スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

金太郎飴宜しく何処を切っても同じ顔でなければならぬ=「節婦阿多誉ノ伝」(上)

江戸・柳橋や新橋の茶屋街で芸妓遊びを嗜んだ成島柳北ですが、意外や意外、その「女性観」は結構保守的なものだったようです。自分の放蕩は棚に上げて、女性には節操を持つべきことを称えました。凡そ遊冶郎・柳北らしからぬ「節婦」の理想像が「節婦阿多誉ノ伝」に見ることができます。例によって近代デジタルライブラリーの「柳北全集」から。本日は前半部分を味わいましょう。

「節婦阿多誉ノ伝」(上)

近来一個ノ隠君子アリ、1)コウメン2)ヘイイニシテ街上ニ往来シ、木魚ヲ叩キ口ニ阿保陀羅尼経を誦ス、五音ノ節ニ中リ三絃ノ調ニ合ヒ、其声洋々トシテ我耳ニ盈テリ、我謹デ其経ヲ聴クニ婦人阿加誉ノ美名、日々夜々木魚ト共ニ府下ノ3)シハクニ鳴レリ、而シテ吾ハ更ニ一個ノ節婦アルヲ世人ニ報ゼントス往昔ヨリ都下ニ飴売先生アリ東奔西走シテ飴ヲ売ル、飴ノ形円クシテ長ク中ニ一個ノ婦人アリ、其名ヲ阿多誉ト云フ、常ニ4)イイトシテ楽ムノ色アリ、先生手ニ小5)ショウヲ敲イテ謡テ曰ク、飴ノ中カラ阿多誉ガ莞爾笑テ飛ンデ出タヨ、市人買テ之ヲ見レバ阿多誉飴ノ中ニ欣々タリ、試ニ刀ヲ以テ之ヲ切レドモ亦阿多誉ノ面ナリ、之ヲ切リ之ヲ折リ、薄キ葉ノ如キニ至テモ亦同ジ阿多誉ニシテ、所謂百折千磨スレ共少シモ其操ヲ変ゼズ其節ヲ改メザル者、豈之ヲ貞節ノ婦ト云ザル可ンヤ、而シテ彼レ更ニ傲ルノ色無ク、常ニイイトシテ温柔ナル婦徳ヲ守ルノミナラズ、老ヲ養フテ能ク6)ガンイノ楽ミヲ保タシメ、幼ヲ憫ンデ能ク7)テイキノ苦ヲ救フ、(続)




1) コウメン=垢面。あかでよごれた顔、あかだらけの顔。「クメン」とも読む。蓬頭垢面(ホウトウコウメン=身だしなみが悪くむさくるしいようす)で用いることが多いが、「蓬髪垢面」(ホウハツコウメン)もある。弊衣破帽(ヘイイハボウ)は類義語。「けがら」「はじ」の訓読みもある。刮垢磨光(あかをけずりひかりをマす=人の欠点をけずりとって、知徳の光を発揮させる、人材育成のこと→韓愈「新学解」)、垢汚(コウオ=あかがついてよごれる、よごれ、垢穢=コウアイ)、垢脂(コウシ=あせやあぶらのよごれ、垢膩=コウジ=)、垢滓(コウシ=あかとかす、よごれたもの)、垢弊(コウヘイ=あかじみて、やぶれる、その着物)、垢離(こり=神仏に願い事を託する時、水を浴びて心身のけがれを取り去ること、水垢離、もと印度の風習)。
2) ヘイイ=敝衣。「弊衣」に同じで「いたんで破れた衣服」。「敝」は「やぶれる」の意。敝履(ヘイリ=破れた草履)、敝垢(ヘイコウ=やぶれたり、あかじみたりしていること)、敝人(ヘイジン=卑しい人、身分の低い人、自分の謙称)、敝腸(ヘイチョウ=くさったはらわた、邪心)、敝賦(ヘイフ=諸侯や大将が自分の国の軍隊を遜る言い方)。

3) シハク=市陌。まちなかの道。東西に走る小通り。「陌」は「みち」。街陌(ガイハク)・街路と同義。陌上(ハクジョウ=あぜ道のあたり、転じて農地)、陌阡(ハクセン=田畑の中のあぜ道、阡陌とも、「阡」は南北のあぜ道)、陌頭(ハクトウ=あぜ道のそば、道端、「はちまき」の意もある)。

4) イイ=怡々。心配事がなく、心穏やかになごむさま。「怡」は「よろこぶ」の意。怡悦(イエツ=なごやかなよろこび、また、よろこぶ、怡懌=イエキ=)、怡衍(イエン=よろこび楽しむ、怡予=イヨ=)、怡顔(イガン・かおをよろこばす=顔色をやわらげる、にこにこする)、怡然(イゼン=なごやかによろこび楽しげなさま)、怡暢(イチョウ=のんびりとなごむさま)。

5) ショウ=鉦。音楽で用いる打楽器の名。たたきがね。鉦鼓(ショウコ=打楽器、浅い皿形をしており、つりさげて叩く)。軍隊で用いた場合は「鉦」は「とまれ」の合図、「鼓」は「すすめ」。

6) ガンイ=含飴。あめを口に含むこと。老人がのんびりと隠居生活を送るさまをいう。「含飴弄孫」(ガンイロウソン)から来ていると思われます。

7) テイキ=啼飢。お腹がすいて泣き騒ぐこと。「啼」は「なく」。啼泣(テイキュウ=涙を流してなきつづける)、啼血(テイケツ・ちになく=血を吐いてなく、ホトトギスの鳴き声の悲痛なさまをたとえる)、啼哭(テイコク=大声でなく、なき叫ぶ)、啼痕(テイコン=なみだのあと)、啼粧(啼妝、テイショウ=化粧法の一つで、顔に白粉を塗って目の下の部分だけを薄く拭い取り、涙を流して憂えているように見せる狙い)、啼鳥(テイチョウ=鳥の鳴き声)。



日夜、「阿保陀羅尼経」を唱える隠君子の歌い文句の中に聞こえる「婦人阿加誉ノ美名」。「阿加誉」という名前が木魚の音と共に大阪中を席巻しました。「アカヨ」と響きの似た「アカヨ」、乃ち「阿多誉」という名の「節婦」が東京にいることを皆さんにお伝えしなければならないと柳北は言う。彼女は「飴ノ形円クシテ長ク中ニ一個ノ婦人アリ」。そう「飴」の中に居るという。

飴売りの歌い文句は「飴ノ中カラ阿多誉ガ莞爾笑テ飛ンデ出タヨ」。にっこり笑った阿多誉さん、飴の中から飛び出してきたよ。「試ニ刀ヲ以テ之ヲ切レドモ亦阿多誉ノ面ナリ、之ヲ切リ之ヲ折リ、薄キ葉ノ如キニ至テモ亦同ジ阿多誉ニシテ」。切っても切っても阿多誉の顔。切って折っても、薄く切っても同じ阿多誉。要するに金太郎飴です。

そして、柳北はそんな阿多誉が「所謂百折千磨スレ共少シモ其操ヲ変ゼズ其節ヲ改メザル者、豈之ヲ貞節ノ婦ト云ザル可ンヤ」と大絶賛。どんなに折っても摩っても節操を変えることのない、その姿こそまさに「貞節の婦人」と云うべきではないかといいます。そればかりか、老人が嘗めれば楽しい気分になるし、お腹を空かした子供が嘗めれば忽ち泣きやむこと必定。こんなに役に立つ女性はおりゃせんわい。称賛の嵐です。一体全体、柳北はどこまで真面目で、何を言いたいのでしょうか?次回をお楽しみに。。。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。