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その繁昌の秘密は河川交通の要衝という地の利=「柳橋新誌」(2)

成島柳北の「柳橋新誌」(岩波文庫、塩田良平校訂)本編のスタートです。初編の劈頭は、柳橋という地名の由来とその位置や地勢的な特徴などが書かれています。地名が多く登場するので地図でも見ないとすっと頭には入りませんが、一分だけ載せておきます。その「序」で寺門静軒の「江戸繁昌記」に範を取ったとありましたが、岩波文庫の解説文には「文体は漢文を以て綴り、之に戯訓を施した」という特徴があると指摘しています。これは、「江戸末期の狂詩、漢戯文の長技ともいふべき文体」であり、その狙いは「鬼面人を威す類の固苦しい漢字に配するに、凡そそれとはかけ離れた下俗な口語を以てした所にあり、その矛盾観が却つて滑稽を呼ぶのである」とあります。具体例を見てもらえば分かりますが、岩波文庫では左側のルビがその「戯訓」です。弊blogでは(  )内の片仮名で示しました。例えば、往昔と書いて「オウセキ」と読みながら、「ムカシ」とも訓むがごときです。結構長めの訓読で面白いのもありますよ。


橋、柳を以て名と為して而して一株の柳を植へず。旧地誌に云ふ、其の柳原の末に在るを以て1)くと焉。而して橋の東南に一橋有り、傍に老柳一樹有り、人呼んで故柳橋(モトヤナギバシ)と為す。或ひと云く、其の柳橋有れば則ち往昔(ムカシ)の柳橋にして、而して今の柳橋は則ち後に架(カケ)して其の名を奪ふ者と。其の説地誌と齬(チガフ)す焉。按ずるに故柳橋(モトヤナギバシ)の正称は難波(ナニハ)橋と曰ふ。而して知る者少し矣。2)彼此錯考するに則ち地誌の説当れるに似たり。夫れ柳橋の地は乃ち神田川の3)インコウ也。而して両国橋と相距る僅に数十弓(ケン)のみ。故に江都4)シュウシュウの利、斯の地を以て第一と為して遊舫飛舸(ヤネフネチヨキ)最も多と為す矣。其の南日本橋八町渠(ホリ)芝浦品川に赴く者、北浅草千住墨陀橋場に向ふ者、東は則ち本所深川柳島亀井戸の来往、西は則ち下谷本郷牛籠番街の出入、皆此を過ぎざる者無く、五街の娼肆に遊び、三場の演劇(シバヰ)を観、及び探花(ハナミ)泛月納涼賞雪の客も亦皆水路を此に取る。故に船商(フナヤド)の戸舟子(センドウ)の口5)セイラの如く雲竜の如く、他境の及ぶ所に非ずして、釣艇(ツリブネ)網舸(アミフネ)の徒(ヤカラ)亦其の間に居る。橋の東西より両国橋の南北に連つて、各戸(イヘイヘ)の舟舫舳艫(ミヨシトモ)相6)フクみ、楫櫂(カヂサホ)相撃ち、其の数幾千艘なるを知らず。而して盛夏の候(コロ)、遊客7)の如く至り、揺揺として泛び去り、日夕は一葉(ソウ)の岸に横はるを見ず、盛なりと謂ひつ可し矣。




1) 命く=なづく。「命ける」は「なづける」。名をつける、命名する。

2) 彼此=かれこれ。いろいろと、とやかく。日本訓みです。音読みなら「ヒシ」ですが「かれとこれ」と意味が異なる。

3) インコウ=咽喉。のどぶえ、転じて、のどのように大事な部分。要衝。

4) シュウシュウ=舟楫。舟とかい、舟のこと。転じて、「天子の政治を助ける臣下のたとえ」の意もあります。むろん、ここは前者の意。

5) セイラ=星羅。星のように散らばっていること。星布(セイフ)ともいう。「綺羅星の如し」(キラほしのごとし・キラぼしのごとし=立派な人が大勢、晴れやかに居並ぶ様子)から派生した言い方でしょうか。「星~」の熟語は、星隕(セイイン=聖人や賢人・将軍の死ぬこと、星落=セイラク=)、星火(セイカ=物事の急なことにたとえる)、星漢(セイカン=天の川、銀河)、星行(セイコウ=朝早く、星の出ているうちに出発する)、星散(セイサン=星が分布するように四方に散らばっていること)、星使(セイシ=天子の使い、勅使)、星辰(セイシン=星)、星霜(セイソウ=年月、恒星は一年で天を一周し、霜は毎年降るのでいう)、星斗(セイト=北斗七星、転じて星のこと)、星妃(セイヒ=織女星)、星芒(セイボウ=あわい星の光)、星楡(セイユ=沢山の星のこと、楡の木が天に植えられているように見えることから)、星流(セイリュウ=星の流れるようにすみやかに行くこと)。

6) フクみ=銜み。「銜む」は「ふくむ」。口にくわえる。「舳艫相銜む」(ジクロあいふくむ)は成句で「舟のへさきとともが前後に連なるように、船隊が列をなして進むこと」。

7) 麋=おおじか。音読みは「ビ」。糜沸(ビフツ=世の中が騒ぎ乱れる)、麋鹿(ビロク=トナカイとシカ、世の中の俗事に心を煩わされず、自分の思う通りに静かな生活を送ることにたとえる、蘇軾の「赤壁賦」にも「侶魚蝦而友麋鹿」がありました)。



柳橋の名は、柳の木があるからではないという。実は一株もない。その由来は「柳原」というところがあって、その「末」、つまり「端(はし)」にあることだと地誌にあるといいます。諸説あるようですが、これが正しいらしいと柳北はみています。

神田川の要衝にあり、隅田川にもつながっている。このため、「遊舫飛舸(ヤネフネチヨキ)最も多と為す」という。つまり、大小さまざまな舟が舫う所だという。「チヨキ」は「猪牙船」のこと。ひとり乗り、あるいは二人乗りの小型舟。吉原の遊び客の足として盛んに用いられた。南は「日本橋八町渠(ホリ)芝浦品川に赴く者」、北は「浅草千住墨陀橋場に向ふ者」、東は「則ち本所深川柳島亀井戸の来往」、西は「則ち下谷本郷牛籠番街の出入」という風に四方八方、大きな街へとつながっており、柳橋を通過していく。要は人が集まるところです。遊びを楽しむ人もみんなここに舟に乗って集まってくる。遊客の足となる舟だまりになっており、日中は一隻も見えないほどあちこちに出回っている。やはり、この地の利が大きい。人が集まれば自然と遊び場ができる、遊廓もできる。これはいつの世も同じこと。

しかし、どうですか?マニアックでしょ。これでもかというほどに柳橋のことを詳述しています。このあとどこまで突っ込んだらいいか思案投げ首ではあります。繰り返しますが、全文は掲載しませんのでご了承ください。やはり遊女、芸妓の生態が興味深いでしょうなぁ~。。。。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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