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塞昆に上陸するなら勝負は午前!暑くなる前に退散せよ=「航西日乗」10

成島柳北の「航西日乗」シリーズの10回目です。早起きしてまだ涼しいうちに、寄港地である塞昆に上陸、探険します。売り子の声が賑やかしいようです。

二十六日、月曜、晴。早起、石川・関二子と上陸す。市上に肉及び1)を売る者叫呼して2)ゴウゴウたり。3)ガイクの土質は赤色にして瓦の如し。蓋し日光の烈しきが為めか。唯だ樹木の茂密なる有て、行人の烈日を避くるに宜し。街上に栽る所は大半4)カイジュなり。人家の簷頭5)リカ、一般に6)牽牛花を植て花露滴々たり。芭蕉は皆実を結び累々として園に満つ。店頭多く陶器を7)ぐを見る。所謂8)交趾焼なり。されど佳なる者は罕なるに似たり。酒店有り、天香楼と云ふ。就て一酌し鴨糸麵・白切蚧を食らふ。去て郷信を郵署に託す。一封の価一フランクなり。天午に近くなり炎威敵す可からず。畏れて舟に還る。衆皆、苦熱困頓す。此夜九時抜錨せしが、未だ港口に達せず。潮退て舟9)コウす。

二十七日、火曜、晴。十一時潮満ち舟動く。二時大洋に出づ。此日涼気を得て人意10)ソウゼン、寒暑針八十一度なり。房奴に銀一元を投じ、温湯に浴し頗る快を覚ゆ。

二十八日、水曜、晴。風波起らず。暑気復甚し。寒暑針九十四度に昇る。赤道に近きを知る可し。







1) ソ=蔬。食用の草の総称。あおもの。「な」とも訓む。蔬菜(ソサイ=野菜、あおもの)、蔬果(ソカ=野菜とくだもの)、蔬食(ソショク・ソシ=粗末な食物、菜食)、蔬筍(ソジュン=野菜と、タケノコ)、蔬茹(ソジョ=野菜のゆでたもの、菜食)、蔬飯(ソハン=粗末な食物、精進料理)、蔬圃(ソホ=野菜畑、菜園)。

2) ゴウゴウ=囂々。人の声ががやがやと騒がしいさま。喧喧囂囂(ケンケンゴウゴウ)。

3) ガイク=街衢。四方に通ずる広い道。また、まち全体を指す。「衢」は「ちまた」のことで「四方に通ずる大通り」。対して「巷」は同じ「ちまた」でも「小路」。二つ合わせて「衢巷」(クコウ=ちまた、表通りも裏通りもひっくるめた「まち」)。

4) カイジュ=槐樹。えんじゅの木。「槐」は「えんじゅ」。並木通り沿いに植えられる。花は黄白色で蝶の形をしている。周代、朝廷の庭に三本の槐を植えて三公がそれに向かって坐ったとされる。高貴な木でもある。槐位(カイイ=三公の位、槐座=カイザ=、槐庭=カイテイ=、槐鉉=カイゲン=、槐鼎=カイテイ=)、槐棘(カイキョク=槐の木と、棘の木、三公九卿を指す)、槐市(カイシ=漢代、長安の東方にあった市場の名)、槐宸(カイシン=天子の宮殿)、槐門(カイモン=大臣・三公の家がら)。

5) リカ=籬下。まがきの下、いけがきのそば。「籬」は「まがき、ませ」とも訓み、「しばや竹で編んでつくったかきね、いけがき」。籬垣(リエン=かきね、まがき、籬藩=リハン=、籬牆=リショウ=)、籬菊(リキク=かきねのそばに咲くキクの花)、籬豆(リトウ=まがきにからんだ豆)、籬辺(リヘン=いけがきのそば、籬畔=リハン=)、籬落(リラク=いけがき、まがき)。

6) 牽牛花=あさがお。熟字訓。「ケンギュウカ」でももちろんOK。

7) 鬻ぐ=ひさぐ。売る、あきなう。この意味での音読みは「イク」。鬻獄(イクゴク=金銭・賄賂をもらって裁判で手加減して罪人の罪を軽くすること、贖獄=ショクゴク=とも)、鬻爵(イクシャク=金銭を納めた者に、官位・爵位を与えること、売爵=バイシャク=)、鬻売(イクバイ=物を売る、商売をする、あきなう)。「かゆ」の意味もあり、この場合の読みは「シュク」。

8) 交趾焼=コーチやき(コウチやき)。交趾(現在のベトナム北部トンキン・ハノイ地方)通いの貿易船によってもたらされたとして珍重された陶器。多くは明・清代の中国製品。

9)コウす=膠す。ねばってくっつく。「膠」は「にかわ」。動物の皮や骨を煮詰めてつくる接着剤。「にかわす」とも訓める。膠化(コウカ=にかわ状になる)、膠葛(コウカツ=よごれていりみだれる、遠い境界がくっきりと見えるさま)、膠固(コウコ=にかわでくっつけたようにかたい、こりかたまって融通がきかない)、膠漆(コウシツ=にかわとうるし、かたく親しい交わりのたとえ)、膠質(コウシツ=にこごり)、膠折(コウセツ=寒さがきびしくなり、にかわがおれる、冷気がつのること)、膠続(コウゾク=にかわで物をつなぐこと、転じて後妻をもらうこと)、膠着(コウチャク=にかわのようにがっちりとくっつくこと、ある物事の状態が固定し、変化しなくなること)、膠柱(コウチュウ・チュウににかわす=膠柱鼓瑟〔コウチュウコシツ・チュウににかわしてシツをコす〕の略、琴柱をにかわづけにして、動かなくすれば、音調をかえることができなくなる、転じて、融通の利かないことのたとえ)。

10) ソウゼン=前後の文脈から意味を考えて、次の語群から選択せよ。

愴然、蒼然、鏘然、爽然、騒然、鎗然、躁然。ヒントは、その前に「涼気を得て」とあるから、とても心地いいんです。






正解は「爽然」。さわやかなさま。ただし、注意点もあって「爽」には、「二つに割れて瓦解する」という意味もあり、爽然には「がっくりとして、気が抜けるさま」の意もある。ここは違うけど。ちなみに、愴然は「つらさにうちひしがれるさま、愴愴=ソウソウ=」、蒼然は「あおあおと草木が茂ったさま、夕がたのうすぼんやりしたさま」、鎗然は「金属楽器の音の形容、さわやかな音」、鏘然も似た意味で、鏘鏘(ソウソウ)、鎗鎗(ソウソウ)、鏗鏘(コウソウ)などもある。躁然は「落ち着きがなくさわがしいさま」、騒然は「がやがやと、さわがしいさま」。




ランチに寄った店で食べた「白切蚧」。岩波文庫「幕末維新パリ見聞記」の「注」欄によりますと、「ハマグリ(蚧=二枚貝)のエビソース和えか」とある。「鴨糸麵」は、細切り鴨肉の入ったベトナム麵でしょう。味については触れていないので大して美味くはなかったのでしょう。このあと香港に引き続き二回目の家族あての手紙を出します。「郵署」に託すとともに、「一封の価一フランクなり」とあります。前回は、日本へと戻る信頼できる人に託しました。今回は郵便を用いるようですが、ここはサイゴンですよ。本当に日本まで無事に届くのでしょうかね。郵便に対する信頼度はあったのでしょうか。

「天午に近くなり炎威敵す可からず。畏れて舟に還る。衆皆、苦熱困頓す」とあります。今年の日本の夏も暑かったですが、ここはいつの時代であれ赤道間近の土地柄です。暑さを侮るととんでもないことになりそうですな。暑さを避けて夜の9時に出帆です。ところが、干潮に遭遇したメーコン号は座礁して立ち往生してしまいます。こうなると潮が満ちるまで待たなければなりません。翌朝11時、満潮になりました。午後2時にようやく再び大洋に出ることができました。ご褒美というわけではないでしょうが、「温湯に浴し頗る快を覚ゆ」。微温湯風呂を浴びて気分爽快になりました。しかし、それにしてもいつになったら仏蘭西に到着するのでしょうか?このblogもいつまで続くのか書いていて心配になってきましたよ~。だって、まだ東南アジア真っ只中ですからね。相当先ですよ。横浜を出てからはや二週間が経過しております。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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