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吹く風に飄颻する「センベイ」とは…?=長恨歌6



 白居易の「長恨歌」シリーズの6回目です。楊貴妃に瓜二つの女性を発見しました。少なからず動揺する彼女の名は「太真」。ん?もしかして…、もしかすると…。


89 キンケツセイショウに玉を叩き

90 転じて小玉をして双成に報ぜしむ

91 聞道く漢家の天子の使いなりと

92 九華の帳裏ムコン驚く

93 衣をり枕を推し起ちて徘徊し

94 シュハク銀屛邐迤として開く

95 ウンビン半ば偏りて新たに睡りより覚め

96 花冠整えず堂を下りて来る

97 風はセンベイを吹いて飄として挙り

98 猶お霓裳羽衣の舞に似たり

99 ギョクヨウ寂莫として涙ランカン

100 リカ一枝春雨を帯ぶ

 89 「キンケツ」は1級配当絡みの書き取り問題(既出)=「金欠」ではないので「金闕」。あるいは「禁闕」でもいいかも知れません。天子の住む宮殿のこと。ここでは、仙界の宮殿のこと。「闕」は、「33」の「城闕」で既出です。過去には「丹闕」(タンケツ)=王宮の赤く塗った門=、「双闕」(ソウケツ)=門の上の両側に楼をのせた建物=を取り扱ったことがあります。「闕」は宮殿の「もん」を指し、宮殿そのものも言います。

 「セイショウ」は稍難しい書き問題=西の棟の部屋のこと。正解は「西廂」。「」は1級配当で「ひさし」とも訓みますが、ここでは「正堂(おもや)の両側のわき屋。東と西の廊下、または、塀沿いにつくったわき屋」。「廂(庇)を貸して母屋を取られる」は諺問題で頻出です。同音異義語は「政商」「悽傷」「青松」「青霄」「精誦」「晴霄」「躋升」「清祥」「斉唱」など。このうちでは「躋升」が稍難しい。意味は「高い所に上ること」。「躋」は「のぼる」で「躋攀」(セイハン)も押さえましょう。

 「玉」(ギョクケイ)は、玉の扉。「」は配当外で「かんぬき」。かんぬきをかけて戸をとざす意もあり、ここでは「戸」そのものも指す。「関」(ケイカン)、「鎖」(ケイサ)、「鍵」(ケイケン)、「扉」(ケイヒ)。
 仙山の宮殿の西の棟に至り、玉の門を叩く。

 90 「小玉」(ショウギョク)、「双成」(ソウセイ)はいずれも侍女の名前。順番から言うと、双成の方が小玉より上の序列に位置するんでしょうなぁ。

 91 「聞道く」は「きくなら・く」と訓む。漢文訓読です。聞くところによれば、人の話によると。「聞説」(きくならく)ともいう。中国、漢の国からきた、皇帝の死者であることを相手が聞くと…。楊貴妃に激似の「太真」ですね。

 92 「九華」(キュウカ)は、たくさんの花模様を施したという意。この場合の「九」は数が多いさまを言う。「ムコン」は常用漢字熟語書き問題=「無根」ではない。「ムコン驚く」とは、太真が使者の言葉に驚いて眠りから覚めたさまを言います。正解は「夢魂」。夢の中の魂、夢の中で思い詰めた心。

 93 「攬り」は1級配当訓み問題=「・り」。集めて手に持つ。ここでは、裸で寝ていたわけではないでしょうが、夜着なのでその上に引っ掛けるガウンのような物を手に取ったということでしょう。「攬」は音が「ラン」で、「と・る」「す・べる」「つま・む」とも訓む。「人心収攬」(ジンシンシュウラン=掌握)、「攬筆」(ランピツ、ふでをとる=詩文の作成)、「包攬」(ホウラン)、「承攬」(ショウラン)。「とる」は1級配当ではほかに「秉る」「騫る」「撈る」「摯る」「搏る」「搦る」「搴る」「捫る」「弋る」「簒る」「俘る」など。びみょうに意味は違いますが、いずれも「とる」と訓めます。

 太真はあわててガウンを手にとって、枕を押しやって起き上がったが、どうしたものやらと行きつ戻りつためらっていた。何で使者と会うことにためらうのだろう?ん?ってことはこの「太真」はもしかして楊貴妃激似ではなくて本人そのものかぁ?

 94 「シュハク」は書き問題=少し浮かびづらいかも。「真珠のすだれ」をヒントに考えてみよう。正解は「珠箔」。「箔」は準1級配当で「すだれ」。1級配当なら「簾」(レン)ですね。こっちの方が浮かびやすいでしょうから、「箔」は盲点。此の際しっかり覚えておきましょう。「金箔」(キンパク)、「銀箔」(ギンパク)、「簾箔」(レンパク、注意・連泊ではない)。「簾」では「簾帷」(レンイ)、「簾額」(レンガク)、「簾鉤」(レンコウ)、「簾中」(レンチュウ)。

 「邐迤」(リイ)は、ずるずると連なって長くのびるさま。両字共に配当外。「」は「並んで連なる、また、そのさま」、「」は「曲がりくねってゆく、ながくのびてゆく」。真珠のすだれや銀屛風がたくさんつらなっているさまをいい、太真があるくたびにゆれている情景を詠んだものでしょう。

 95 「ウンビン」は基本熟語書き取り問題=雲のようにふわっとした女性の髪。正解は「雲鬢」。これまで何度も取り上げています。「風鬟雨鬢」「霧鬢風鬟」を忘れずに。。。ここのくだりも色っぽい表現となっています。雲を思わせる髪の毛は起き掛けであるのですこし乱れているさまが色っぽい。

 96 花の冠も取り乱した格好で、太真は奥の間から下りて来た。

 97 「センベイ」は引っ搔け書き問題=この出題の意図は分かるでしょ?同音異義語は「煎餅」しかないですな。太真の好物はぱりぱり煎餅で…って、風が「センベイ」を吹くんですよ。「センベイ」はひらひらとは翻らんでしょう。お~っと、これは大ヒントですね。ひらひら翻るんですから、もうお分かりですね?正解は「仙袂」。仙人の着物のたもと。むしろ「仙」の方が難問かな。「ベイ」は「袂」ですよね。1級配当です「かたわ・ら」「きわ」とも訓む。「袂別」(ベイベツ)、「衣袂」(イベイ)、「分袂」(ブンベイ)。「橋のたもと」や「友とたもとを分かった」などの書き問題の出題例が浮かびます。

 「飄」(ヒョウヨウ)は、ひらひらと動いて定まらないさま。「飄揺」とも書く。既出です。「」は配当外で風が物を揺り動かすこと。同音熟語ですが「飄揚」(ヒョウヨウ)は、風に吹かれてひるがえりあがるさまを言います。「飄」(ヒョウヨウ)も同じ意味。「」は配当外で「あがる」「あげる」の意。「言」(ヨウゲン)は声を張り上げて言うこと。「揚言」「陽言」とも書く。

 98 あたかもあの「霓裳羽衣」を舞う姿を思わせる、その姿態。「霓裳羽衣」は第二段の「32」で登場した楊貴妃が得意とした舞のこと。太真が歩く姿が楊貴妃に生き写しだというのでしょう。いや、本人そのものなのかぁ?

 99 「ギョクヨウ」は常用漢字熟語書き問題=同音異義語は「玉葉」くらいか。これは玉のような美しい葉っぱということで、転じて、天子の一族、皇族を指す言葉です。ここでは「ギョクヨウ」が寂莫(ものさびしそう)とある。太真の「美しい容姿」のことですね。正解は「玉容」。そして「ランカン」は書き問題=同音異義語は「藍関」「瀾汗」「卵管」。これ実は案外難しいですよ。「涙ランカン」とあるので、涙がさめざめと流れ落ちるさまを言います。正解は「闌干」。「」は1級配当で「てすり」と訓みます。したがって、「闌干」は「てすり」の意味もあります。この意味では「欄干」「闌檻」「闌楯」(ランジュン)もあります。ただし、ここから派生して「星がきらきら連なって輝くさま」「なみだがさらさら連なって流れるさま」の意味もあります。少し慣れないと違和感ありますね。「闌」は「たけなわ」「おそ・い」「た・ける」とも訓む。「闌散」(ランサン=盛りを過ぎて衰えるさま)=「闌珊」(ランサン)=「闌残」(ランザン)、「闌単」(ランタン=力出し過ぎて瘁れる)、「闌入」(ランニュウ=乱入)、「闌夜」(ランヤ=夜更け)などの熟語もあります。

 100 「リカ」は基本同音異義語選択問題=同音異義語は「驪歌」「李下」「籬下」「罹禍」「理化」「李華」「俚歌」「梨花」「理科」などがあります。次の「一枝」(イッシ)がヒントです。枝なんですから、それにふさわしい「リカ」であるはずです。候補は絞られますね。「李下」「李華」「梨花」辺りでしょうか?正解は「梨花」ですが、ここの「梨花一枝春帯雨」(リカイッシはるあめをおぶ)は成句で「梨の花が一枝、春の雨にぬれている。美人が涙ぐむさまにたとえる」。このまま覚えましょう。「99」とセットで、とにかく美女が涙を流している、しかも、悲しくも美しく泣いているさまを言い尽くしているのです。もう一度、朗読しましょう。「玉容寂莫涙闌干(ギョクヨウセキバクなみだランカン)、梨花一枝春帯雨(リカイッシはるあめをおぶ)」。とにかく美しい。リズムが素晴らしい。

 すいません。迂生は勝手に「太真」は楊貴妃に似ている仙女だと思っていたのですが、どうやら同一人物のようです。すなわち、楊貴妃は死んだあと仙女になって、新たな名前を与えられていたんですね。失礼しました。まさしく、都合のいい脳内の一大プロジェクトですわ。彼女は玄宗皇帝と最後に出会い、永遠の愛を誓うのですが、それは次回。最終段です。でも、ちょっとやり過ぎ、白居易は媚び過ぎ。詠んでいてこっ恥ずかしくもなってしまいます。
 本日は以上です。

 【今日の1級配当漢字】

闕、稍、廂、悽、霄、躋、攬、秉、騫、撈、摯、搏、搦、搴、捫、弋、簒、俘、簾、帷、鬟、鬢、袂、飄、霓、瀾、闌、檻、楯、驪、籬、罹、俚、媚

 【今日の配当外漢字】

扃、邐、迤、颻、颺
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Re: 加納氏は漢字雑学の巨擘

コメントありがとうございます。お久しぶりですね。。

> 加納喜光教授の著書より。加納教授を私淑しております。
>

加納氏と言えば、漢字雑学本の権威かと。。。迂生も「読めそうで読めない漢字2000」は持っております。「百姓読み」「ヤヌス漢字読み」「バック転読み」「崩れ読み」などの分類が面白かったのを覚えております。

白魚一寸さんのブログで…

こんばんは。本日の項とは関係ないのですが…。

あちらに書こうとも思ったのですが、このブログに出てきた字のようなので、こちらに書きますね。加納喜光教授の著書より。加納教授を私淑しております。

鱔(セン):=鱓(セン)。タウナギ。
鱣(テン):チョウザメ。和訓:ウナギ、ナマズ(共に誤り)
黿(ゲン):魭(配当外)と同字。ハナマルスッポン。故事「食指動く」のスッポン。
鼉(ダ):ヨウスコウワニ(アリゲーター科)
鰐(ガク):イリエワニ(クロコダイル科)
【鼉】:口口/田/一/黽
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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