2) フチ=布置。物を適当に配置すること。また、そのありさま。囲碁用語の「布局」もいう。

3) 卒いて=ひいて。これは「率」(ひきいる)の当て字か。あまり一般的ではない。

4) セイメイ=青冥。あおぞら。意外に難しい。既出。

5) げ=かかげ。「げる」は「かかげる」。「ささげる」とも訓む。

6) 茶媒=ちゃうけ。熟字訓。茶を飲む時に添えて食べる菓子・漬物など。茶の子、点心ともいう。「茶請け」が一般的ですが「お茶のなかだち」とは言い得て妙なる表現ですね。ですが辞書には記載が見えません。

7) ススり=啜り。「啜る」は「すする」。ずるずるとかゆや汁をすする。音読みは「セツ」。啜汁(セツジュウ・しるをすする=甘い汁を吸う、他人の力で利益を上げる)、啜賺(セッタン=巧みにことばをつづる、内容の伴わないことばでだます)、「テツ」の音読みでは「すすりなく」の意。啜泣は「テッキュウ」。啜り泣く(すすりなく)。

8) タンカン=耽看。じっとみること、凝視すること。これは辞書にない言葉で難問でしょう。貪看もあります。むさぼるようにみること、食い入るように見詰めること。麗水は「耽看」を当てていますが、こっちもOKですね。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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