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漢検1級文章題演習=中江兆民の「一年有半」・その4

中江兆民の「一年有半」で漢字検定1級文章題シリーズの4回目です。引き続き岩波文庫の「一年有半・続一年有半」から引用しております。本日は7問、過去最高のヴォリュームです。週末なのでゆっくり挑戦できるでしょう。ご容赦ください。

 

 

 〔1〕㋐の漢字の読みをひらがなで記せ。①~⑩のカタカナを漢字に直せ。

 

 近日文学、露伴、紅葉、逍遥、鷗外皆佳なり。けだし露伴①ユウコン高華に意ありて、即ち徂徠のいはゆる峩眉天外雪中看は、正に之人野心の②キョウオウする所ならん。紅葉は③ヒャクスイ千錬、④レイロウ⑤メイエイ、十二分に⑥トウテツせずんば休まざるの概あり。逍遥は極めて自然に近し、その縦横⑦キサイ、一に東坡のいはゆる行くべき所に行き、止まるべき所に止まるものに似たり。もしそれ鷗外は⑧オンジュンにして絶て⑨ホウを露はさざる、けだしその人あるいはかくの如き耶。

 近時作者、多くは修辞に専らにして、趣向の巧奇はその野心の存する所にあらざるものに似たり。この点よりいはば、今の作者皆な近松、武田に及ばざること遠きこと甚し。近松、武田、独りその文字㋐瑰麗なるのみならず、趣向もまた巧奇にして、人をして⑩ハクアンせしむ。余常にいふ、わが邦文章、義太夫本第一等なり、欧西ツラジエヂー、ドラームに劣らず、物語の類皆及ばず。(P6263

 

 ㋐ 瑰麗 =〔 かいれい

 

 ① ユウコン =〔 雄 渾 〕

 

 ② キョウオウ =〔 嚮 往 〕

 

 ③ ヒャクスイ =〔 百 錘 〕

 

 ④ レイロウ =〔 玲 瓏 〕

 

 ⑤ メイエイ =〔 明 瑩 〕

 

 ⑥ トウテツ =〔 透 徹 〕

 

 ⑦ キサイ =〔 揮 洒(灑) 〕

 

 ⑧ オンジュン =〔 温 醇 〕

 

 ⑨ ホウ =〔  〕

 

 ⑩ ハクアン =〔 拍 案 〕

 

 〔2〕㋐~㋑の漢字の読みをひらがなで記せ。①~⑦のカタカナを漢字に直せ。文中に兆民が漢字を一字誤っている。それを指摘し正せ。

 

 議論①ジブン、故福沢先生、福知桜痴、朝比奈碌堂、徳富蘇峯、陸羯南、これその最なる者、福沢文天下これより飾らざる莫く、これより自在なる莫し、その文章として観るに足らざる処、正に一種の文章なり。桜痴②サイヒツ諸体を㋐ぬ、而して一種封建の臭気あるは奇といふべし。蘇峯直訳体けだしほとんどその創立する所にして、一時天下を擅にせり。碌堂、羯南、倶に漢文崩しにして、時に③ソゴ不消化の弊あり、あるいは急普請の漢学者たるに因るもの耶、非か。

 近時漢学振はず、人々ただ用に供するに足ることを求むるのみ、故に独修多きに居り、④ソソツ極て夥し。⑤サンシャを譲る(避く)、⑥ビソクを伺ふ(仰ぐ)、一葦帯水、⑦キシ鮮明の類紙上に相ひ㋑ぐ者比々これなり、而して読者もまた怪しむことなし。これ小中学の課程多事にして、漢学を修むるの暇なきにこれ由る、けだしこの誤なき者は独り思軒あるのみ。(P65

 

 ㋐ 該ぬ =〔 ・ぬ

 

 ㋑ 踵ぐ =〔 ・ぐ

 

 ① ジブン =〔 時 文 〕

 

 ② サイヒツ =〔 才 筆 〕

 

 ③ ソゴ =〔 措 語 〕

 

 ④ ソソツ =〔 疎 率 〕

 

 ⑤ サンシャ =〔 三 舎 〕

 

 ⑥ ビソク =〔 鼻 息 〕

 

 ⑦ キシ =〔 旗 幟 〕

 

a) 〔  →  〕

 

 

 〔3〕㋐~㋑の漢字の読みをひらがなで記せ。①~⑤のカタカナを漢字に直せ。

 

 近日学士輩往々言ふ、独逸学術極て盛を致し、その工商業に当用せらるることますます切実にして、その製造する所精巧にして価廉なり、英国の販路皆㋐けて独逸の領分に帰す、けだし英国は衰運已に兆せり云々。しかれども看よ、英が南亜に事あること既に久しく、その兵を用ゆる三十①キョ万、その財を②ビする十余億、その間また③ホクシンの事あり、然り而していまだかつて金融④ヒッパクを告ぐるあらず、⑤ソクセン常に百分の三、四に往来して、それ以上に騰らず、その富資の固き真に人をして驚嘆せしむるに足る、英国いまだ㋑(か)に軽じやすからざるなり。(P72

 

 ㋐ 拆けて =〔 ・けて

 

 ㋑ 遽かに =〔 にわ・かに

 

 ① キョ =〔  〕

 

 ② ビ =〔  〕

 

 ③ ホクシン =〔 北 清 〕

 

 ④ ヒッパク =〔 逼 迫 〕

 

 ⑤ ソクセン =〔 息 銭 〕

 

 

 〔4〕㋐~㋑の漢字の読みをひらがなで記せ。①~④のカタカナを漢字に直せ。

 

 余明治の社会において常に甚だ不満なり、故に筆を取れば筆を以て攻撃し、口を開けば①コウバを以てこれを迎ふ。今や喉頭この②アクシュを獲て医治なく、手を③キョウして④シュウエンを待つ、あるいは社会の罰を㋐りて㋑るにはあらざる耶、呵々。(P76

 

 ㋐ 蒙り =〔 こうむ・り

 

 ㋑ 爾る =〔 しか・る

 

 ① コウバ =〔 詬 罵 〕

 

 ② アクシュ =〔 悪 腫 〕

 

 ③ キョウ =〔  〕

 

 ④ シュウエン =〔 終 焉 〕

 

 

〔5〕㋐~㋒の漢字の読みをひらがなで記せ。①~⑦のカタカナを漢字に直せ。

 

余の事業におけるや、①エイリは則ち他人これを取り、損失は則ち余これに任じ、その末や裁判、弁護士、執達吏、公売等続々生起し来りて後ちやむ、これ余が数年来事業に従ふて遭遇せし所の境界の順序なり。今や不治の疾に罹り百数十里外に流寓して、定て②ダビの骨を以て家に帰る事となるべし。しかれども余の本領は別にあるあり、他なしこの一年有半即ちこれなり、これ即ち余の真我なり。

 四、五日前、寓の主人大上君の室に至り、③ゴワの末偶然君の机上の④ショキョウ(ひ)らき、真山民詩鈔と唐宋八家選本とを見る。余大に喜び、あたかも天涯万里の客舎に知友に逢ひたらんが如く、直ちに主人に乞ふて⑤シャクランし、大に文思を養ふことを得たり。これより余が楽事また一箇を増し来り、先づ真山民の詩より始めり。惟ふに余のこの書を㋐(き)しは、十七、八歳の時なりし歟と思ふ、その記憶に存せしは「⑥ラクイ数声山月寒」の一⑦ジュウにして、余は皆忘れて今始て読むが如し、故に興味㋑滋々㋒饒し、記性の弱なるもまた時として益ありといふべし。(P7879

 

 ㋐ 繙き =〔 ひもと・き

 

 ㋑ 滋々 =〔 ますます

 

 ㋒ 饒し =〔 ・し(おお・し)

 

 ① エイリ =〔 贏 利 〕

 

 ② ダビ =〔 荼 毘 〕

 

 ③ ゴワ =〔 晤 話 〕

 

 ④ ショキョウ =〔 書 筐(篋) 〕

 

 ⑤ シャクラン =〔 借 覧 〕

 

 ⑥ ラクイ =〔 絡 緯 〕

 

 ⑦ ジュウ =〔  〕

 

 

 

 〔6〕①~⑧のカタカナを漢字に直せ。

 

 岡松先生叙事文において大に力を用ゐられたり。その材を取る極て宏博にして、即ち三代秦漢より下明清に及び、旁ら①ハイカン、②ヤシ、③ホウギの書に至るまで、時に応じ意に任せ、駆使して遺さず、而してその紙に著はるる所、いはゆる字々軒昂して、しかもかつ④ダチョウを失はず。その『常山紀談』を訳する、原文の一字をも放過せず、乃ち馬の綿嚙、鎧の⑤オドシ等の微といへども、皆訳定を経て、而して字面一々出処なきは莫し、山陽履軒といはず、徂徠といへども恐くは筆を投じて⑥シツゼンに平伏せざる能はざるべし。先生⑦ガクショクかくの如くにして、しかも他の川田、重野の輩博士号を授かるに反して、一寒⑧ソダイを以て家居して歿せり。しかれどもこれがために先生においては始より損ずる所あらず、また益する所あらず、けだしその川田重野に同じからざる所、正にますます尚ぶべき所以なる歟。(P8182

 

 ① ハイカン =〔 稗 官 〕

 

 ② ヤシ =〔 野 史 〕

 

 ③ ホウギ =〔 方 伎(技) 〕

 

 ④ ダチョウ =〔 妥 貼(帖) 〕

 

 ⑤ オドシ =〔  〕

 

 ⑥ シツゼン =〔 膝 前 〕

 

 ⑦ ガクショク =〔 学 殖 〕

 

 ⑧ ソダイ =〔 措(醋) 大 〕

 

 

 〔7〕㋐~㋒の漢字の読みをひらがなで記せ。ただし、㋐は訓読み、㋒は音読み。①~③のカタカナを漢字に直せ。

 

 近衛公、最上名門の㋐を以て、南船北馬少も労を辞するなく、尤も意を東洋大陸の事に用ゐ、その薩長内閣に①バンショク大臣たるを肯んぜずして、独り好みて学習院に長と為り、華族子弟の教育を司る者、これその志趣遠大なりといふべし。但余、公において謁を得る一再に止まり、その中に有する所果して如何を伺ふこと能はず、その他日果て衆望に㋑ひ、天下の心を②エンソクするや否やを知らず、その大織冠公の㋒たるに③コフすること勿くんば国家の幸なり。(P86

 

 ㋐ 胄 =〔 よつぎ

 

 ㋑ 称ひ =〔 かな・ひ

 

 ㋒ 裔 =〔 えい

 

 ① バンショク =〔 伴 食 〕

 

 ② エンソク =〔 厭 足 〕

 

 ③ コフ =〔 孤(辜) 負 〕

 本日は以上です。難問、珍問揃いでした。わっかる訳ねぇ~よ、って言わないで下さいね。抑、中江兆民大先生の文章であるということをお忘れなく。分からないのが当たり前なのですから。。。でも、一問でも二問でも抵抗しましょうよ。多分、馴れだと思います。どんどん串れれば少しずつ浮かぶようになるのではないでしょうか?迂生はそう信じて日夜励んでいます。

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Re: 兆民を読みまくりましょう

 コメントありがとうございます。
 それだけ仰っていただけると問題作りに張り合いも出ます。感謝いたします。
 一つだけ訂正を…。問題を作っていて、「兆民が漢字を誤った」としましたが、あれは世の漢学を疎かにした輩が間違って書いていると兆民は指摘しているだけでした。「一衣帯水」を彼が間違うわけがないですね。
 事ほど左様に、明治期の当時ですら漢学が疎かにされていたんですね。これを嘆いている。
 現代人は言うに及ばず全然駄目です。したがって兆民の著書を読みまくって漢学に親しむ必要はありそうです。実は言っていることも大して難しくは莫い。そう、現代社会にこそ通用することばかりなんですよね。。。政治家や官僚こそ読むべきだと思うのですが。。。

個人的には

 やっぱり今日も遣ってしまいました。現在では全く目にすることのない言葉のオンパレードですね。でも個人的には大好きなのです。兆民先生の圧倒的な語彙力と表現力に感服しつつ、小生も日々精進していこうと改めて感じます。

 ・・・といいますか、じっくり読み直そうと思います。一度や二度読んだだけではやっぱりダメですなぁ。何時になることやら。それまではchar様のブログにて確りと学習させて戴くことにします。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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