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操よ操よ何処へ逝く?何処にも往かぬ何時も居る=「節婦阿多誉ノ伝」(下)

成島柳北の「節婦阿多誉ノ伝」の後半です。「金太郎飴」のように何処を切っても同じ顔を出す、そんな「節操」を変えない「阿多誉」こそ、女性の鑑だという柳北。所詮、飴は飴であって人間は飴のようにはいかないと思うのですが、昨今の婦人たちの行動たるや、余りにも外見を気にして扮りたてて装い、自分を安く売る人の多いことに、半ば呆れ半ば危機感を募らせ、もっと阿多誉のような婦人になれと言いたいのでしょうか。


「節婦阿多誉ノ伝」(下)  (近代デジタルライブラリー「柳北全集」から)

抑此阿多誉ハ今功徳ヲ府下ニ鳴ラセル阿加誉ノ親族ナルカ、何ゾ其レ功徳ノ7)カンゼンス可キ無キヤ、我レ8)ホウコン世間ノ風俗ヲ視ルニ人家ノ嬢子9)ケイチョウ蕩逸ニシテ、娼妓ノ態度ヲ学ビ俳優ノ打扮ヲ慕ヒ、而シテ父母ニ順ナラズ兄弟ニ友ナラズ、其醜行見ルニ堪ヘ難シ、甚シキニ至テハ自ラ甘ンジテ歌妓トナリ10)ガイショウトナリ地獄トナル、今日ハ富商ノ11)ショウセイ明日ハ官吏ノ側室、千変万化一去一来、12)チンセキヲ人ニ薦ムル宛モ器ヲ人ニ貸スガ如シ、嗚呼甚矣哉、而シテ父母モ咎メズ親戚モ諫メズ、其夫トナリ客トナル者素ヨリ其13)インイツヲ喜ビ其14)ケイフヲ楽シム、嗚呼天下婦女ノ徳実に15)カイラン極マレリ、然ラバ則チ彼ノ阿多誉ノ如ク能ク一ニシテ変ラザル者、豈録シ伝ヘザル可ケンヤ
野史氏曰ク、世ノ婦女若シ己レノ行ヲ慎ミ己ノ操ヲ守ラント欲セバ、必ズシモ読ミ難キ列女伝ヲ窺フニモ及バズ、一銭ヲ投ジテ阿多誉ヲ買ハバ以テ婦徳ノ16)キカンヲ得可シ、而シテ能ク其味ヲ玩ハバ彼レガ如ク誉多キ婦人ニナルモ難キコトハ非ジカシ




7) カンゼン=間然。すきまを指摘する、疑わしいところや欠点をとりあげて非難すること。
この「間」は「すきま」の意。間断(カンダン=あいだがとぎれて、絶え間や切れ目ができること、切れ目)、間言(カンゲン=人を非難して仲をさくことば)。

8) ホウコン=方今。いま、現在。「方に今」(まさにいま)の意。

9) ケイチョウ=軽佻。落ち着きがなくて軽はずみなこと。「軽佻浮薄」(ケイチョウフハク)でこれを略して「軽浮」(ケイフ)が同義語。軽窕(ケイチョウ)とも書く。「佻」は「軽はずみ手うわついているさま」。「篤」「厚」が対義語。佻巧(チョウコウ=軽薄で、外面だけうまく取り繕うこと)、佻然(チョウゼン=かるがるとしていて、すばやいさま)、佻佻(チョウチョウ=ひとり離れていくさま、軽薄で苦労も分からないさま、ひとりで憂い悩むさま)。

10) ガイショウ=外妾。本宅以外にかこっておくめかけ。「妾」は「めかけ」。↓と同義。

11) ショウセイ=小星。正妻に対して、妾の称。「小さい星」と控えめなところが「日陰の女」っぽくていじらしい表現ですね。詩経に見えるれっきとした漢語です。このまえの「外妾」、このあとの「側室」のほか「権妻」も類義語。「外」とか「小」とか「側」とか「権」とか、いずれも二番手、準メイン、都合のいい男の「本質」が滲み出ている言葉ですね。いすれもあまり響きのいい言葉ではない。

12) チンセキ=枕席。まくらと敷物、転じて、寝具を指す。男と寝ること。

13) インイツ=淫佚(淫逸)。度を越えてみだらなことにふけること。淫湎(インメン=酒色にふける)、淫猥(インワイ=下品で、みだらなさま)、淫蕩(イントウ=酒色にふけってだらしがない)、淫溺(インデキ=物事にふけってやめられなくなること)、淫巧(インコウ=程度を越えてはなはだしく飾ったやり方)、淫哇(インアイ=みだらな気持ちをそそるような音楽)、淫雨(インウ=とめどなく降り続く雨、ながあめ、淫霖=インリン=)。

14) ケイフ=軽浮。↑「軽佻浮薄」の略。≠畦夫、荊婦、荊布、系譜、継父。

15) カイラン=壊乱。秩序など、整っている事柄をこわして乱す、また、こわれて乱れること。壊爛ならば、「組織がこわれてくずれてしまうこと」の意。

16) キカン=亀鑑。てほん、模範。亀鏡(キキョウ)ともいう。吉凶を占う亀甲と、物を照らして見せる鑑(かがみ=鏡)とは、ともに人の模範となることからいう。「亀~」の熟語では、亀胸(キキョウ=高く突き出ている胸、はとむね)、亀玉(キギョク=カメの甲と玉、貴重なもののたとえ)、亀甲(キコウ・キッコウ=カメの甲、六角形をつなぎあわせたような模様)、亀紫(キシ=黄金の印と紫の印綬)、亀筮(キゼイ=占いに使う、カメの甲と筮竹、それを用いた占い、亀策=キサク=)、亀紐(キチュウ=カメの形をきざんだ印のつまみ、亀鈕とも)、亀鼎(キテイ=天子の位のたとえ)、亀背(キハイ=カメの甲、背中が曲がって小さい人)、亀趺(キフ=カメの甲に刻んだ、石碑の台石)、亀鼈(キベツ=カメとスッポン、人を卑しめて言う侮蔑語)、亀卜(キボク=カメの腹甲に熱を加えて行う占い、熱を加えて甲にあらわれたひびの模様で、吉凶を判断する、亦の名を「ふとまに」、中国殷代から始まったとされる)、亀竜寿(キリョウのジュ=人の長寿を祝うことば)、亀齢(キレイ=カメの年齢、転じて非常に長い寿命)、亀手(キンシュ=こごえてひびのきれた手、かめのこ模様の亀裂の生じた手を解すれば「キシュ」と読んでもOK)、亀裂(キンレツ=手足のひびぎれ、あかぎれ、「キレツ」と読めば、カメの甲羅に熱を加えてできたさけめに似たひびわれ)。



柳北が見る昨今の「世間ノ風俗」の「嬢子」(=若い女性)の行動の特徴はこうです。軽はずみで締まりがない。遊女の媚を売る姿態を手本として、あやしげな女優の「打扮」(ダフン)=「おしゃれ、メーキャップの意。中国語でしょう。「扮装」と同義か」を真似する。父母に従順ならず、兄弟に親しまない。見るに堪えない醜い立ち居振る舞い。。。。この辺はさすが旧奥儒者の柳北らしい記述ですね。剰え、(真似るにとどまらず)うたいめ、おめかけに成り果てて、自ら地獄に至る始末。きのうは金持ち商人の二号かと思えばあしたは政府高官の傍に寄り添い、自由自在の軽いこと。一緒に寝るのもまあ軽いこと軽いこと。恰も物の貸し借りをするかのよう。そんな娘を見て見ぬふりの家族に親戚。何も言わない、言えません。客や夫の男どもは固よりその淫乱な性格が大好きで(それは柳北はん、あなたでっしゃろ?とツッコミ入れる)、ああ、婦女の美徳はどこへ行く~。。。

だから「阿多誉」のように「一ニシテ変ラザル者」を皆さんにお伝えする責務がわたしにはあるのだという。どうしたらそんな婦人になれるのか。古来名高い婦人を集めた難解窮まり無き「列女伝」を読むよりも、一銭を払ってこの阿多誉の飴を買ってごらんなさい。嘗めてごらんなさい。さあ、貴女も立ちどころに、節度を持った、操を失わない阿多誉になれること請け合いなり~。

って、これ単に「阿多誉」飴の宣伝広告に加担しただけってことはないですよね。飴を持ちだして節婦になれと言われても今一つ説得力に欠けるきらいが感じられるのですが。比喩的におっしゃりたいことは分かりますがね。要は、明治初期も二十一世紀の現代も実は人間自身は何の進歩も無いし、いや、進歩しようもないということですわ。技術や物質的な発展と、人間の本質は別だということ。ここを錯誤すると、とんでもない方向に人類は歩むような気がします。

いまさら儒教の教えをまんま当て嵌めようとはさらさら思いませんが、儒教という教えがあって、その教えが一定の効果を上げ、しかし、永続的には牛耳きれなかったという歴史を改めて認識しておくのは必要なことでしょう。婦人の節度に限らず、人間の本質は古来何も変わらないのです。それが表に現れやすくなっているのかどうか、その違いだけ。明治も平成も同じなのです。柳北のいささか強引かつ牽強付会かつ説得力に欠ける言辞を読んで改めて感じました。だから、どうせいとは何も言いませんし、言うことはできません。こうした現実を改めて認識できたことに意義があると考えています。

でもやっぱ柳北にこの話は語ってほしくなかったなぁ。。

あ~ら、どの口がおっしゃってますのかしら。あなたさまに言われたくないですわ、柳北先生。おほほほほ~。

って、もしも柳橋の芸妓に話した途端、即座に反撃にあいそうですもん。。。
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2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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