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黒船が抉じ開けた横浜の港 15年で大儲けした奴はいたか=「柳橋新誌」二編(28)

成島柳北の「柳橋新誌」(岩波文庫、塩田良平校訂)二編シリーズの28回目です。紀伊国屋文左衛門、通称「紀文」の豪遊伝説は伝説として、いまの商人には彼ほどの気概を感じる者はいないと柳北が嘆いています。「オキノクライノニシラホガミエル、アレハキノクニミカンブネ」の「かっぽれ」の謡曲を再び歌わせてくれるニューヒーローの登場が待ち焦がれているところ、鎖国を解き国を啓いた日本国が、外国との交易によって新たな“ヒーロー”の予感も萌しています。



力めて外面(ウハベ)を飾ると雖も、而も内情(ウチマク)1)ヒダイを免れず。噫亦衰へたる哉。而して横浜開港以来商賈外国と2)■■(カウエキ)す。策を失し産を破る者有りと雖も而も3)■■(カラテ)にして往き、三五年間大に其の家を興す者亦少しとせず。当今柳橋商にして善く遊ぶ者、横浜の客多に居る。後進の妓にして、頗る名声有る阿俊小鳴の若きは亦皆浜人の為に贖ひ去らる。聞く、前年浜の一商産傾き将に戸を鎖して去らんとす。適々4)■■(サツ)の行はるゝに会ふ。5)ヒャクホウ金を借りて以て3)■(二字のうち一字だけ)を買ふ、一朝利を獲る三万。6)■■(ソレヨリ)米を買へば則ち米騰り、油を買へば則油貴く、当今家産十万の上に及ぶと云ふ。余謂ふ、横浜の2)■■益々昌なれば則ち7)ゴウシャの徒亦将に益々冶遊を競はんとす、而して天亦将に紀文の如き者を出さんとする乎。夫れ亜(アメリカ)、孛(フロイス)、英、仏の船百貨を載せ8)リクゾクとして来れば、則ち南紀の柑船何ぞ復歌ふに足らんや、何ぞ復舞ふに足らんや。




1) ヒダイ=疲餒。つかれうえること。「餒」は「うえる」とも訓み、「うえてぐったりする、栄養が足りなくて体が疲れる」の意。餒饉(ダイキン=うえてからだが衰える)、餒虎(ダイコ=うえたトラ。危険なもののたとえ)、餒士(ダイシ=うえた人。民間で貧しい生活をしているが、すぐれた人物)、餒斃(ダイヘイ=うえて、行き倒れになって死ぬこと)、飢餒・饑餒(キダイ=うえてひもじいこと)。




■戯訓語選択。

2) 「コウエキ」
3) 「カラテ」
4) 「サツ」
5) 「ソレヨリ」

ジゴ・ケダイ・セキシュ・チョヘイ・ラソツ・ゴシ・チチュウ・ブジュツ


■正解


2) ゴシ=互市。貿易をすること。悪人同士が連絡を取り合って利益を図りあうの意もある。

3) セキシュ=赤手。手に何も武器を持たないこと。すで。徒手・空手とも。

4) チョヘイ=楮幣。紙幣のことですが、「サツを行う」とは「新札を発行する」の意か。当時は金(きん)が第一であり、まだ紙幣はお金というよりも投機の対象としての商品だったから、楮幣は金で買うというニュアンスだったのでしょう。

5) ヒャクホウ=百方。いろいろな手段・方法によって。百媚(ヒャクビ=女性のいろいろのなまめかしさ)、百卉(ヒャッキ=いろいろの草花)、百揆(ヒャッキ=多くのはかりごと)、百溢(ヒャクイツ=多額の金銭)、百爾(ヒャクジ=もろもろの)、百仞(ヒャクジン=非常に高いこと、非常に深いこと)。

6) ジゴ=爾後。ある物事があって以来、その後。

7) ゴウシャ=豪奢。非常に贅沢であること。豪侈(ゴウシ)・豪華とも同義。

8) リクゾク=陸続。あとからあとから絶え間なく続くさま。





「紀文」の再来を期待したいが、外見は立派だがその実、家計は火の車。衰微の程度が著しい。ところが、開国によって港を開いた横浜は外国との貿易が盛んになり、すっからかんになりかけた商人でもこの日米修好通商条約以来、十五年の間に再び勃興した者もいるといいます。フェニックス!そして、柳橋の遊客の有力な構成員ともなったのです。かつての「紀文」の再来とまではいかないが、若いぴちぴちの妓女を請け出し、将来を嘱望されていた阿俊や小鳴らをこの世界から持って行ったのも横浜商人。とある商人が破産寸前にまで落魄れたものの、新札発行の場面に遭遇し、金を借り集めて札を買ったら、その値が跳ねあがって三万円の利益が出た。それで米を買えば米価が高騰、油を買えば石油価格も高騰。あれよあれよと十万長者に。一発当ててバブルバブル。柳北はこうした横浜商人の活躍から次のようなことを展望しました。乃ち、横浜港での貿易がますます盛り上がっていけば、大儲けをする商人も柳橋で豪遊する者も増えるであろう。そのうち第二、第三の「紀文」が出て来る日もそう遠くあるまい。しかしよくよく考えれば、アメリカやプロシアやエゲレスやフランスの船が南蛮の珍品、宝石を持って次々とやってくる。日本の金が国外に流出して、設けるのは欧米列強の商人たち。紀文のかっぽれ節を歌い、かっぽれ踊りを舞うことになろうぞ。ゆくゆくは紅毛碧眼の遊客が柳橋を席巻する日も近いのではないかとの危惧も抱いているかのようです。あれれ、ちょっと違う歌詞が聞こえてくるぞ。。。。


♪カッポレ♪カッポレ♪オキノアカルイノニサラニカガヤク♪アレハクロフネタカラブネ~♪はぁ~よいさっさ~。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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