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「配霑潤於雲雨 象變化乎鬼神」のごとく変幻自在な文章を書くべし=陸機「文賦」23・完

陸機の「文賦」シリーズ(明治書院「新書漢文大系26・文選<賦篇二>」)の23回目、長かった文章読本も愈々オーラスです。自分の思いだけでもダメ、古人の文章を手本に真似していい部分と反面教師とするべき部分を見極めて生かす。そして、オリジナルなものを生み出す。それを言葉にして後世のために残す。そうやって人類が歴史を繋いでいくことが大事であると陸機は言います。

伊れ茲の文の用為る、固より衆理の因る所なり。万里を恢いにしてア)無く、1)オクサイに通じて津と為る。俯しては則を来葉にイ)し、仰ぎては象を古人に観る。文武を将に墜ちんとするに済い、風声をウ)びざるに宣ぶ。途遠きとしてエ)らざる無く、理微としてオ)めざる無し。2)テンジュンを雲雨に配し、変化を3)キシンに象る。金石に被らしめて徳広く、管絃に流して日に新たなり。

1)オクサイ=億載。一億年、非常に長い年月のこと。「載」は「年」。千載(センザイ・センサイ=千年、ちとせ)、万載(バンサイ=万年、よろづよ)。

2)テンジュン=霑潤。ひたひたと一面に濡らすこと、湿らすこと。「霑」も「潤」も「うるおう」「うるおす」。均霑(キンテン=平等にうるおう、ひとしく利益を受ける、ひとしく利益を与える)、霑汗(テンカン=にじみ出た汗)、霑濡(テンジュ=びっしょりぬれる、恩恵を受ける)、霑酔(テンスイ=全身にしみわたるほど酔う)、霑被(テンピ=うるおう、うるおす、恩恵をこうむる、恩恵をほどこす)、霑露(テンロ=つゆ、また、つゆにぬれる)。潤膩(ジュンジ=うるおいがあってなめらかなこと、潤滑=ジュンカツ=)、潤下(ジュンカ=水の別名)、潤身(ジュンシン=教養を高め、人格をりっぱにする、みをうるおす)、潤筆(ジュンピツ=筆をしめらせる、書画をかくこと、書画の書き賃で生活すること、揮毫料=キゴウリョウ=)。

3)キシン=鬼神。目に見えない、人間離れしたすぐれた能力を持つ神霊。

ア)閡=かぎり(ガイ)。「とざす」。戸を閉める、つっかえ棒をしてとびらをしめる。「垠」と同義。

イ)貽し=のこし。「貽す」は「のこす」。あとにのこす。「おくる」の訓みもあり。音読みは「イ」。貽訓(イクン=祖先が子孫のためにのこした教え、遺訓)、貽厥(イケツ=子孫、詒厥とも)、貽謀(イボウ=よい計画を子孫に残す、また、その計画)。

ウ)泯び=ほろび。「泯びる」は「ほろびる」。ほろんでなくなる、尽きてなくなる。音読みは「ビン」。泯然(ビンゼン=ほろびるさま、はっきりしないさま)、泯泯(ビンビン=おろかで道理にくらいさま、水の清らかなさま、ほろんでなくなるさま、乱れて見分けがつかないさま)、泯没(ビンボツ=ほろびる、なくなる)、泯滅(ビンメツ=ほろんでなくなる、泯絶=ビンゼツ=、泯尽=ビンジン=)、泯乱(ビンラン=道徳や秩序が乱れる)。

エ)弥ら(ざる)=わたら(ざる)。「弥る」は「わたる」。端まで届く意から転じて、A点からB点までの時間や距離を経過する。音読みは「ビ(ミ)」。弥天(ビテン=空の端から端まで一面、満天、志が高遠なさま)、弥漫(ビマン=一面に広くはびこる)、弥綸(ビリン=あまねくおさめる)、弥歴(ビレキ=月日がたつ)。

オ)綸め=おさめ。「綸める」は「おさめる」。この訓みは手元の漢和辞典(学研の漢字源)には載っていません。漢検漢字辞典の意味欄の②に「おさめる。つかさどる」があり、経綸(ケイリン)が用例にあります。やや特殊な訓みか。音読みは「リン」。「いと」「おびひも」とも訓む。綸言(リンゲン=天子のことば、みことのり、詔勅、綸音=リンイン=、綸旨=リンジ=)、綸言如汗(リンゲンあせのごとし=汗が出たらもどらないように、天子が一度発したことばは、とりけすことができないこと)、綸子(リンズ=地が厚く、つやのある絹織物)、綸綍(リンフツ=青いおびひもと、ひつぎを引く太い綱、転じて、詔勅を指す、「礼記」緇衣篇の「王言如綸、其出如綍」が出典、「綍」(フツ)は「おおづな、太い綱」)。


伊茲文之為用,固衆理之所因。恢萬里而無閡,通億載而為津。俯貽則於來葉,仰觀象乎古人。濟文武於將墜,宣風聲於不泯。塗無遠而不彌,理無微而弗綸。配霑潤於雲雨,象變化乎鬼神。被金石而廣,流管絃而日新。



【解釈】 そもその文の働きは、様々な道理を表現できることにある。万里の遠くにまで、遮られることなく意を伝え、何万年離れた時代をも、結びつけることができる。後の世に教えを残し、過去の聖賢から手本を受け取ることができる。文王・武王の文化が、地に落ちるのを防ぎ、王者の風教を継いで、滅びないようにする。いかなる高遠な道でも包括できるし、いかなる微妙な理でもきちんとまとめられる。文章の徳は、恵みの雨を降らす雲にも似て、変幻自在な鬼神にも似る。金石に刻めば、徳を広く伝えることができるし、音楽に乗せれば、常に新しく理解されていくのである。

「恢萬里而無閡,通億載而為津」。これこそが文章の最大の効用。時代を越えて、過去と現代が思想や考えを共有するのです。過去と現代の対話とでも言えましょう。お互いが認め合い、お互いが役目を果たし合う。バトンを繋ぐ。「配霑潤於雲雨,象變化乎鬼神」と、文章が恵みの雨であり、あらゆるものに姿を変え得る鬼神だともいう。金石に刻みこめば、徳を伝え、音楽に乗せて語れば、新しいく生まれ変わる。文章の効用は一つではない。生活に根差し、心を豊かにし、人間が人間であることの意味を明らかにしてくれる。動物とは違う存在であることを認識させてくれる。自然に対して畏敬の念は持ちつつも、万物に対して優位性をも示す。それが文章です。陸機がわれわれ現代人に教えてくれる文章に対する思い。これを受け止めて、心の奥底にある自分というものに目覚めようではありませんか。そして、今だから表現できるものを精いっぱい文章にしたためて、後世の未来人に残そうではないですか。たとえそれが「反面教師」であってもわれわれが生を享けて古の先輩から教え導いてもらった「恩返し」ではないでしょうか。人類というラインに生きることの証ではないでしょうか。ひとまず文賦の本篇は終わりますが、次回以降且く「番外編」として続けようと思います。折角の名美文です。勿体無いですよね。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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