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大結飯を食らう三者三様の髭が飯粒だらけに…=木曾道中記「日本道中記」(2)

遅塚麗水の紀行文集「日本道中記」(近代デジタルライブラリー所収)から、「峡雲蘇雲・木曾道中記」の2回目は「一 八ケ岳の大裾野」の続きです。旅の始まりは兎に角わくわくするもの。旅慣れた麗水とて例外ではありません。わくわくわく。どんな出会いが待っているのやら。。。女じゃないよ。

 暁の猿橋を過ぎて釜無川を渡る頃、凝紫一堆の富士を群山の間に見る、左は黒沈々たる駒が嶽の眼の届く天の1)を劃り、右には裾野を長く2)チカクに曳いて、八箇の峯雲を抽き、高々と3)セイメイを撑(ささ)ぐるさまに雄々しくも立つ八ケ岳、凡そ山国に通ふ鉄道のうちにて、この八ケ岳大裾野の車窓の眺めの壮大なるに較ぶべきものなし、

 小淵沢駅より下りて少時く駅の前の旅館に憩ひ、鮪のすき身と石豆腐の味噌汁とにて朝餐(あさげ)をしたゝむ、予て友の親しき県庁の技師に頼み置きたれば、一人の巡査は案内者として余等を待てり、盆栽物の採収に行くといふ村人も一行に加はりて、4)射干の花紫に咲く大裾野原を辿り行く、射干の花の外に5)ショウコウ燃えんとする6)ヤマツツジあり、末広がりの山の根は眼もはるの空を劃りて、薄日射す大裾野に澹き雲の影を落し、晴れみ陰りみする芝生路は、やがて落葉松の林に入りて漸く7)し、こゝら辺りに富士桜今を盛りに咲きたり、8)小葩9)レイエン、まことに人間の物にはあらず、

 十一時、羅漢松の林の10)けし峰の端の石を筵にして11)午餉を伝ふ、海苔に裹みし12)大掬飯の両手に余るを、査公はカイゼル髭を、村人は13)イガグリ髭を、余等はお14)チョボ髭を飯粒だらけにして食ふ、15)羯鼓鳥啼くこと頻りなり。


★羅漢松(ラカンショウ)は「犬槙」(いぬまき)の漢名。

八ケ岳の裾野を汽車から眺めて、いよいよ登頂です。山の梺はまだまだ楽勝ムードが漂うのですが、次第に険しくなります。そして、とんでもないことが待っていた…気になる続きは次回にて。

その前に問題の正解と髭の形が気になる方は続きをどうぞ。。。





1) 涯=かぎり。はてもOK。

2) チカク=地角。遠く隔たった土地のはて。大地の果て。地角天涯(チカクテンガイ=大地の果てと大空の果て、遠いへんぴな土地のたとえ)。

3) セイメイ=青冥。青ぞら。蒼溟(ソウメイ)とも。

4) 射干=しゃが。アヤメ科の常緑多年草。林下に自生。葉は剣形。晩春に淡紫色で黄色い斑点のある花をつける。果実は結ばず地下茎で殖える。「著莪」とも書き、漢名は「胡蝶花」。熟字訓問題で狙われそうです。

5) ショウコウ=猩紅。しょうじょうの血のようにあざやかな真紅の色。猩猩緋(ショウジョウヒ)とも。猩猩(ショウジョウ)とは「オランウータン」でもありますが、もともとは中国の想像上の動物。体は狗や猿の御徳、声は小児の如く、毛は長く朱紅色で面貌人に類し、よく人語を解し、酒を好む。猩血(ショウケツ=しょうじょうの血。真紅の色)。

6) ヤマツツジ=山躑躅。ツツジ科の落葉低木。各地の山地に自生。高さ約三メートル、若枝には褐色の剛毛があり、葉は楕円形。5~6月ごろ、枝頂に二~三個ずつ朱・紅色の花を披く。

7) 嶮し=けわし。山の切り立っているさま。音読みは「ケン」。嶮路(ケンロ=険しい山道)、嶮隘(ケンアイ=地形がせばまっていてけわしい、そのような所)、嶮峻(ケンシュン=山などがけわしい)、嶮岨(ケンソ=地形がけわしいこと)。

8) 小葩=ショウハ。ちいさくて可憐な花。「葩」は「はな」。特に白い花をいう。葩卉(ハキ=美しいはなが咲く草、草ばな、花卉=カキ=)。

9) レイエン=冷艶。ひややかな美しさ、雪や白い花などの形容。

10) 豁けし=ひらけし。「豁く」は「ひらく」。ひらけて通じるさま。音読みは「カツ」。豁爾(カツジ=ひろびろとひらけたさま、酔いや眠りなどからさめてさっぱりするさま)、豁如(カツジョ=心が広くて大きいさま)、豁然(カツゼン=土地などがひろびろとひらけているさま、疑いや迷いがさらりと解けて物事がはっきりするさま)、豁達(カッタツ=けしきなどがひろびろとしているさま、心が大きく物事にこだわらないさま)、豁達大度(カッタツタイド=ひろくて大きな度量)。

11) 午餉=ひるげ。むろん「ゴショウ」の音読みもありですが熟字訓問題で出されたら「ひるげ」。昼ごはん、ランチ。

12) 大掬飯=おおむすび。握り飯。「掬」は「むすぶ」。当て字訓みです。

13) イガグリ=毬栗。いがに包まれたままの栗の実。毬栗頭から毬栗髭…。

14) チョボ=樗蒲。「かりうち」のこと。ばくちの一種。「樗」も「蒲」も、その実をサイコロに用いたことから。

15) 羯鼓鳥=かんこどり。カッコウのこと。これは当て字訓み。「羯鼓」(カッコ)は「つづみの一種、二本のばちで両面をうつ、羯=中国西北に住んでいた遊牧民族で匈奴の一種=の人たちがもちいたつづみ」。この音をカッコウに当てたもの。寂しい店の「閑古鳥」(カンコドリ)もカッコウのこと。

樗蒲髭とはどんな髭を言うのでしょうか。髭鬚髯散人としては気になるところです。カイゼル髭や毬栗髭も・・・?おそらくちょび髭の洒落ではないかと推察しますが。。。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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