スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

蕎麦は信濃?いえ実は茨城が一番(私見)=「守貞謾稿」&「詩本草」

 不定期の江戸・京阪風俗誌「守貞謾稿」シリーズの第2回は、巻之五(生業上)から「温飩蕎麦屋」の件を取り上げます。そして、後半では柏木如亭の「詩本草」から「蕎麦歌」も紹介します。いきなりですが饂飩と蕎麦のどちら派ですか?関西の人は饂飩、関東の人は蕎麦といった単純な分け方がなされることも多いですが、迂生は明らかに蕎麦派です。曾て二十代の四年間だけ住んだことのある「水戸」時代に出遭った茨城県の蕎麦の味がいまだに忘れられません。御存じない方は多いでしょうが、茨城県は北海道に次いで蕎麦粉の生産量が日本第二位の県なのに、そのブランドは全く知られていない黒子の存在なのです。もっとも蕎麦の実は「救荒作物」で、荒地や山間部などの条件の悪い土地でも栽培できる、いや裏を返せば瘠せた土地にこそ栽培されるものですから、必ずしも威張れたものでもありませんがね。。。。

 蕎麦と言えば信州で、所謂、「信州蕎麦」というブランドは確立されており、全国的に人口に膾炙されます。でも、実は茨城の蕎麦も輸けてはいない。特に、県北の金砂郷というあたりの蕎麦は旨いですよ、田舎蕎麦と言って、不揃いの太麵が特徴。けんちん蕎麦と称する、けんちん汁に蕎麦を付けて食べる奴は最高です。ごろごろ里芋や大根、人参が具で、汁が蕎麦と絡む、絡む。。。変り種でカツカレー蕎麦というのもあって美味しかったなぁ。。。また食べたい。。。もう15年以上も行っていないですが。。。

 さて、まずは、守貞謾稿の饂飩(温飩)と蕎麦の解説を見てみましょう。

 温飩蕎麦屋 京阪は温飩を好む人多く、また売る家もこれを専らとし、温飩屋と云ふなり。しかも温どんやにて、そばも兼ね売るなり。

 江戸は蕎麦を好む人多く、商人も専らとし、温飩は兼ねて沽るなり。故に蕎麦屋と云ふ。けだし今製の温飩の本名は、きりめんと云ふなり。切麵なり。『尺素往来(せきそおうらい)』にあり、きりむきなり。

 また古の温飩は飩とも云ふなり。古製は小麦粉を団子のごとくまろめ、中に餡をいれ煮たる物なり。形丸くして、ぐるぐる回りて端なき意にて混沌と号け、後に散〔三〕水を食扁に変じたる名なり。

 また古はうどん・索面・饅頭の類、椽高の折敷にもり、湯を入れ、折敷を組み重ね、汁および粉きり物・酢菜等を添へ出すなり。粉切物は、今云ふ薬味なり。

 また蕎麦は『世事談』に曰く、中古二百年以前の書の諸の食物を詳らかに記せるにも、蕎麦切のことは見へず。ここをもつて見れば、近世起ることなり。中華には河漏津と云ひ、船付の湊の名物なり。茶店に多くこれを売る。因つてかろんと云ひて、これ日本の蕎麦切のことなり。江戸の蕎麦切の盛美は、諸国とも及びがたし、云々。

 またある書に云ふ、二八蕎麦は寛文四年に始まる、云々。すなはち価十六銭を云ふなり。慶応に至り、諸価頻りに騰揚す。これによつて、江戸蕎麦賈、官に請ひて価を増し二十銭とし、また尋いで二十四銭となる。故に招牌の類の二八を除く。江戸しかり。京阪も恐らくは同じからん。しかも二十四銭になりしかど、三八とは云はず。……(長いので以下カット)

 ■「温飩」(ウドン)=漢検1級なら「饂飩」と書けなければいけませんが、これでも正解なのでしょう。ただし、国字の問題なら「饂飩」でなければ駄目ですね。ネット検索すると、「~温飩」と店の名前に使用するケースは結構多いですね。京阪は「温飩」を好み、江戸は「蕎麦」と当然の嗜好の違いが記述されています。京阪では「温飩屋」で蕎麦も売る、江戸では「蕎麦屋」で温飩もある。

 ■「飩」(コントン)=むかしはこの字を宛てたという。中国でいう「すいとん」のこと。小麦粉をねったものの中に肉のあんを入れて、ゆでてつくった食べ物。饂飩(ワンタン)のこと。昔は「小麦粉を団子のごとくまろめ、中に餡をいれ煮たる物なり」→「形丸くして、ぐるぐる回りて端なき意」なので「混沌」と名付けて、其の後、さんずいが食扁に変わったという「珍説」も紹介されています。「」(コン)は配当外で「すいとん」。

 ■「椽高の折敷」=訓めますか?「ふちだかのおしき」。1級配当の「椽」はもしかしたら「縁」の紕繆かもしれません。「たるき」のことで「椽大之筆」(テンダイのふで)が想起されますが、「ふち」とは訓まないし、熟字訓でも「ふち」の意味は出ないでしょう。「折敷」は、「薄いへぎ板を四方に折りまわして縁取りをした角盆のこと」。いまなら、さしずめ「ざる」ですね。

 ■「河漏津」(カロンシン)=中国の麵料理で日本でいう所謂、「蕎麦きり」のこと。中国の港の名前のようです。その辺りの茶店で売られていたとある。「かろん=河漏」と呼ばれたようです。

 我国で蕎麦切(細長い麵状の蕎麦のこと)を食べるようになったのは、近世以降だと論じています。

 ■「二八蕎麦」(ニハチソバ)=ここの件が面白いですが、「寛文四年」(=1664年)に売られた当時の値段が「価十六銭」だったことから、2×8=16で「二八」と名付けられたと言います。現在巷間伝わる説は、小麦粉と蕎麦粉の割合が2対8だというのですが、どうやら元々はそのお値段からきているようです。ところが、その後、幕末に物価が高騰し、「慶応」(=1865~1868年。江戸幕府最後の元号)の頃になると、幕府のお許しを得て江戸の蕎麦屋は蕎麦の値段を「二十銭」「二十四銭」と揚げていった。だけど、3×8=24で「三八」と呼び名が変わることはなかったのよんというのです。

 ■「招牌」は熟字訓です。訓めますか?=「かんばん」。「牌」(ハイ)は準1級で「ふだ」とも訓む。「門牌」(モンパイ)、「牌楼」(ハイロウ)。

 一方、柏木如亭も「詩本草」の第7段で「蕎麦歌」を載せています。七言律詩です。やはり如亭に言わせれば、「蕎麦以信濃為第一」と賞賛。其の上で「其香味非他州可及也」と断言しています。


 江都は人世の極楽国

 口腹何を求めてか得べからざらん

 時新の魚菜 シャビを尚び

 エン席争ひ供して勅を奉ずるが如し

 昇平の士女 愁を知らず

 ショクゼンホウジョウ 公侯に擬す

 信山の蕎麦 物の敵する無し

 相魚駿茄遜ること百チュウ


 ■「江都」(コウト)=江戸。

 ■「口腹」(コウフク)=飲食のこと。

 ■「シャビ」は書き問題=「奢靡」。分不相応な贅沢をすること。いずれも1級配当。

 ■「エン席」は書き問題=「エン」は勿論、「宴会」の意ですが、ここは音を借りて少し変わった漢字が用いられています。浮かびますか?正解は「」。通常は「つばめ」ですが、「やすんずる、やすい」の意味から、「くつろぎ落ち着いて酒食を楽しむ、また、そのこと」を指す意味も派生しています。「讌」(1級配当、エン、さかも・り)も同系。

 ■「昇平」(ショウヘイ)=天下泰平の世。

 ■「ショクゼンホウジョウ」は四字熟語の書き取り問題=ぶっちゃけ、オール常用漢字。漢検基準では4級配当となっています。「孟子」(尽心・下)に出典があり、「ひじょうにぜいたくな食事のこと」。正解は「食前方丈」。テーブル一杯(約3米四方)に御馳走が並べられているさま。類義語は「炊金饌玉」(スイキンセンギョク)、「太牢滋味」(タイロウのジミ)。

 ■「公侯」(コウコウ)=諸大名。

 ■「相魚駿茄」(ソウギョシュンカ)=相模の魚と駿河の茄子。

 ■「遜ること百チュウ」は書き問題=遙かに劣る、大きく及びもしないという意。「」が正解。1級配当漢字。数取りの勝負に用いる竹の棒のことで、「かずとり」とも訓む。

 ここでは、信濃の山で取れた蕎麦粉で打った蕎麦の味は、たとえ相模湾沖の鰹や、駿河名産の茄子でも到底及ばないよということ。旬の魚や野菜などグルメ産品をいくら並びたてたとしても、一杯の信州蕎麦には勝てませんわと譬えた詩ですね。意外や意外、如亭は大の蕎麦好きだったんですね。

 岩波文庫の揖斐高氏の解説によると、この段の冒頭部、草稿では「…河漏(ソバキリ)為第一…云々」となっていると言います。やはり、守貞謾稿で登場した中華(中国)の「河漏」(カロン)の字を「そばきり」とルビが振られていますね。

 本日は以上です。

 【今日の1級配当漢字】

飩、饂、膾炙、沽、餡、扁、饅、椽、賈、嗜、紕繆、奢靡、讌、饌、籌、譬

 【今日の配当外漢字】


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。