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ジンカン到るところセイザンあり=長恨歌7

 白居易の「長恨歌」シリーズもいよいよ最終回です。最後は楊貴妃が玄宗皇帝に伝言するのと、昔のシーンを回想します。もちろん、二人の愛が永遠であることを誓うのです。それにしても、やはり120行は長いですね。


101 情を含みを凝らして君王に謝す

102 一別オンヨウ両つながら渺茫

103 昭陽殿裏恩愛絶え

104 蓬萊宮中日月長し

105 頭を廻らして下ジンカンを望む処

106 長安を見ずしてジンムを見る

107 唯旧物を将って深情を表わし

108 デンゴウキンサイ寄せ将ち去らしむ

109 釵は一股を留め合は一扇

110 釵は黄金をき合は鈿を分つ

111 但だ心をして金鈿の堅きに似しむれば

112 天上人間会ず相見えん

113 別れに臨んで殷勤に重ねて詞を寄す

114 詞中に誓い有り両心のみ知る

115 七月七日長生殿

116 夜半人無く私語の時

117 天に在りては願わくはヒヨクの鳥と作り

118 地に在りては願わくはレンリの枝と為らんと

119 天長く地久しきも時有りて尽く

120 此の恨みは綿綿として尽くる期無からん


 101 「睇」は1級配当訓み問題=「ひとみ」。これは宛字っぽい。音読みは「テイ」で「ぬすみみ・る」「ながしめ」「よこめ」とも訓む。視線を低く下げる、転じて、下を向いて盗み見ること。つまり、伏し目ですね。「睇眄」(テイベン)、「睇視」(テイシ)。
 太真こと楊貴妃は皇帝への思いを込めて、じっと瞳を凝らして、伏し目がちに感謝の言葉を述べた。

 102 「オンヨウ」は常用漢字書き問題=その後に「両つながら」(ふたつながら)とあるので、「オン」と「ヨウ」は二つの存在で対を為していることが分かります。同音異義語には「陰陽」「温容」。「陰陽」は対を成していますが、果してこの場合は意味がふさわしいでしょうか?「温容」はあたたかな顔つきのことで、対は成していないが、「容」は当て嵌まりそうです。「容」と対を成すと言えば…、正解は「音容」。音と形。つまり、皇帝の声と顔のこと。「渺茫」(ビョウボウ)はいずれも1級配当ですが既出ですね。はるか彼方にあるさま。「眇芒」でもOKですが、オウジビョウボウは「往事渺茫」であることに再度注意しましょう。
 あの馬嵬のお別れ以来、みかどのお声もお姿も、どちらもはるか彼方のものとなりました。ここから太真こと楊貴妃が使者に託した伝言が始まります。「112」まで。

 103 「昭陽殿」(ショウヨウデン)は、漢の成帝が愛人の趙飛燕(チョウヒエン)姉妹に賜った宮殿。ここは楊貴妃が玄宗皇帝と愛を交わした宮殿のことを言う。「恩愛」(オンアイ)はたっぷりとみかどから受けた愛情のこと。たっぷりです。いろいろです、エロエロです…。
 あの愛に満たされた日々がお懐かしゅう思いますが、はるか遠い昔の話でございますね。。。

 104 「蓬萊宮」(ホウライキュウ)=「蓬萊」は、古代中国で東の海上にある仙人が住むといわれていた五神山(仙境)の内の一つとされている。そこにある仙人が住む宮殿のこと。太真となった楊貴妃がまさに今生活している場所のことです。「103」と「104」は見事な対句ですね。
 この蓬萊宮で日がな一日くらしておるのでござます。

 105 「ジンカン」は書き取り問題=「霞が関」にいる人にとって「ジンカン」と言えば人事院勧告の略にしか聞こえませんが、長恨歌の唐代には、んなものあるわけない。仙界から「ジンカン」を望むというのですから、正解は「人寰」。人間界のことですね。「寰」は1級配当で「まるい大空におおわれた世界。また、ある範囲の中の地。わく内の地」。「仙寰」(センカン)、「寰宇」(カンウ)、「寰内」(カンナイ)、「寰区」(カンク)、「寰海」(カンカイ)、「寰中」(カンチュウ)。一方、「ジンカン」には「塵寰」もあり、こちらはけがれた世の中、俗界のこと。「塵世」(ジンセイ)、「塵界」(ジンカイ)、「塵境」(ジンキョウ)、「塵俗」(ジンゾク)ともいう。「塵」で始まる1級坡塘絡みの熟語は多くて、「塵埃」(ジンアイ)、「塵穢」(ジンアイ)、「塵涓」(ジンケン)、「塵囂」(ジンゴウ)、「塵滓」(ジンシ)、「塵氛」(ジンフン)、「塵謗」(ジンボウ)、「塵鞅」(ジンオウ)。
 また、注意すべきは「人間」も「ジンカン」と読むケースがあるということです。人の住む世の中、世間という意味がそれです。もちろん普通に「ニンゲン」とも読めるので問題には出にくいところですが。。。有名な成句である「人間到処有青山」(ジンカンいたるところセイザンあり)は、世間にはどこで死んでも骨を埋めるさわやかな山があるので、故郷を出て大志を抱いて活躍すべきだということ。江戸時代末期の僧侶で詩人、釈月性の「将東遊題壁」という詩から。単なる大志だけではなく、国防という憂国の思いが刻まれています。やはり、ここは「ニンゲン」とは読みたくないですね、「ジンカン」がふさわしい。このあと「112」でも出てくる。
 「頭」は「あたま」ではなく「こうべ」と訓んでほしい。

 106 「ジンム」は書き問題=前の行の流れから「塵霧」はすぐ浮かびますね。霧のように立ち籠めるちり・ほこり。「塵務」もあるが、こちらは「世間日常のつとめ、世間で生活するときにしなければならない煩わしい事柄のこと」。

 107 「将って」は稍難しい表外訓み問題=「・って」。宛字っぽい。通常は「以て」「用て」でしょうね。「旧物」は、皇帝から賜った記念の品々のことを指す。

 108 「デンゴウ」は見慣れない書き問題=なかなか浮かびませんが、皇帝から貰った思い出の品の一つです。きらびやかな宝石の類だということは分かると思いますが「デンゴウ」浮かぶか?正解は「鈿合」(鈿盒)。螺鈿細工の小箱のことです。この場合の「合」は「ふたのある器」で「盒」とも書く。「盒」は「ふた」「ふたもの」「さら」と訓み、「飯盒炊爨」(ハンゴウスイサン)。「鈿」は1級配当で「かんざし」「かざ・り」とも訓む。「鈿瓔」(デンエイ)、「鈿車」(デンシャ)、「鈿針」(デンシン)、「鈿螺」(デンラ)。
 「キンサイ」も書き問題=これも浮かびにくいですが、貴重なものといったら、「金」でしょう。問題は「サイ」。1級配当漢字を羅列すると「洒」「倅」「豺」「崔」「淬」「猜」「釵」「焠」「靫」「摧」「寨」「綵」「蔡」「儕」「縡」「賽」「顋」「鰓」「灑」「纔」。この中に答えはあります。この中から楊貴妃が皇帝から貰ったようなものと言えば、「靫」「綵」「釵」くらいか。「靫」は「ゆぎ」「うつぼ」、「綵」は「あや」「あやぎぬ」、「釵」は「かんざし」。もうこれ以上引っ張るのはやめましょう。正解は「金釵」です。金のかんざし。何度も取り扱っている漢字ですね。

 109 「一股」(イッコ)は、一つのかんざし。「股」はかんざしの足を数える単位詞。かんざしは髪に差すため二股に岐れていますよね。「一扇」(イッセン)は、箱の蓋を数える単位詞。

 110 「擘き」は1級配当訓読み問題=「・き」と訓む。「裂く」と同義ですが、ちょっと難しいか。「擘」は「ハク・ヘキ」。「おやゆび」「つんざ・く」とも訓む。熟語は「巨擘」(キョハク)、「擘裂」(ハクレツ)、「擘張」(ハクチョウ)、「擘画」(ハッカク=擘劃)、「擘指」(ヘキシ)=親指。「さく」はほかに「刳く」「磔く」「炸く」「撕く」「拆く」「屠く」「劈く」「析く」「剖く」などがあるので、訓めるようにはしておきましょう。
 かんざしは黄金の部分を剝がし裂いて、小箱の蓋から螺鈿の部分を切り離しました。何のためかというと…

111 みかどと私の心が、本来は一つであるのですが、この黄金や螺鈿のように堅固な結びつきがあれば…

 112 「人間」は訓み問題=既出です。「ニンゲン」ではなく「ジンカン」と訓もう。「会ず」は特殊表外訓み問題=漢文訓読では「かなら・ず」と訓む。
 天上界であれ人間界であれ必ず屹度、再びお会いすることができるでしょう。ここまでが太真こと楊貴妃が使者に託した伝言、言葉なのです。

 113 別れ際に、さらにねんごろに伝言を付け加えた。

 114 「この言葉の中の誓いは、二人の心だけが知っているのです」。

 115 「長生殿」(チョウセイデン)は、驪山(リザン)の離宮にある宮殿のこと。ある年の七月七日、長生殿での出来事です。楊貴妃が「往事」、いや「房事」か、を振り返っているのです。

 116 夜も更けて二人きりのとき、みかどはこっそりとおっしゃいました。

 117&118 この2行はセットで。「ヒヨク」「レンリ」は御馴染み書き問題=ノータイム。「比翼連理」で四字熟語にもなっている。「比翼鳥」は、雌雄それぞれ一目一翼で、常に二羽一体となって飛ぶ鳥、「連理枝」は、幹は二本で、枝が一つになっている木。この二つを合体させて、「男女の情愛が深く、仲睦まじいことのたとえ」。1級配当の類義語には「関関雎鳩」(カンカンショキュウ)、「偕老同穴」(カイロウドウケツ)がある。
 「天上界では比翼の鳥となって飛び、地上界では連理の枝となって愛をかわしたものじゃ」と。

 119 天と地は長く久しいものであるとしてもいつかは崩れるものです。

 120 しかし、みかどと楊貴妃の二人の愛の恨みはいつまでも長く絶え尽きることはないのであります。


 120行が終わりました。石川忠久氏の解説に拠りましょう。

 「長恨歌」は、発表当時からその美しい物語性と平易さから大いに流行し、長安の妓女たちは「長恨歌」を暗唱できることを一つの売りものとしたという。また劇的要素に富む「長恨歌」は、特に後世の戯曲に大きな影響を与え、元の白樸(ハクボク)の「梧桐雨」(ゴトウウ)、清の洪昇(コウショウ)の「長生殿」(チョウセイデン)などの名作を生んだ。「長恨歌」の流行は海外にも及び、わが国の文学にもあらゆるジャンルにわたって影響の跡が見られる。
 特に「源氏物語」には構想表現の面で深い文学的影響を与えていることが知られている。また、「和漢朗詠集」には、合計八句が引かれている。(以上、「漢詩鑑賞事典」P441~442)

 本日は以上です。せっかくの「長恨歌」ですから、これで終わらせるのは勿体無いですね。次回以降も引き続き、「長恨歌」を用いた漢字学習を続けま~す。

【今日の漢検1級配当漢字】

睇、眄、嵌、渺、茫、眇、芒、嵬、趙、寰、埃、穢、涓、囂、滓、氛、謗、鞅、稍、鈿、盒、爨、瓔、洒、倅、豺、崔、淬、猜、釵、焠、靫、摧、寨、綵、蔡、儕、縡、賽、顋、鰓、灑、纔、擘、刳、磔、炸、撕、拆、屠、劈、驪、雎、偕、樸

【今日の配当外漢字】

なし
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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