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漢検1級文章題演習=中江兆民の「一年有半」・その1


 中江兆民の「一年有半」を題材に、文章題を作ってみました。明治34年(1901年)、兆民は55歳の時、咽喉癌で余命1年半と診断され、逗留先の大阪・小塚旅館で療養生活に入りました。その際、頭に浮かんだ由なしごとが書かれています。岩波文庫の「一年有半・続一年有半」から引用させていただきます。



 〔1〕 ①~④のカタカナを漢字に直せ。⑤~⑥は読みをひらがなで記せ。ただし、⑤は訓読み、⑥は宛字読み。⑦はア)~ケ)から記号を選べ。

 余が妻は、余があらかじめ患ひしよりは意外に哲学的にて、かの一年半において絶て苦情を言はず、全然余の旨趣を採り務めて目前を楽しみ、以て自ら①イシャせしと見へ、今この病院に居るも、何となく陽気にて⑦〔    〕温泉場に出養生しつつあるが如く、うつらうつら日を送りその中⑤創口も全く癒着し、ただ②ガイソウいまだ去らざるのみ、因て六月十八日出院して再び中の島小塚旅館に帰れり。
 これより先、いまだ入院せざる前、余妻を携へて堀江なる明楽座に往き大隅太夫の③ジョウルリを聴く、妻が大隅を聴くこれを始めとす。大隅は名人故春太夫の弟子にして春太夫歿後これが⑥三絃を任じ居たる古今無双と称せられし豊沢団平に従ひ、同人にその神品ともいふべき三絃を以て引き廻はされ、自然に故春太夫の音節の④ウンオウ極むることを得たりといふ。殊に近頃流行の壺坂寺の如きは団平実に開山にして、これを大隅に伝へたるが故に、ほとんど今日にありて大隅太夫の専売ともいふべし。余出院して小塚へ帰るや、明楽座かの三十三所の題目を掲げ、壺坂寺の段は大隅太夫これを語ることとなり、毎日大入なりと聞けり。(P25~)

 ① イシャ =〔 慰 藉 〕

 ② ガイソウ =〔 咳 嗽 〕

 ③ ジョウルリ =〔 浄瑠璃 〕

 ④ ウンオウ =〔 蘊奥(薀奥) 〕

 ⑤ 創口 =〔 きずぐち 〕

 ⑥ 三絃 =〔 さみせん(しゃみせん) 〕

 ⑦ 〔    〕には「エンゼン」という言葉が入る。次の中から適切なものを選べ。

  ア)淵然 イ)嫣然 ウ)偃然 エ)宛然 オ)閹然 カ)艶然 キ)婉然 ク)奄然 ケ)厭然

  〔  〕

 〔2〕①~③の読みをひらがなで記せ。④~⑧のカタカナを漢字にせよ。

 七月四日、大阪中の島小塚旅館を辞去り、妻と共に堺市に赴く。これより先き去三十三年春、余堺の友人某々ら並に技師大上某の請を容れ大阪に来り、大上連年思を①(く)し力を②(く)して辛うじて好成績を得るに至りたる煉炭製造の業を創するがため、砲兵④コウショウに請ふて更に化学的試験を為さんとす。余素より提理太田某と善きを以て、余ために斡旋の労を取り、試験成績極めて良好にして同人皆大に喜び、その後堺市市の町において事務所を設け、⑤ゴウメイ若くは⑥ゴウシの一会社を組織せんとす。是に至り大上ら余に勧むるに、該事務所において疾を養ふことを以てす。余已に久しく小塚旅館に居り、やや意に⑦むあるを以て、直ちに堺人の勧に従ひ事務所に来れり。宅甚だ宏ならずといへども、構築整然として庭園すこぶる観るべく、大気極めて清涼なり、ただこの一事既に以て一切他事を③ふて余あるに足る。いはんや主人大上、その他共に煉炭事業に従事して此に居る者、皆⑧シャゼン無害の長者なるをや。(P33~34)

 ① 覃く =〔 ふか 〕

 ② 殫くし =〔 ・くし 〕

 ③ 贖ふ =〔 あがな・ふ 〕

 ④ コウショウ =〔 工廠(工厰) 〕

 ⑤ ゴウメイ =〔 合 名 〕

 ⑥ ゴウシ =〔 合 資 〕

 ⑦ ウ・む =〔 ・む 〕

 ⑧ シャゼン =〔 洒然(灑然) 〕

 〔3〕①~⑤のカタカナを漢字にせよ。

 大勲位は誠に①ヘンペンたる好才子なり。その漢学は悪詩を作るだけの資本あり、その洋学は目録を暗記するだけの下地あり、これ既に大に他の元老を②リョウレキして後に無語ならしむるに足る、しかのみならず口弁ありて一時を③コトするに余あり、しかれどもこれ要するに④キシツの才なり、⑤カンリンの能なり、宰相者の資にあらず。故に法律制度に関しては、前後常に若干の功あり、総理大臣と為るに及では、ただ失敗あるのみにて一の成績なし、その器にあらざるを知るべし。(P35~)

 ① ヘンペン =〔 翩々(翩翩) 〕

 ② リョウレキ =〔 凌轢(陵轢) 〕

 ③ コト =〔 糊 塗 〕

 ④ キシツ =〔 記 室 〕

 ⑤ カンリン =〔 翰 林 〕

 本日は以上です。 最後は初代総理大臣の伊藤博文を扱き下ろしています。第1回目ということで小手調べです。次回以降はもっと難しくなるはずです。御承知置きください。

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Re: これからもご期待ください

 あおむし様、コメントありがとうございます。

 自分で問題作っていて言うのも何なんですが、これいいですねぇ。中江兆民の文章はいい。どんどん問題が作れてしまう。すべての文章を問題にしてもいいほどです。

 ちなみにですが、迂生も全部が分かっているわけではありませんので念のため。これ問われたら絶対に分からないよなぁという前提で問題をピックアップしています。勿論、1級受検者ならこれだけは浮かんでほしいというのも混ぜています。トリッキーなものばかりだと学習が嫌になってしまいますからね。

>  気質とか貴室が出てきた・・・・。意味繋がらないですね。

 いや~、これは難しい問題でした。迂生もこの言葉は知らない。でも、勉強になりました。これは本番で狙われても可笑しくないでしょう?「記室」=官名。書記の仕事をする。後漢から宋代まで措かれた(by 漢字源)。次の「翰林」と合わせて、伊藤博文を宰相(総理)の器じゃないと切り捨てているのです。兆民ならではの物の言い振りですね。小気味いいですね。

 「一年有半」は姑く続けます。嵌りましたわ。其の後、幸田露伴、そして、兆民の「評論集」と続く予定です。

待ってました

 本日は兆民からの出題ということで鶴首してお待ちしておりました。 やっぱりあおむしは常用漢字で構成された熟語がなかなか出てこないのです。先日も評論集を読んでいて、問題にされたら絶対書けないなぁと思いながら・・・思ってる場合ではありませんね。

 気質とか貴室が出てきた・・・・。意味繋がらないですね。
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不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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