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しゅっしゅっぽっぽ!次は「天の河」織女の焼き餅を買うならここでお降り下さい=「柳橋新誌」二編(24)

成島柳北の「柳橋新誌」(岩波文庫、塩田良平校訂)二編シリーズの24回目です。駕籠から人力車へと乗り物の変遷を毒づく芸妓。小粋な柳橋の遊びにはやっぱり駕籠がふさわしいという。エッホエッホの駕籠舁きの掛け声こそ遊びの士気を高める。少なくとも人力車のごろごろは不粋極まりない。すると古株の芸妓がまだまだ若いと昔話を披露します。


老妓側に在り、笑一笑して曰く、卿(オマヘ)妙齢(ワカイ)未だ気運の変を知らず、往年都内1)■■(オダイミヤウ)の往来を観るに従(トモマハリ)雲の如く、双槍前に在り鞍馬後に在り威を張り華を競ひぬ。今は則ち否らず、単騎2)ホンチ簡易風を為し3)ケンソ是れ尚ぶ、却て是れ美事。聞く4)■■(オカミ)頃日鉅万金を捨て、以て鉄路を造り将に蒸気車を通ぜんとす。蒸気車の疾きこと一瞬に十里、一刻に百里、横浜往還の如きは一飯時限耳。大坂長崎一日にして至るべく、即ち漢土天竺亦三日にして達すべし。真に是れ所謂妙々車也。一妓忙しく問ふて曰く、天竺往くべき耶。曰く然り。曰く然らば則ち妾将に其車に5)■し(ノリ)6)■■(アマノガハ)の岸に遊びて一たび牽牛織女の会合(デアヒ)を観んとす、7)若何。一妓其の背を拊つて曰く、休めよ焉、卿(オマヘ)の美貌往かば則ち牽牛に8)■■恋着(ヒトメオモヒツカレル)されん。奴(ワチキ)恐る、織女9)吃醋(□□□)必ず留車柵(クルマトメサク)を10)烏鵲橋(□□□□ノハシ)に建てること両国橋と一般ならん、大笑大笑と。


■戯訓語選択。

1) 「オダイミヤウ」
4) 「オカミ」
5) 「ノリ」
6) 「アマノガハ」
8) 「ヒトメ」



ケイシュク・ギンガ・ガ・カンケ・イチベツ・センパク・コウハク・キョ・ヒハク・チ・ゴケ・コベン



■正解


1) コウハク=侯伯。侯爵と伯爵、諸侯のこと。「侯」は封建時代の領主、すなわち大名の称号。

4) カンケ=官家。官庁、朝廷、政府のこと。官署・官衙ともいう。ここは明治新政府を指す。

5) ガ=駕。馬車やかごなどの乗り物に乗っていくこと。駕輿(ガヨ=こし、乗り物、駕轎=ガキョウ=)、駕跨(ガコ=馬にまたがる、馬に乗ること)。

6) ギンガ=銀河。天の川。銀漢(ガンカン)・銀湾(ギンワン)ともいう。

8) イチベツ=ちょっと見ること。一瞥恋着(イチベツレンチャク)は「一目ぼれされること」。


2) ホンチ=奔馳。馬に乗って勢いよくはしり駆ける。奔駛(ホンシ)ともいう。

3) ケンソ=倹素。質素で飾り気のないこと。倹朴(ケンボク)とも。「倹」は「つましい」「つつましい」「つづまやか」と訓む。倹薄(ケンパク=乏しくて物資などがないこと)、倹吝(ケンリン=倹約して、物惜しみする、倹嗇=ケンショク=)、倹陋(ケンロウ=心が卑しくて狭いこと)、倹歳(ケンサイ=凶作の年、倹年=ケンネン=)。

7) 若何=いかん。内容・状態を問うときのことば。いかが。

9) 「吃醋」(キッサク)は「醋を吃す」と訓読するが、この意味にふさわしい戯訓を三文字で記せ。ただし、「醋」は「醋酸」(サクサク)や「醋橘」(すだち)などに用いるように「酸っぱい味の液体」の意であり、それを「吃する」(飲む)という状態から類推せよ。直訳すれば「お酢を飲む」。辞書には掲載がないので発想力が問われる。

■正解

リンキ=嫉妬すること、焼餅を焼くこと。織女が美人芸妓に嫉妬する。某サイトに次の語源の解説が見えます。

「唐の玄宗皇帝の側近が、妾を置こうとしたとき、奥さんに猛反発されました。奥さんの怒りは玄宗皇帝にまで知られるようになりました。ある日、玄宗皇帝はその側近と奥さんを呼んで、その奥さんに『ここにある碗の中に、毒が入っている。ご主人が妾を置くことを大目に見てやるか、自分がこの毒を飲むか、決めなさい』と言いました。すると、この奥さんは何も迷わずにその毒を飲みました。でも、死ぬことはなかったのです。というのは、それはお酢だったからです。」男女間の疑心暗鬼をいう言葉で、中国語のようです。したがって、吃醋≒悋気・嫉妬の関係が成り立ちます。

10) 「烏鵲」=かささぎ。音なら「ウジャク」。「烏鵲橋」(ウジャクキョウ)は「カササギが羽をつらねて作る橋。陰暦七月七日の夜に、牽牛星と織女星があうために天の河にかけわたすとされた」。アルタイルとベガの仲介役です。小倉百人一首にもある大伴家持(中納言家持)の「かささぎのわたせるはしに置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」にも詠み込まれています。例の「夜半鐘声」で物議を醸した中唐の詩人、張継の「楓橋夜泊」の起句「月落ち烏啼いて霜天に満つ」を本歌取りしたもので、冬の冴えわたる夜空の星を、白い霜に見立てたものです。いずれもロマンチックな詩です。

「従」(ケンジュウ)は「従者、ともびと」。戯訓の「トモマハリ」は「供回り」で「供の人々、供勢」。




老妓は語り始めます。「まだまだ若いわね。もっと変化があるわさ。昔の大名行列を知らないのかえ。お伴の数が半端ない大行列で槍持ちが先導し、鞍馬を後に従えて、そらやもう威厳、華麗とおいうのはああいうのを言うんだろうねぇ。ところが、いまはたった一人で馬に乗って簡単な風情さ。質素倹約の極みだね。まあ逆に美しいけどね。それに最近じゃお上が巨費を投じて鉄道を敷いて蒸気機関車を走らすというじゃないか。蒸気機関車は一瞬にして十里、いやさ、百里はあっという間だね。横浜まで往復するのもお昼を食べる位の時間であっという間さ。大坂長崎間なら一日で済む。いやいや、唐土、印度でも三日あれば十分。ほんに絶妙な乗り物とはこのことさね」。すると一人の芸妓が興奮気味に聞きます。「印度にも行けるのかい」。「そうさね」。「だったら、あちきは天の河まで行ってみたいね~。彦星と織姫の年に一度の大切な邂逅をこの目で見たいわ、どうかしらん?」別の芸妓が茶化します。「だめだめ、お前みたいな美人芸者がいったら彦星さんが一目ぼれしちゃうわ。きっと、織姫さんの焼き餅ったらものすごいわよ。蒸気機関車が烏鵲橋を通れないように車止めのための柵を立てるのではないかしらん。この辺でいえば両国橋にも人力車が通れないように車止め柵があるじゃないの。それと同じよ。おほほほほほほほ~」。通せんぼ。。。すとんと落ちたかどうかは扨措き、愚にもつかない乗り物のお話でしたが、時代の変化を中国の七夕の伝説を盛り混ぜながら風刺しています。小粋な芸妓たちの小洒落たトークと言えるでしょう。人力車から蒸気機関車まで時代が進んできたのです。文明開化の波は確実に世の中を渝え、花街をも呑み込もうとしているのでした。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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