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ごろにゃ~ん。。。怪しげな猫撫で声には気をつけろ!!=「猫々奇聞題言」(3)

成島柳北の「猫々奇聞題言」シリーズの3回目です。柳北によれば、仮名垣魯文の「猫々奇聞」は「猫」の妖術を映し出す「照魔ノ明鏡」だと言います。そして、その妖術に籠絡される「鼠」と揶揄されたのは哀れな、悲惨な男たち。金品を毟るだけ毟り取られて食われてしまう。そんな恐~い猫の正体は、もうお分かりですね。


抑モ古来猫ヲ陰物トシテ、其ノ名モ亦婦女ニ13)ヒッスルハ太ダ奇ト謂フ可シ、埤雅云フ猫ハ14)タンボ目15)セイ皆円ナリ、午ニ及ベバ即チ16)ショウレンシテ線ノ如ク、其鼻端ハ常ニ冷ナリ、猫ハ陰類ナレバ也ト、而シテ猫ニ女奴ノ名有リ雲姑ノ称有リ、張搏ノ愛猫ハ錦帯ト号セリ、焉ンゾ知ラン纏頭ノ金以テ之ヲ大丸ノ17)ホトウニ買フ糸錦ト同種類ナリシヲ、若シ夫レ其ノ目セイヲシテ線ヨリ細カラシメ、18)キョウテイ以テ媚ビヲ呈シ、人ノ膝上ニ向テ19)ハジョウシ来ルニ当テハ、20)クドンモ覚エズ善哉々々ノ嘆ヲ発シ、21)センジモ或ハ肉味ヲ知ラザルニ至ラン耶、




13) ヒッする=匹する。くらべて並び立つこと、匹敵すること。「匹」は「たぐい」とも訓み、「一対を為す相手」から転じて、くらべることを意味する。匹雛(ヒッスウ=一羽のひな鳥)、匹合(ヒツゴウ=並び合う、似た者同士が組になること)、匹儔(ヒッチュウ=連れあい、仲間、相手、匹儕=ヒッサイ=)、匹馬(ヒツバ=一頭の馬)、匹偶(ヒツグウ=連れあい、配属、ペア、匹耦=ヒツグウ=)。

14) 旦暮=タンボ。夜明けと日暮れ、朝夕。夜明けも暮れもたえず。≠田圃。

15) セイ=睛。(すみきった)ひとみ。画竜点睛(ガリョウテンセイ)は「晴」と間違えやすいので要注意です。

16) ショウレン=従斂。難語。ゆるんでおさまること。縮んで小さくなること。「斂」は「あつめる」「おさめる」「しまる」の訓みがあります。ここの「従」は「縦」と同義で「ゆるむ」の意。斂眉(レンビ・まゆをおさむ=両眉を寄せて顔をしかめること)、斂足(レンソク・あしをおさむ=恐れて足が進まないさま)。

17) ホトウ=舗頭。店。ここは大丸百貨店。「舗」も「みせ」の意。舗錦(ホキン=錦をつらねる、転じて美辞麗句を並べたてるたとえ)。≠蒲桃、逋逃。

18) キョウテイ=嬌啼。ごろにゃ~ん。嬌声(キョウセイ)が芸妓・遊女が媚を銜んだ声ですから、まさに「猫撫で声」と訳してもいいでしょう。≠協定、筐底、驚霆、競艇。

19) ハジョウ=爬上。これも難語。ツメを立てて上に乗ってくること。「爬」は「手でひっかく」。「はう」の意もあり、「手と足とで地面をかくようにしてあるく、ヘビや虫などのあゆみ」。爬行(ハコウ=はっていく)、爬痒(ハヨウ=かゆいところをかく、掻痒=ソウヨウ=)、爬羅剔抉(ハラテッケツ=かき集めてえぐり出す、人がかくしている悪事を暴く、かくれた人材を広く探しもとめ用いること)。「爬」は「爪をおしあてるさま」をあらわす漢字です。≠波状。

20) クドン=瞿曇。釈迦のこと。梵語のGautamaの音訳。ゴータマ。

21) センジ=宣尼。孔子のこと。漢の平帝のときの、孔子の諡である「褒成宣尼公」に由来する言い方。孔子は歴代王朝の帝からさまざまな諡をもらっている。瞿曇も宣尼もあえて書き問題にしましたが、むろん書ける必要はなく、読めればいい。さらに、これらを見たときに誰を指すのか瞬時に意味が分かるようでなければなりません。ここでは仏教と儒教の総大将を持ちだして、どんな宗教でも哲学も通じないという揶揄なのですから、これらの意味が分からないと意味がないのです。



冒頭のくだりにある「古来猫ヲ陰物トシテ、其ノ名モ亦婦女云々」は易経の陰陽思想に基づくものと思われます。自然界の一切の事物を、柔順的な「陰」と剛健的な「陽」の二つに配されるとされ、母や女、夜などは「陰」であり、そして、猫も。。。次にある「埤雅」(ヒガ)とは、北宋末の官僚、陸鈿(1042~1102、あの陸游の祖父)が撰した百科事典。動物に限らず、あらゆる生物の生態特徴を記している。一度目を通してみたい。そこには猫の生物としての特徴が誌されており、そのひとみは朝晩は円らであるが、日中は線のように細いという。鼻の頭は二六時中冷たい。

「雲姑」は未詳。「張搏ノ愛猫」もよく分かりませんが、その猫の名は「錦帯」という。まるで大丸百貨店で買う糸錦と同じだと冷やかしているのが面白い。その金の出所はもちろん、男からせしめた「纏頭」だという。日中の細いひとみをさらに細めて、猫撫で声で男に近づき、膝に手を掛け撓垂れて頼みごとをすれば、たとえ釈迦も孔子もイチコロだと柳北は言っています。

「たぁ~さん、今度、新しい帯作りたいんだけどぉ~。一緒に大丸に行ってくださいましなぁ。そのあとゴハンでも食べてぇ。そのあと、ウフフフ……」

そんな猫撫で声を出す猫の正体、そう、それは媚を売るのが商売のあそびめたちです。傾国に至らしめる可能性さえ秘めている危険な存在。仮名垣魯文の「猫々奇聞」はそんなあそびめたちの実態やスキャンダルを暴いて、明治政府高官をはじめとする地位も名誉もある世の男どもに「気をつけろ~」と警鐘を鳴らしているというのです。
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2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
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