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男性諸君よ!挙って芸者遊びに行こうではないか=「柳橋新誌」(7)

成島柳北の「柳橋新誌」シリーズ(岩波文庫、塩田良平校訂)は7回目です。金がなくとも僅かの才と貌があれば、タイミングと努力次第で芸者をものにできると説く柳北ですが、これを本当に実行するには強い強い忍耐力が求められそうです。怯むな男、めげるな男。諦めないで衝き進め。玉砕瓦全でいいじゃないか……?


而して後益々我が1)サイボウを磨し我が2)ゼッポウを鋭くし、彼の外に3)   )する所の者をして以て我に捧送(シヲクル)せしめば、則ち我が器械も亦以て大に蓄ふべし焉。其れ此の如くんば則ち彼の三十六郡を打破し四百余州を奪拠すると、其の事は大に異なる有りと雖も、而も其の趣は則ち一也。之を呼んで4)ヒショウと謂ふとも可なり矣、之を命けて活仏と謂ふとも亦可なり矣。是れ他無し、特に其の才を以て耳。故に曰く、金と貌と無くして才有る者は猶ほ為すべき也と。蓋し此等の評論有名5)校書(ナノアル    )の為に之を発する耳。





1) 才鋩=サイボウ。才能のきっさき、つまり、才能を刀の鋭い先に喩えている。「鋩」は「きっさき」とも訓む。鋩子(ボウシ=刀のきっさきの焼き入れをした刃)。≠細胞、柴望、猜謗、綵房。

2) ゼッポウ=舌鋒。するどい言辞。「鋒」は「ほこさき」。↑の「鋩」と類義語。鋭鋒(エイホウ=するどいほこさき)、鋒穎(ホウエイ=刃のきっさき、先端)、鋒戈(ホウカ=ほこ)、鋒気(ホウキ=鋭くて激しい気性・意気ごみ、鋭気)、鋒起(ホウキ=事件や発言が急に起る、蜂起)、鋒出(ホウシュツ=事件などが、きっさきが突き出るように、鋭く盛んに起る)、鋒刃(ホウジン=武器の鋭い刃)、鋒鏑(ホウテキ=刀のきっさきと、やじり、刀と矢のこと、転じて、武器、鋒鏃=ホウゾク=)、鋒芒(ホウボウ=細く尖ったきっさき、鋭く激しい気性のたとえ、鋒鋩)、鋒利(ホウリ=武器が鋭くて切れ味がよい、鋭利、文章の論調が鋭くて激しい)、鋒稜(ホウリョウ=ホコ先がとがったかど、物の突き出たかどのこと、また、ごつごつ突き出たさま)。

3) 攫=ツカム。柳北の戯訓です。手の中につかみとる、わしづかみにする。音読みは「カク」。攫噬(カクゼイ=つかんでかみつく)、攫鳥(カクチョウ=他の鳥をつめでつかみ殺す強い鳥、鷙鳥=シチョウ=)、攫搏(カクハク=つめでつかんでうつ、鳥獣が、つめや翼で、えものをとらえること)、一攫千金(イッカクセンキン=ひとつかみで千金を手に入れる)。

4) ヒショウ=飛将。行動が迅速で、すぐれた将軍。「飛觴」(宴会で杯を酌み交わすこと)、「飛翔」(空高く飛びまわること)、「飛章」(急いで手紙を送る)はいずれも引っ掛けです。

5) 校書=ゲイシャ。柳北の戯訓です。「コウショ」とも読み、妓女の別名。唐の薛濤(セットウ)という妓女が元稹(ゲンジン)のそばにいて校書(=校勘・校合・校理、書物を比べ合わせ文字の異同・正誤を調べること)した故事にちなんだ言葉です。お洒落な言い回しですね。



だから、磨け、研げ。成功目指して精進あるのみ。知らず知らずに武器が蓄えられるのだ。そこで戦に出れば、秦を倒す魁となった陳勝のように、明を倒した太祖のように、勝利して“大国”を手にすることができるのだ。事由や背景はいろいろあれど、その姿はあたかも大将軍。花街の生き仏でもある。「金」が無くても、「貌」がダメでも、「才」さえあれば、何とか知恵と工夫で攻めるべし。「金と貌と無くして才有る者は猶ほ為すべき也」。金も貌もない場合こそ、才で活路を見いだせ。今一つ、柳北の言うことは繰り返しが多く、何が言いたいのは曖昧模糊然としてきました。要は貧乏人も不細工も頑張れば女を物にできるぞい。。。。自分への“叱咤激励”なのかもしれませんな。最後のくだりは、高嶺の花である有名な芸者を物にするために言っていると謂います。





齪々(コセコセ)たる6)セツヨウ妓に及んでは、則ち一たび手を挙げて而して7)マリ転(マリノ如クコロゲ)、飴鳥黏(アメノ如クツク)す、何ぞ理を講じ法を説くに有らん乎哉。嗚呼客の妓を招く者太だ多し矣。技を聴く者有り、豪を8)かす者有り、酒を勧むるが為にする者有り、人を饗するが為にする者有り。何ぞ必ずしも人々の転を楽む者已ならん哉。而して今之を反覆論説する者は則ち淫を9)へ蕩を10)くの意に非ず。蓋し柳橋今日の盛を致す所以の者は即ち是れ転の一字に頼る耳矣。故に其の盛を記すれば則ち転の論説審にせざること能はざる也。読む者嘲ること莫くして可なり矣。



6) セツヨウ=折腰。意外な難語でしょう。文字通りは「腰を曲げる」の意味ですが、転じて、他人に頭を下げて物をねだるといった意味が派生。「こしをおる」とも訓読する。

7) マリ=毬。表面が毛で球状に包まれたまり。音読みは「キュウ」。毬子(キュウシ=打毬、蹴鞠に用いるまり)、毬杖(キュウジョウ=槌形の杖に色糸をまきつけた物、また、それで、木製の毬を打ち合う遊戯、毬打=キュウダ=)、毬灯(キュウトウ=球形の提灯)。栗の「いが」の訓みもある。

8) 燿かす=かがやかす。目だつようにかがやかす、ひけらかす。音読みは「ヨウ」。燿日(ヨウジツ=ぎらぎらと日光にかがやく、照りかがやく太陽)、燿徳(ヨウトク=徳をめだつようにかがやかす)。

9) 誨へ=おしへ。「誨える」は「おしえる」。物事をよく知らない者をおしえさとす。音読みは「カイ」。誨淫(カイイン=みだらなことを教える)、誨化(カイカ=おしえさとして感化する)、誨言(カイゲン=わからない者におしえさとすことば)、誨示(カイシ=わからない者におしえ示す)、誨諭(カイユ=わからない者におしえさとす、教誨=キョウカイ=、訓誨=クンカイ=)、誨誘(カイユウ=わからない者におしえさとして、良い方へ導く)。

10) 誘く=おびく。おびきだす、そそのかしてさそいだす。誘騎(ユウキ=敵をおびき出すための騎兵)、誘進(ユウシン=さそいおしすすめる、人を登用するように勧めること)、誘然(ユウゼン=しらずしらずのうちに何かにひかれるさま、自然の原理に無心に従うさま、美しさに誘われるさま)。



況んや、第一級品の上玉からは一枚も二枚も落ちる、客に媚びる芸者ならゲットするのは簡単だ。坂を転げ落ちる毬のように、水飴に絡まっ身動きの取れない鳥のようにたやすいのである。ちなみに、「黏」は「粘」の異体字です。柳橋にやってきて芸者を呼ぶ客は多い。芸を楽しむため、自らの威勢を誇示するため、酒を飲むため、人を接待するため。その理由は千差万別有れど、いま私が縷縷、柳橋芸者の攻略法を説いてきたが、男性諸氏に決して助平な所作振る舞いを煽り立てるのが狙いなのではないと付記しておかねばならない。柳橋という花街がどうしてこんなに繁昌しているのか?その理由を探ってみると、この「芸」を售っていた芸者が「色」も售るようになったという「転」が最大のファクターであることを想起してほしいからである。こんなことを事細かに書く私のことを見下してほしくはないものである。

最後のくだりはやや云い訳がましい響きもあります。何だかんだと言っても、「お堅かった柳橋芸者も最近では色を售るようになっているから、遊びたい御仁はどんどんいらっしゃいな。金があれば勿論大丈夫だが、縦令なくとも、才や貌でなんとかなるさ。いや、それらがなくとも頑張ればあの芸者この芸者もゲットできるかも知れないよ。さあさあ、寄ってらっしゃい、遊んでくださいまし。いま、江戸で最も刺激的な街。それが柳橋だよ~」――。って宛も風俗ライターよろしく業界(この場合は柳橋関係者)寄りの宣伝文をしたためていると言われても反論はできませんよね。これを読んだ男どもが何人もが我も我もと挙って柳橋に通ったであろうことは想像に難くないですな。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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