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かっぽれかっぽれ紀文が通る時化でも蜜柑を運んで大儲け!=「柳橋新誌」二編(27)

成島柳北の「柳橋新誌」(岩波文庫、塩田良平校訂)二編シリーズの27回目です。本日の主役の一人が江戸元禄期の伝説的な豪商、紀伊国屋文左衛門です。紀州蜜柑を江戸に運んだ商いで鉅万の富を得て江戸に進出。しがない商人から大山を当てて江戸で大出世しました。吉原での奈良屋茂左衛門と大尽遊びを競った話など、豪遊伝説を残しています。柳橋の遊客の有力な構成員である商人の今昔を問わず語りに語ります。上下二回に分けます。

冒頭の一節は江戸末期に流行った御囃子、「かっぽれ」です。


1)■■暗き処白帆懸かる(オキノクライノニシラホガミエル)、知る是れ柑を載す南紀の船(アレハキノクニミカンブネ)。此れは是れ旧詞曲、近来其の声を変じ其の手を新にして以て之を弾じ之を舞ふ。其の調促(ツマル)にして2)(□□□□)、其の音3)■(ゲビテ)にして雅、其の両手を輪して舞ひ、其の一足を4)げて跳る、亦一奇観、今盛んに宴席に行はる。世に伝ふ紀文なる者5)(□□)を侵し海を渡り、南紀の柑を6)いで以て大利を獲。漸々(ダンダン)7)カショクし8)トウシュの富竟に大都に冠たり。彼狭斜(イロザト)の遊を好み、豪を極め奢を窮めて前人に9)ぎて後世を圧す。児童と雖も今に紀文の名を識る。一快男子と謂ふべし矣。方今東京の10)■■(アキンド)一の気燄有る者無し、知るべし其の産日に耗(ヘリ)し其の財日に11)きを。


■戯訓語選択。

1) 「オキ」
3) 「ゲビテ」
10) 「アキンド」

ミョウ・ショウコ・エイメイ・ソウメイ・チョウ・カンチョウ


■正解


1) ソウメイ=滄溟。あおあおとした海のこと。「溟」は「うみ・くらいうみ」。溟海(メイカイ=くらい海、果てしない海)、溟渤(メイボツ=海、大海原)、溟溟(メイメイ=くらいさま、奥深くて知りがたいさま)、溟濛(メイモウ=小雨が降ってうすぐらいこと、またその雨)。

3) チョウ=佻。軽はずみで浮ついているさま。戯訓の「げびて」は「下びる」で「下品めく、下劣さを帯びる」の意。佻巧(チョウコウ=軽薄で、外面だけうまくとり繕うこと)、佻然(チョウゼン=かるがるとしていて、すばやいさま)、佻佻(チョウチョウ=ひとり離れていくさま、軽薄で苦労も分からないさま)。

10) アキンド=商戸。商人。商賈・商估とも書く。





2) 婉=シトヤカ。しなやかで美しい。婉約(エンヤク=かどだたずおだやかで、つつしみ深いこと)。

4) 蹇げて=あげて。かかげる。衣服の裾を上にあげる。「あしなえ」の訓みもある。音読みは「ケン」。蹇蹇匪躬(ケンケンヒキュウ=家来が苦労を重ねて主君の為に尽くすこと)、蹇吃(ケンキツ=つかえてどもる、つかえていて思い通りに進まない)、蹇諤(ケンガク=強引に申し立てて恐れない、正直なさま)、蹇産(ケンサン=気持ちがむすぼれてのびのびしないさま、山道の険しいさま)、蹇脩(ケンシュウ=結婚の媒酌人)、蹇渋(ケンジュウ=なやみとどこおおる、蹇滞=ケンタイ=)、蹇裳(ケンショウ・ショウをかかぐ=衣服のすそをかかげる)、蹇足(ケンソク=足に障害のあること)、蹇躓(ケンチ=つまずきなやむ、物事に失敗すること)、蹇跛(ケンパ=足が不自由なこと、蹇足=ケンソク=)、蹇剥(ケンハク=仕事が上手くいかなくて損をする、めぐりあわせが不利なこと)、蹇歩(ケンポ=足を引きずって歩く)、蹇劣(ケンレツ=動きがにぶくおとっている、才能が乏しい)、蹇連(ケンレン=道が歩きにくく名哉ア進まないこと)、蹇驢(ケンロ=足が不自由な驢馬)。

5) 颶=シケ。台風、とくに南中国海に発生する暴風雨。颶風(グフウ=台風・ハリケーン・サイクロンなどをいう)。「しけ」は時化とも書く。

6) 鬻いで=ひさいで。「鬻ぐ」は「ひさぐ」。売る、あきなう。鬻売(イクバイ=物を売る、商売をする、あきなう)。

7) カショク=貨殖。財産を増やすこと、金儲けの上手な人。

8) トウシュの富=陶朱の富。金持ち。大富豪。陶朱とは范蠡のこと。春秋時代、越王勾践に仕えた功臣。越と呉の戦いで活躍し、呉を倒した。そのご官職から離れ大金持ちになったことから、金持ちの代名詞ともなる。猗頓之富、陶朱猗頓ともいう。猗頓も范蠡の教えを享け金持ちになった。陶猗(トウイ)の熟語もある。富豪、金持ち。陶猗≒富豪。

9) 軼ぎて=すぎて。「軼ぎる」は「すぎる」。列からぬけて入れかわる。音読みは「テツ」。「ぬける」の意もあり、こちらは「イツ」。亡軼(ボウイツ=ぬけおちる)。「逸」と書き換え可能。

11) 匱き=とぼしき。「匱い」は「とぼしい」。中が空っぽになっているさま。音読みは「キ」。匱窮(キキュウ=貧しくて苦しむ、貧窮、匱困=キコン=)、匱竭(キケツ=中身がつきてとぼしい)、匱乏(キボウ=衣食が足りない、からっぽで乏しい、貧乏)、匱盟(キメイ=内容が充実していなくて、たよりにならない同盟)。「ひつ」の意もある。




かっぽれ~♪かっぽれ~♪紀文が主役の這の謡曲。最近は昔と比べて編曲され、踊りも面白いよう両手を回して片足を上げるのが決めポーズ。ヒップホップにや負けない斬新さがある。宴会では挙って踊って盛り上がる。紀文に肖り儲けてみたい。そんな思いを込めて歌い、踊りまくる柳橋の遊客たち。なにせ吉原の伝説が紀文にはあります。遊客にとっては憧れの存在。女子供もその名を知らぬ者はいない。江戸一番の大商人です。かように栄華を誇った紀文に比べ、いまの商人は彼ほどの気概を持った者はいない。時代の変遷と共に廃れ落魄れる者が多いのです。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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