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禅僧は俗世と隠者の硲で揺れ動くのだ=陶淵明を敬慕した円旨

日本漢詩シリーズは平安時代から一気に室町時代に飛びます。この時代はなんといっても五山の禅僧が主役です。中国に留学して本場の詩を学んだ者も多かった。本日紹介するのは臨済宗の僧侶・円旨(別源円旨)。25歳の時、元に渡り、11年間の修行ののち帰国。将軍足利氏をはじめ各地の大名から引きがあり、教えを伝授しました。久しぶりに陶淵明先生の登場です。明治書院「新書漢文大系 7 日本漢詩」(猪口篤志著、菊地隆雄編)から。

「題可休亭」(可休亭に題す)


孤松三尺竹三■      孤松三尺竹三カン
招我時時來倚欄      我を招けば時時来りて欄に倚る
■■随風斜入座      サイウ 風に随って斜めに座に入り
軽煙籠日薄遮山      軽煙 日を籠めて薄く山を遮る
沙田千■馬牛痩      沙田 千馬牛痩せ
野水一渓■■間      野水 一渓オウロ間なり
自笑可休休未得      自ら可休を笑う休すること未だ得ざるに
浮雲出■幾時還      浮雲 シュウを出でて幾時か還る






カン=竿。「さお」とも訓み、まっすぐな竹のみき、また、竹や木の長い棒。竹を数える単位語として用いています。「竹」がヒント。「竽」(ウ=楽器の名)とは別字です。要注意。竿頭(カントウ=さおの先、竿杪=カンビョウ=、竿首=カンシュ=、百尺竿頭須進歩=ヒャクシャクカントウスベカラクホヲススムベシ)、竿牘(カントク=手紙、簡牘=カントク=)。

サイウ=細雨。こまかに降る雨、小糠雨。

ポ=畝。耕地の面積の単位。ほぼ5アール(240歩)。千畝で広大な耕地であることを含意する。「ポ」は音便、「ホ」は表外の音読み。

オウロ=鷗鷺。カモメとサギ。自然のままに遊ぶ気分をいう場合の代表的な風物として詩で用いられることが多い。≠往路。鷗渚(オウショ=カモメのいる波打ち際、鷗汀=オウテイ=)、鷗盟(オウメイ=カモメの友達となる約束をする、俗世間を離れて、ゆったりと気ままにすごすこと、隠遁する、俗世間を離れた風流な付き合い)。鷺羽(ロウ=シラサギの羽、また、それで作った、舞に使うかざし)、鷺吟(ロギン=サギの鳴き声)、鷺序(ロジョ=朝廷での役人の席順、サギが順序正しく並ぶことから)、鷺約(ロヤク=世俗を離れた風流の交わり)。つまり、鷗盟と鷺約は類義語の関係にあります。ちょっとむずいかな。

シュウ=岫。いわあな。山中の岩穴。「くき」とも訓む。転じて、深い山あいのことをいう。ここもそう。岫雲(シュウウン=山のほら穴からわきおこる雲)。やや難問ですが「浮雲がわきでる」というくだりがヒントでしょうか。


【解釈】 亭前には三尺の一本の松と三本の竹があってわたしを招く。そこでわたしも暇があればいつもこの亭に来て、欄干にもたれることにしている。今日もこの亭に坐っていると、小雨が風に従って斜めに座中に吹き込んでくる。軽くのぼった靄が、うっすらと太陽を隠して、薄く前山をもさえぎり隔てている。千畝ほどの砂や小石混じった田には、耕作に疲れたか、痩せた牛や馬が点々と見え、野中を流れる一つの川には鴎や鷺がのんびりと遊んでいる。われながらおかしいのは、この亭に自ら可休と名付けたように、世俗との縁を絶って、心安らかに暮らすつもりであったのに、いまだに本意を遂げることができないことである。心なく山の峰を出た浮雲のいつ帰るともなき今の身の上ではある。

それでは……、って、このままで終わったら「どこにも淵明が出てこんじゃないか」と抗議の声が出そうですな。んでも~、よ~く詩を味わってみてくださいな。いかにも自然の風景を詠んでいて、馬、牛、鷗、鷺といった動物たちもほんわかと登場する。「孤松」「細雨」「軽煙」「沙田」「野水」「浮雲」「岫」…ほらほら、どうです?隠者の香りがしませんか?実はこの詩、陶淵明の「帰去来兮辞」を蹈んでいるのです。円旨が自らの亭(あずまや、別荘か)に「可休」(やすむべし)と命名したという。これは淵明の「帰去来兮辞」の「万物の時を得たるを善みして 吾が生の行行休せんとするを感ず」(万物がよい季節にめぐりあったのを喜ぶとともに、わたしの生命がそろそろ終わりに近づくのを感じ取るのである)から取っています。明らかに禅僧というより隠者の詩です。禅僧は世俗と闘うものと相場が決まっていますが、隠者になりたくてもそうそう簡単にはなれないのです。心安らかに暮らしたいという願望は到底かなえられそうもないと嘆息する声が聞こえてきそうですね。少々おどけた雰囲気のある軽いタッチ。でありながら、しっかりと隠者の世界を確立している見事な詩です。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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