スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

淵明先生が《予行演習》を急いだのは…?=「自祭文」(6)

陶淵明の「自祭文」(岩波文庫「陶淵明全集」、松枝茂夫・和田武司訳注)シリーズの6回目です。自分の悔い無き人生を振り返り、おおむね満足の意を示した淵明先生。貧乏ではあったが我が儘に生きてこれたという自信があるから。さあ、そこでだからこそ死に向き合う場面では静かに、しかし、慈しんだ家族や、気の置けない仲間から祝福されたいと思うのです。

【第6段】

寒暑愈々邁き、亡は既に存と異る。外姻、1)に来り、良友、宵に2)る。之れを3)チュウヤに葬り、以て其の魂を安んぜん。窅窅たる我が行、4)ショウショウたる墓門。5)シャは宋臣に恥じ、6)ケンは王孫を笑う。



【解釈】 歳月は往いて停まらず、死亡はもはや生存とは違う。かくて姻戚や親しい友人が、朝に夜に葬いに駆けつけてきて、私を曠野に葬り、私の霊を慰めてくれるだろう。こうして私は暗くて寂しい墓の門にはいって行くだろう。かの宋国の宰相桓魋(カンタイ)のような贅沢な葬られ方は思っても恥ずかしいし、さればとて楊王孫のようにしみったれた葬り方もばかばかしいと思う。

1) 晨
2) 奔る
3) チュウヤ
4) ショウショウ
5) シャ
6) ケン

窅窅(ヨウヨウ=うすぐらいさま)。「窅」は「くらい」。窅然(ヨウゼン=奥深いさま、気を失ったようにぼんやりしているさま)、窅窕(ヨウチョウ=奥深いさま、しなやかなさま)、窅眇(ヨウビョウ=はるかで、見えにくいさま、奥深いさま)。




淵明全集によると、「宋臣」とは「春秋時代、宋国の司馬(陸軍大臣)の桓魋。彼は生前から自分のために石棺を作ったが、三年たっても出来あがらず、石工はみな疲れた。そのとき宋国にいた孔子がそれをみて、あまりにも贅沢だと笑ったことが『孔子家語』にみえる」。また、「王孫」とは「漢代の有名な無神論者楊王孫のこと。彼は臨終に際して子女に遺言して、自分が死んだら死骸を袋に入れて、穴の中に七尺ほど入ったところで、足を先に袋から出して、からだを土にじかにつけるようにせよ、つまり『裸葬』にせよといった」とあります。

臨終に際して二人の両極端な姿を対比させてどちらも死と正対していないと云うのでしょう。後二カ月後に訪れることを知っていてかどうかはともかく、親戚や親しい友人が友裏ってくれるのが一番である。派手でも嫌だし、地味でも哀しい。葬儀は見栄であってはならないが、誰ひとりも悲しんでくれないのも。。。難しい。なぜか?それは自分が旅立つのであって、見送るのは自分ではないからです。旅立つ方は見送る方にはなれない。だから、淵明先生は予め見送る立場を経験したのです。そうすれば恐い物はない。自分は誰からも見送れられないことはないのですから、安心して“本番”を迎えられるのです。

問題の正解は続きにて。





1) 晨=あした。あさ。太陽がふるいたってのぼるあさ。生気に満ちた早朝の意。清晨(セイシン=さわやかな朝)、早晨(ソウシン=早朝、早旦=ソウタン=)、鶏晨(ケイシン=ニワトリが夜明けを知らせる、夜明けのこと)、霜晨(ソウシン=霜の降りた朝)。

2) 奔る=はしる。ぱっと勢いよく駆ける、また、向こう見ずにどんどん駆ける。音読み「ホン」。奔佚(ホンイツ=非常に速く走る、走って逃げ去る)、奔渾(ホンコン=川の流れが急ですさまじいさま)、奔竄(ホンザン=はしり逃げる、逃げ隠れる)、奔車(ホンシャ=つっぱしる車、無鉄砲な譬え、奔車之上無仲尼=韓非子・安危=)、奔趨(ホンスウ=はしっておもむく)、奔湊(ホンソウ=はしり集まる)、奔湍(ホンタン=川の水流の急なところ、早瀬、急湍=キュウタン=)、奔馳(ホンチ=馬に乗って勢いよくはしり駆ける)、奔騰(ホントウ=駆けあがる、物価などが急に上がる)、奔北(ホンボク=戦いに負けて逃走すること、奔敗(ホンパイ=戦いに負けて逃走すること)、奔命(ホンメイ=主君の命令を果すために忙しく努力すること、忙しく立ち働く)、奔雷(ホンライ=激しく鳴る雷)。

3) チュウヤ=中野。広野。野原。中原。

4) ショウショウ=蕭蕭。ひゅうひゅうと風の吹きぬけるさま。ものさびしいさま。蕭条(ショウジョウ)・蕭索(ショウサク)・蕭寂(ショウセキ)・蕭寥(ショウリョウ)・蕭颯(ショウサツ)。

5) シャ=奢。おごり、贅沢なさま。対義語は「倹」。奢佚(シャイツ=おごりなまける、ぜいたくをしてほしいままにする)、奢華(シャカ=おごり飾ること)、奢侈(シャシ=おごり、ぜいたく、侈奢=シシャ=)、奢恣(シャシ=ぜいたくをしてほしいままにすること、奢肆=シャシ=・奢放=シャホウ=・奢縦=シャショウ=)、奢蕩(シャトウ=とめどなくぜいたくなさま)、奢靡(シャビ=ぜいたくてはでやかなこと、奢華=シャカ=)。

6) ケン=倹。つつましい、きりつめる。倹勤(ケンキン=質素で勤勉なこと)、倹歳(ケンサイ=凶作の年、倹年=ケンネン=)、倹省(ケンセイ=倹約してむだを省くこと)、倹徳(ケントク=引き締めてぜいたくをつつしむ生活態度)、倹薄(ケンパク=乏しくて物資などがないこと)、倹朴(ケンボク=質素で飾り気がないこと、倹素=ケンソ=)、倹吝(ケンリン=倹約して物惜しみする、倹嗇=ケンショク=)、倹陋(ケンロウ=心が狭くて卑しいこと)。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。