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依田学海の序文が柳橋新誌三篇の“跋文”でもあるというアイロニー

柳橋新誌三篇ノ序

柳蔭居士 依田

何有仙史柳橋新誌の著出でて東京の妓、1)セイカ天下に重し矣。之を嘲る者有りて曰く、粉白2)タイリョク、媚を献じ色を售る、水調一曲、人をして魂飛び神迷はしむ。彼は其の伎倆乃ち爾り、仙史は一3)ラクタク書生に過ぎず、其の著も亦漢土の文字、天下能く解する者幾人ぞ、4)烏ぞ能く其のセイカを増減せん哉と。嗚呼是れ風流才子の言に非る也。夫れ大袖を5)し、長裾を曳き、珊瑚の飾、瑇瑁の簪、其の粧束清楚、言語霊慧、東京の妓皆是れなり矣。徐に其の平生を察すれば貪なること狼の如く、狡なること猫の如く、6)コワクするは則ち7)コリ、8)カッサなるは即ち猿猱、一の文雅俊逸なる者を求むるに有る無き也。一の婉順婉嫻なる者を求むるに有る無き也。西土の妓紅払李の衛公を寒微に識る者の如き有り矣、黎倩胡澹庵に9)センタクに侍する者の如き有り矣。乃ち薛濤蘇小李易安の流に至つて、亦風流文雅を以て著るるは何ぞや。豈其の人品遠く我が妓の上に出る歟。然るに非る也。東京大なり矣。声妓多し矣。寧ろ其の人無からんや。特に文人才子の一たび絶群の筆を奮つて以て之を品評する無き也。仙史此に見る有り、筆舌霊活、微の照さざる無し焉。其の美を10)ユヨウし其の悪を懲戒す。細に伎芸を品し精く態度を評す。11)ネンサイ一挙、復た遁形無し矣。乃ち12)タンロウ狡猫、コリの妖、猿猱の恠に至るも、其跡を13)す能はず。而して文雅婉順、身を風塵に混ずる者亦名を曲中に著すを得、紅粉の面目是に於て乎一変す矣。然れば則ち此の著一たび出でて東京の妓、セイカ天下に重しと。豈虚言ならん哉。世果して豪傑衛公の如き、気節澹庵其の人の如き有らば、未だ必しも紅払黎倩無しとせざる也。初篇二篇既に世に行はる。頃ろ亦三篇の著有り。夫れ妓女盛衰、狭斜の栄枯、何ぞ人間の利害に関せん。顧ふに其故を推して之を論ずれば、亦一概に抹殺すべからざるもの有り。之を叙と為す。


幕末・明治の漢学者、依田学海(1833~1909)の手による序文ですが、語彙は結構難解ですね。いささか繰り返しが多く絮い感じもします。明治文壇の大御所で柳北とも深い交流があり、向島の家もごく近所だったそうです。学海の漢文体日記には柳北の名が数多く見えます。


いちいち語釈や関連は付けませんので、役立ちそうな言葉だけ問題にしておきます。

1) セイカ=声価。
2) タイリョク=黛緑。
3) ラクタク=落拓。おちぶれること。
4) 烏ぞ=いずくんぞ。
5) 翳し=かざし。
6) コワク=蠱惑。
7) コリ=狐狸。
8) カッサ=猾詐。
9) センタク=遷謫。
10) ユヨウ=揄揚。ほめあげること。この「揄」は「引き出す」の意。揶揄(ヤユ)だけではないので注意が必要です。揄袂(ユベイ=ふところに手を入れてたもとの中をさぐる恰好で行くさま)。
11) ネンサイ=燃犀。犀角を燃やす。かすかで見えにくい物を火を照らして見ること。
12) タンロウ=貪狼。
13) 韜す=かくす。

学海の序文が柳橋新誌三篇の“跋文”にもなっているという皮肉な結果になっています。もしもどこかに埋もれているのならば再び世に出ることを切実に願って已まないですね。これにて長らく続きました柳橋新誌シリーズは大団円を迎えました。お読みいただきありがとうございました。
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2006.6  2級合格
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2007.10 1級合格①
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