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何でも「八景」にすりゃあいいってもんじゃないけどカワユイね=木曾道中記「日本道中記」(8)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の8回目は、「三 金泉湯と瑞垣山」の「その3」です。ゆったりとした饗しに生き返った心地の麗水。次なる目的にに向かうのですが、その途次、「金泉湯八景」なる名所を案内されます。なんぞや?


 翌る朝、湯の宿の少年に導かれて、金泉湯八景を観る、岩清水を渉りて『針の山』、御嶽新道の円覚峯に似て小さし、やがて本谷川の1)ジョウユウ、青葉が梅雨も薄凍る峰の茂林(しげみ)の間を洩るゝ日晷(ひかげ)は、虹とばかり落ちて、2)セイタンに走る岩魚の影を射る日受の水、苔蒸せる丸木橋の危うきを渡れば、『二段瀧』『銚子岩』『石門』『矢立岩』、岸も底も3)ヒョウヘキの一枚石、水其上に音もなく流れ4)ぐ『玉露谷』、大石両つに劈け5)れたる『天の岩戸』、不断の虹を絵がける地蔵瀧、亀蔵瀧、殊に人の眼を驚かすは、形も大いさも千石船にさも似たる大盤石の、其上に6)ロウカイの生へたるを7)ホバシラのさまにして礀中の岩の上に繋りたる『力石』なり、山の名水の名は皆な湯の宿の主人が自から命ずるところ、通俗にして8)イツビならざるは愛すべし、余等の此の山に遊びし翌年、甲州のラヂューム温泉とて9)かに世に10)ケンデンされたるは、正にこの金泉湯にてありしなり。

★礀=たに、たにみず。山の間にはさまれた水流、谷川。「澗」と同義。熟語はいずれも置き換えが可能。澗渓(カンケイ=谷川、渓流、澗壑=カンガク=・澗谷=カンコク=)、澗戸(カンコ=谷間にある家)、澗水(カンスイ=谷川の水)、澗声(カンセイ=谷川の水音、澗籟=カンライ=・澗響=カンキョウ=)、澗底(カンテイ=谷川の底)、澗隈(カンワイ=谷川のくま、澗曲=カンキョク=・澗阿=カンア=)。




「甲州のラヂューム温泉」はもちろん、ラジウム温泉のことです。この金泉湯は麗水が訪れた翌年、日本でも屈指のラジウム温泉として脚光を浴びたようです。ところが、以前も申しましたが2009年3月を以て廃業と相成りました。かなり不便なところに位置しています。だからこそ秘湯なんでしょうね。渓流沿いに宿の主人が近江八景に準えたかのごとく名付けた「金泉湯八景」なるものがあります。『針の山』『二段瀧』『銚子岩』『石門』『矢立岩』『玉露谷』『天の岩戸』『力石』と命名されています。俗っぽくお洒落でないところが憎めないとは麗水の評。面白いですが耳目を驚かすものではなかったようです。果して今もその名であるのでしょうか?ネット検索では一本もヒットせず。。。。

問題の正解は続きにて。。。


1) ジョウユウ=上游。川の上流、また、その付近の地。下流は「下游」。この「游」は「水の流れ」の意。游鱗(ユウリン=水におよぐ魚)、游禽(ユウキン=飛び回る鳥、水鳥)、游泳(ユウエイ=置かれた境遇にまかせて行動する、処世)。

2) セイタン=清潭。きよらかで深く水をたたえた淵。「潭」は「ふち」「ふかい」とも訓む。潭影(タンエイ=ふかいふちの色)、潭思(タンシ=ふかく思う、ふかいおもい)、潭湫(タンシュウ=ふかい池)、潭心(タンシン=ふかいふちの底)、潭深(タンシン=ふちがふかい、学問などが深いこと)、潭潭(タンタン=水をふかくたたえているさま、しんみりと心に思うさま)、潭府(タンプ=水を深くたたえたところ、奥深く近寄りがたい役所・邸宅、他人の邸宅を敬う言い方)。

3) ヒョウヘキ=縹碧。ほんのりとしあ青緑色。「縹」は「はなだ」、「碧」は「みどり」。

4) 灑ぐ=そそぐ。さらさらと水を流しかける。音読みは「サイ」。灑泣(サイキュウ=はらはらと涙を流す、灑涙=サイルイ=)、灑灑(サイサイ=水をそそぐさま)、灑掃(サイソウ=水をかけて洗い、ほうきではき清める、そうじすること)、灑沃(サイヨク=水をそそぎかけてうるおす)、灑落(サイラク=さらりと落ちる)、灑然(サイゼン=水がさらさらとそそぐさま)。

5) 剖れ=わかれ。「剖れる」は「わかれる」。「さける」「さく」の訓みも。白黒を判定する意もある。音読みの「ボウ」は慣用読みで漢音は「ホウ」。剖決(ホウケツ=良いと悪いをはっきりさせる、判断して裁決する)、剖心(ホウシン=胸をたち割る、真心を示す)、剖析(ホウセキ=分析する、解決する)、剖判(ホウハン=わかれ開ける、二つにわける)、剖符(ホウフ=割符を二分すること)。

6) ロウカイ=老檜。ヒノキの古木。「老獪」(ロウカイ=わるだくみにたける)は引っ掛けですが、これは浮かばないでしょう。難問。「老+(樹木名の音読み)」は応用が効きそうで、老杉(ロウサン=スギの古木)、老楢(ロウユウ=ナラの古木)、老橡(ロウショウ=クブギの古木)、老樗(ロウチョ=オウチの古木)、老槿(ロウキン=むくげの古木)、老榛(ロウシン=ハシバミの古木)。いずれも辞書には見えません、迂生オリジナルですが、ありでしょ?要は応用応用。。。

7) ホバシラ=檣。もちろん帆柱でも正解ですが、出題の意図はこっち。艢でもOK。音読みは「ショウ」。檣竿(ショウカン=帆柱)。

8) イツビ=溢美。非常に美しい。溢は「すぎる、程度が過ぎる」の意。溢喜(イッキ=あふれるほどの喜び)、溢美溢悪(イツビイツアク=ほめすぎることと、けなしすぎること)、溢目(イツモク=目にみちあふれる、非常に美しいことのたとえ)、溢誉(イツヨ=過度の名誉、ほめすぎ)、溢利(イツリ=余分の利益)。

9) 遽かに=にわかに。はげしく急に。あわただしい。音読みは「キョ」。遽急(キョキュウ=さしせまる、遽疾=キョシツ=)、遽止(キョシ=ぎょっとしてやめる、急にやめる)、遽色(キョショク=あわてた顔つき)、遽人(キョジン=宿場で働く人夫、早馬の使い)、遽然(キョゼン=あわてるさま、あわただしく)、遽卒(キョソツ=にわかに)。

10) ケンデン=喧伝。盛んに世間に言いふらす。「喧しい」は「かまびすしい」「やかましい」。喧鬧(ケンドウ=騒がしくてにぎやか)、喧啾(ケンシュウ=鳥などが騒がしく鳴く)、喧擾(ケンジョウ=騒ぎ乱れる、ごたつき騒ぐ)、喧呶(ケンドウ=かましく叫ぶ)、喧卑(ケンピ=騒がしくていやしい)。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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