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重陽節句に傑作を残せば出世できるかぁ?=所詮は庶民の詩人と自虐的な梁田蛻巌

本日も梁田蛻巌の詩を味わいます。昨年9月9日の弊blogの記事をご覧いただくと(ここ)、重陽の節句に因んで、王勃、盧昭鄰、岑参、王維、杜甫と唐代の大詩人5人の詩を取り上げています。本邦、蛻巌にも「九日」という作品があります。これだけで重陽の節句である九月九日を表すのは言うまでもありません。唐代の詩人たちの作品と読み比べてみてください。

樹連雲秋色飛    樹雲に連なりて 秋色飛ぶ
独怜細菊近■■    独りれむ 細菊のケイヒに近きを
登高能賦今誰是    登高能く賦す 今誰か是なる
■■文章落■■    カイダイの文章 フイに落つ




ケイヒ=荊扉。いばらのとびら、転じて、粗末な家を指す。「荊」は「いばら」。≠経費、桂皮、軽費。

カイダイ=海内。天下、世界。「四海のうち」の意。

フイ=布衣。一般庶民の着る麻や綿の衣、官位のない人、つまりは庶民を指す。布衣之交(フイのまじわり=庶民の付き合い)。≠不意、巫医、怖畏、黼依、黼帷。

樹=キジュ。玉のように美しい木。「」は配当外で「四角い玉、形の整った玉」。ここは秋の紅葉が盛りのもみじを比喩的に言い表している。花瑶草(キカヨウソウ=仙人の世界にあるという美しい花と草)という言い回しもあります。

怜れむ=あわれむ。「憐」の俗字として用いている。通常は「さとい」の意ですが、この意味も稀にある。怜悧(レイリ=頭の働きが鋭くて利口である、さとい)。





【解釈】 美しくもみじした木々は空の雲と一つに連なり、とりどりに秋の色を飛ばしている。それに引き換え、ひとり粗末な門の扉に寄り添って、小菊がひそやかに咲いているのが、いじらくも哀れである。思えば今日は九月九日、重陽の節句である。昔から高い所に登って詩を作るならわしであるが、古書にも「うまく作れば大夫となる資格がある」と言っている。きょう果たして誰がそれに相当しているであろうか。海内の詩文は庶民の手に落ちているようだ。

重陽の節句に欠かせないアイテムは「菊」。菊の花びらを酒盃に浮かべて、そのまま飲み、長寿のまじないとしました。第二句の「細菊」。これは自分の分身。そして、高い所に登って酒を飲む風習がありました。第三句の「登高」。唐代の詩人の詩もすべて高台の登った描写となっています。もう一つのマスト・アイテムである「茱萸」(カワハジカミ)を髪に挿すのですが、蛻巌の詩には残念ながら出てきません。代わりにと言っては何ですが、重陽の節句に纏わる面白い伝説を皮肉たっぷりに描いています。

明治書院「新書漢文大系7 日本漢詩」(P55)によりますと、「起句は世に時めく学者をたとえて言い、承句は日陰で恵まれない作者自身のたとえである」と、第一句と第二句の対比を解説しています。続けて、「転句は『漢書』芸文志の『登高賦を能くせば、以て大夫と為すべし』を踏む。重陽の節句のときに上手に『登高』の詩を作ることができれば大夫に任じてよい、というが、今や『大夫』の詩を作るのは『大夫』にあらずして庶民である」。その心は「何を隠そう、その代表選手が私なのだ」という。

つまり、私の傑作だが、所詮は粗末な家に住む貧乏儒学者が詠んだにすぎない。折角、重陽の節句にいい作品ができたというのに出世など及びもつかないことだわい。昔の人の言い伝えは「嘘」だよね。とほほほ。。。と聊かユーモアたっぷりに世相を皮肉っているのでしょう。時めくか否かは才能が有る無しでなく、権力者に取り入る才覚と運不運さ。翻って、この詩の出来栄えの良さを誇示しているのです。少し穿ってみれば、昔の中国の詩人だって重陽の節句を詠んだ名詩は数多いけれど、いずれも大夫になどなった者はいないではないか。と我が身と重ね合わせているようにも見えますな。詩人は詩人。いつ何時でもいい作品を残しさえすれば本望なのだよ。。。そんな蛻巌の漢詩人としての意地とプライドが垣間見えるかのようです。
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Re: ようこそ弊blogへ

こちらこそはじめまして。

> 陸機の詩

お探しのくだりは「名文」といえるものです。是非とも拳拳服膺したいもの。

> 漢詩は好きなので

現在日本漢詩シリーズを続行中です。陶淵明や柏木如亭、一休などもまた取り上げます。よろしければ時々でも覗いて見てください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

はじめまして

はじめまして。
陸機の詩に、確か、「朝に咲いてしまった花はすでにもう古い、まだ咲いていないつぼみの表現を求めなくては」という内容の文章があったとおもい、原文を探すため検索していたら漂着しました。

そのページからいろいろ拝読させていただきました。
漢詩は好きなので、また寄らせていただきます。

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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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