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役人を情夫にするなら…妓女の二人が身勝手トーク炸裂=「柳橋新誌」二編(8)

成島柳北の「柳橋新誌」(岩波文庫、塩田良平校訂)二編シリーズの8回目です。源氏物語「帚木」巻に「雨夜の品定め」というのがあります。長く降り続く五月雨の夜、頭中将、左馬頭、藤式部丞の三人が光源氏と共に女の品評をしながら、愚痴を零しあうのですが、ここは逆ヴァージョン。明治政府の高官をばったばったと斬り捲る妓女二人のトークの切れ味は痛快この上ない。全後編の二回に分けてお届けします。



新哇(ハヤリウタ)有り曰く、一六休暇(ゾンタク)大に宴を張る(オホイチザ)と。蓋し一六の日泰西日曜日の制に倣ひ、各省皆閉ぢ官員1)■■(ヤスム)す。或は盛宴を設け或は遊舫を泛べ、2)カンチョウ以て平日3)■■(ツトメ)の労(ホネヲル)を慰む。妓輩毎に杯杓に侍す。特々其の名姓邸宅を識るのみならず、併せて官爵の高低俸禄の多寡を知る。職員録官位表の如き4)ジュクアンせざる靡し。


■戯訓語選択の問題(今回は良問。対義語類義語の関係にもなってます)

1) 「ヤスム」

3) 「ツトメ」


カツモク・カンキュウ・キュウモク・オウショウ





正解

1) キュウモク=休沐。官吏の休暇。中国漢代には五日ごとに、唐代では十日ごとに、家に帰り沐浴することを許されたことから。休浴(キュウヨク)ともいう。「沐」は髪を洗う意。「ゆあき」「あらう」とも訓む。沐雨(モクウ=雨で髪を洗う、雨をかぶってぬれる、風雨にさらされながらかけずり回って苦労すること、櫛風沐雨=シップウモクウ=)、沐恩(モクオン・オンにモクす=恩恵をこうむる)、沐日(モクジツ=官吏の休日)、沐食(モクショク=すぐれた人物を尊重すること、すぐれた人が来ると、食べかけの食物を吐き出し、洗いかけた髪をたばねて面会する、握髪吐哺=アクハツトホ=)、沐露(モクロ=露にぬれる、苦労をして努力するたとえ、櫛風沐露=シップウモクロ=)、沐猴而冠(モッコウにしてカンす=サルが冠をつけている、粗野な人がうわべだけ飾ることのたとえ)。

3) オウショウ=鞅掌。手一杯に仕事を引き受けて、ひどく忙しいさま。「鞅」は「重みをまともに受けてになう、重みをになって奔走する」の意。ひっくり返して掌鞅(ショウオウ)ともいうので要注意だ!☆



2) カンチョウ=酣暢。酒を飲んでのんびりした気分になる、また、その気分。「酣」は「たけなわ」。酒が入っていることが前提。酣觴(カンショウ=心ゆくまで酒を飲む)、酣豢(カンカン=酒やうまい物を飲み食いして贅沢に暮らす)、酣宴(カンエン=盛んな酒宴、酒盛の真っ最中)、酣中客(カンチュウのカク=富貴におぼれている人のたとえ)、酣放(カンホウ=ほしいままに酒を飲んでしまりがない、文章が自由自在に書きこなされていること、酣縦=カンショウ=)、酣臥(カンガ=いい気持ちでぐっすり眠ること、酣眠=カンミン=、酣睡=カンスイ=)。

4) ジュクアン=熟諳。辞書に掲載がないが、「何度も何度も暗誦すること」くらいの意味で意でしょう。「熟」は「つらつら」「つくづく」。熟悉(ジュクシツ=十分に知り尽くす、知悉=チシツ=)、熟蕃(ジュクバン=政府の教化を受けて帰順した先住民、生蕃=セイバン=)、熟爛(ジュクラン=うれただれる、風俗が乱れること)、熟路(ジュクロ=なんども通っていてよく知っている道)。「諳」は「そらんじる」「そらんずる」。諳悉(アンシツ=くわしくのみこんですっかり記憶する、諳委=アンイ=)、諳誦(アンショウ=書いたものを見ないでそらでいう、そらんじること)、諳錬(アンレン=十分に練習して、よくのみこむ)。




新哇(シンアイ)。「哇」は「わいわいという笑い声や歌声」。哇咬(アイコウ・ワコウ)は「みだらな歌や音楽」。柳北の戯訓「ハヤリウタ」はとても分かりやすいです。民間で口ずさまれた流行歌。「一六」は「ジュウロク」ではなく「イチロク」と読み、月の「1」「6」の日。即ち、「1日」「6日」「11日」「16日」「21日」「26日」のこと。江戸期には休日・寄合日・稽古日とされていた。柳北の戯訓「ゾンタク」は和蘭語の「Zontag」。この日は花街の書き入れ時で皆さんそろって大宴会が催されるという。明治政府の役所がすべて閉庁となるからです。「日曜日」が休みになるのは明治9年の暦変更から。官僚どもは休みとなれば、宴会でどんちゃん騒ぎ、舟で酒盛り。芸妓を侍らせいい気分。そして、芸妓たちは彼らの住所名前役職ばかりか、給料が幾らで其のランキングも“御存じ”なのだという。ぱっと見てこのお方がいくら貰っているのかを諳んじることもできる。おお恐。。やはりいずれの時代も女が陰で男を牛耳るのです。したがって、職場が円滑に動くには欠かせない存在。逆にいれば下手を打てば致命傷、上手くやればこんなに頼もしい存在はいない。

続いてある二人の芸妓のやり取りが面白い。隣の部屋から聞こえて来る、妓女甲と妓女乙の会話に耳を傾ける柳北がメモったのでしょうね。甲が乙に「あなた奢りなさいよ」と話しかけます。




一日余某の楼に飲む。隣席二妓客を待つ有り、甲(ヒトリ)乙(ヒトリ)に語つて曰く、卿(オマヘ)宜しく一5)タイロウを設け以て饗すべし(タントオゴリヨ)。乙曰く、何の縁故(ワケ)有るかと。甲曰く、聞く情郎(トイチ)頃日(コナイダ)某の官に拝す。即ち是れ奏任第一等俸三百に超ゆ。賀す可し賀す可し。大円(マル)の6)キンシュウ、丸利(マルリ)の7)サンゴ、唯卿の欲する所(スキシダイ)。タイロウ々々(カンヂヨウ)。卿宜しく福を分つ可し。




5) タイロウ=大牢。立派な御馳走。もともと古代中国で天子が社稷をまつる際の供物、すなわち牛・羊・豚の三種類の牲(いけにえ)のこと。

6) キンシュウ=錦繡。美しくて立派な着物。錦の繡(ぬいとり)。

7) サンゴ=珊瑚。サンゴの装飾物。簪か扇か。




「トイチ」と戯訓がありますが、「ト一」と書く。情人、いい人、いろ。男女の双方に用います。ここはもちろん妓女乙の彼氏をいう。妓女甲によれば、乙の彼氏である明治政府の役人が出世してとある役職に就いたとか。その奏任ときたら「第一等俸三百に超ゆ」。ああおめでたや、福を分けてござんすな。「大円」「丸利」は不明ながら、恐らく当時の名だたるブランド名でしょう。いまならさしずめグッチかヴェルサーチか?(ちょっと古い?)欲しい者は何でも買って貰えるからね~。さあさあ御馳走、御馳走。奢ってよしな。。。ところが、妓女乙は浮かぬ顔。。。さて、何故??
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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