スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

初心者からベテランまで楽しめるバリエーションが魅力の八ケ岳登山=木曾道中記「日本道中記」(3)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の3回目です。この旅の序盤の目的地である八ケ岳連峰。あるサイトの解説によると、「八ヶ岳は赤岳を中心として南北に連なる山脈で、アクセスも良くアルペン気分を堪能できる日本を代表する人気のスポットです。その魅力は多彩なルートです。初心者でもハイキング感覚で登れる編笠山・天狗岳・硫黄岳から赤岳・阿弥陀岳・横岳・権現岳に代表される本格派登山まで経験によって様々なコースが選択できます。また、横岳を中心として高山植物の宝庫である八ヶ岳連峰は多彩な花々を見ることができるばかりか、登山道の周囲には数々のきのこを目にすることもできます。」。麗水も言うように、八箇の山が連なって形成されているため多彩なルートがあってお好み、力量次第で様々な登山が楽しめるようです。ちなみに「八ケ岳」という名の単独の山は存在しません。




二 八ケ岳の絶頂

 八ケ岳は、甲州の巨摩、信州の諏訪、佐久の二州三郡に1)マタガれる八箇の山に冠せたる名なり、最も西なるは西ケ嶽、次には網笠嶽、今余等の登り行くはこの山なり、高さは八千三百尺と註せらる、次には擬宝珠、次には権現、赤嶽、石尊、横ケ嶽、太古(おほむかし)、今の阿弥陀ケ岳の辺りに大噴火口ありて、幾箇の2)シュンレイこれを繞りて火口壁を成したりしを、何時の代にかありけん、又も爆破して信州に向へる火口壁を吹き飛ばしたれば、3)て今の八ケ岳の列峯となれるなりといふ、4)トソツの際を5)ぐる大火柱の、6)れて漫天の火雨(ひさめ)と降りし前の世のさまを想へば、すゞろ心の7)くを覚ゆる也。


 白樺、楢、落葉松、8)水松、檜の深森を穿ちて行けば、石の懐より湧く雲の、脚あるに似て人に伴ひ、眼あるごとく、樹は縈(まと)ふ、鶯、羯鼓鳥の啼く音は石に沁み入るばかり、路なきに路を索めて辿り行けば、やがて絶壁の上に出でたり、大巌の9)り立つさま、10)の如く又た11)フトのごとし、試みに石を落せば、山菅のしげみのうちに出頭又た没頭して奔跑(ホンホウ)するさま、手負の猛猪の行くにも似て、12)満壑の雲どよみ立つなり。


★「漫天」は「天一面、満天」。「漫」には「みたす、一面、ひろい」の意がある。漫衍(マンエン=よくないことがはびこり広がる)もこの意味。もちろん「蔓延」もある。
「すゞろ」は「なんとなく、むやみ」。あるいは「すゞろ心」。

★「(まとう)」は「まわりにまきつく、ぐるぐるとまわりまといつく」。音読みは「エイ」。

★「奔跑(ホンホウ)」は「すたすた急ぎ足で歩くこと」。


麗水のルートは標高2500メートルを超す「網笠嶽」ルート。恐らく素人向けバージョンだと思われますが、それでも「路なきに路を索めて辿り行けば、やがて絶壁の上に出でたり」「試みに石を落せば、山菅のしげみのうちに出頭又た没頭して奔跑(ホンホウ)するさま、手負の猛猪の行くにも似て」などの描写はいかにも絶壁の絶景コース。ま、麗水の筆力で過剰表現になっている可能性も無いとは言えませんが…。

問題の正解は続きにて。。。





1) マタガれる=跨れる。「跨る」は「またがる」。両方にかかる、(二つ以上に)わたる。音読みは「コ」。胯下(コカ=またの下、股下)、跨鶴(コカク=鶴に跨って空を飛ぶ、転じて仙人になること、死んで昇天すること)、跨拠(コキョ=地域などを占有してよりどころとすること)、跨制(コセイ=両方にまたがって支配する、双方をとりしまる)、跨年(コネン=二年にまたがる、年末から年初にわたること)、跨有(コユウ=両側にまたがって両方とも自分の物にする)、跨略(コリャク=ふみこえてしまう、おかして守らないこと)。

2) シュンレイ=峻嶺。高くそそりたつ山。

3) 旋て=やがて。まもなくようすがかわって。一転して。当て字っぽい訓み。

4) トソツ=兜卒(兜率)。兜率天の略。欲界六天の第四位。内外二院ある。内院は将来仏になるべき菩薩が最後の生を過ごし、現在は弥勒菩薩が住むとされ、我が国ではここに四十九院があるという。一方、外院は天人の住所。

5) ぐる=ささぐる。力を込めて高く持ち続ける。音読みは「ケイ」。

6) 頽れて=くずれて。「頽れる」は「くずれる」。くずれおちる、くずれおる。音読みは「タイ」。頽岸(タイガン=くずれかかった岸)、頽垣(タイエン=くずれたかきね)、頽毀(タイキ=壁などがくずれこわれる)、頽弛(タイシ=おきてなどがゆるみすたれる)、頽思(タイシ=ぐったりと思いに沈む、意気消沈する)、頽堕(タイダ=だらしなくくずれおること)、頽替(タイテイ=くずれすたれる、衰頽=スイタイ=、「替」の読みが「テイ」に要注意!)、頽唐(タイトウ=どっとくずれ落ちる、勢力が衰える、頽墜=タイツイ=・頽落=タイラク=)、頽年(タイネン=心身が衰えてくる年齢、頽齢=タイレ)、頽敗(タイハイ=健全な気風・風俗がくずれすたれる)、頽風(タイフウ=荒い風、くずれすたれた風俗、悪い風俗)、頽弊(タイヘイ=風俗・制度がくずれてだめになる)、頽陽(タイヨウ=夕日、落日)。

7) 慄く=おののく。おそろしくてぶるぶるふるえる。音読みは「リツ」。慄然(リツゼン=おそれてふるえるさま)、慄慄(リツリツ=おそれてふるえるさま)。「おののく」はほかに、「戦く」「栗く」「顫く」がある。

8) 水松=いちい。イチイ科の常緑高木。一位とも書く。熟字訓問題に最適!「スイショウ」と読むと又別の植物になるので要注意!!さらに、「赤檮」「檪」も「いちい」ですが、こちらはブナ科の常緑高木。微妙に異なるのでもっと要注意!!!「水松」は「みる」の熟字訓もあるが又区別の植物ですのでとことん要注意!!!!

9) 欹り立つ=そそりたつ。たかくそびえたつ。これは当て字ですね。「欹」は「そばだてる」、「そばだつ」と訓むのが一般的です。

10) 笋=たけのこ。「筍」の異体字。和語では「たかんな」「たこうな」とも訓む。音読みは「ジュン」。筍席(ジュンセキ=たけのこの皮で編んだむしろ)、筍輿(ジュンヨ=竹製のこし)。

11) フト=浮図(浮屠)。寺の塔、あるいは卒塔婆。

12) 満壑=マンガク。谷じゅう、谷いっぱいにみちる、谷全体。「壑」は「たに」「あな」。岩壑(ガンガク=岩のあるたに)、溝壑(コウガク=みぞ)。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。