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拙目なる人に嘲笑われても名文を書きたい気持ちで勝つ=陸機「文賦」19

陸機の「文賦」シリーズ(明治書院「新書漢文大系26・文選<賦篇二>」)の19回目です。失敗にもめげずに精進していればいくらでもいい文章は書けるという陸機の叱咤激です。

辞条と文律とを普くするは、良に余がア)の服する所なり。世情の常のイ)をウ)い、前脩の淑しとする所を識る。エ)く巧心に発すと雖も、或いは「山+欠」(わら)いを拙目より受く。彼の1)ケイフと2)ギョクソウとは中原のオ)有るが若し。カ)橐籥の窮まり罔きに同じく、天地と並び育す。

1)ケイフ=瓊敷。玉を敷き詰めたように美しい文章のたとえ。「瓊」は「たま、に」とも訓み、「光り輝く玉」の意。美しい物を譬える言葉として重用されます。瓊筵(ケイエン=玉で飾った美しい敷物、華やかな宴会の席、瓊席=ケイセキ=、瓊座=ケイザ=)、瓊音(ケイオン、ぬなと=宝玉の鳴る音、転じて玉のように美しく清らかな声・音)、瓊瑰(ケイカイ=美しい宝玉や石などのこと、転じて立派な贈り物)、瓊玖(ケイキュウ=美しいおびだま、転じて立派な贈り物)、瓊宮瑶台(ケイキュウヨウダイ=玉で飾った美しい御殿)、瓊姿(ケイシ=玉のように美しい姿)、瓊枝玉葉(ケイシギョクヨウ=玉の実が成るという珍しい木と、玉のように美しい葉、皇族の子孫のたとえ)、瓊樹(ケイジュ=想像上の木の名、玉を生ずるという崑崙山の西にあるという、玉のように美しい木、転じて人格が優れていることのたとえ)、瓊觴(ケイショウ=玉で作った杯、瓊杯=ケイハイ=)、瓊草(ケイソウ=玉のように美しい、よい香りのする草)、瓊葩(ケイハ=玉のように美しい花)、瓊瑶(ケイヨウ=美しいおびだま、腰に付ける玉、人からの贈り物・詩文・手紙などの尊称)、瓊林(ケイリン=玉のように美しく雪の積もった林、唐代の宮中の庫の名)、瓊林の宴(ケイリンのうたげ=清代、会試に合格した者をもてなした宴会)、瓊楼玉宇(ケイロウギョクウ=月の中にあるという美しい御殿)。

2)ギョクソウ=玉藻。玉のように美しい文章のたとえ。「藻」は「文章で修辞が巧みなさま、ことばのあや」。藻詠(ソウエイ=表現の優れた詩文、詠藻=エイソウ=)、藻雅(ソウガ=詩文に優れていて、風流なこと)、藻絵(ソウカイ=詩文の美しい修辞、文采=ブンサイ=)、藻翰(ソウカン=はなやかで美しい文章、立派な文章)、藻思(ソウシ=表現の優れた詩文をつくる才能)、藻(ソウレイ=美しくみがきたてる、行いなどを立派にすること)。

ア)膺=むね。とんと、ものをうけとめるむね、物をかかえこむ、むな板。膺腫(ヨウシュ=むねのはれる病気)、膺受(ヨウジュ=むねでうけとめる、ひきうけること)、膺懲(ヨウチョウ=敵をうけとめてこらしめる、外敵を打ち払うこと、出典は「詩経・魯頌・閟宮」の「戎狄是膺、荊舒是懲」から)、拳拳服膺(ケンケンフクヨウ=常に銘記して、決して忘れないこと)。

イ)尤=とが。災い、失敗のこと。音読みは「ユウ」。「とがめる」とも訓む。尤隙(ユウゲキ=郤い、いさかい)、尤悔(ユウカイ=後悔している事柄)。

ウ)練い=ならい。「練う」は「ならう」。通常は「ねる」。よいものを選び出す。簡練(カンレン=よく選びわける)、練悉(レンシツ=ある物事になれ通じている、物事によくなれて知りぬいている)。

エ)濬く=ふかく。「濬い」は「ふかい」。水かさがふかいさま、奥ふかいさま。「さらう」とも訓み、音読みは「シュン」。濬源(シュンゲン=ふかいみなもと、転じて物事の起源)、濬潭(シュンタン=ふかいふち、深淵)、濬哲(シュンテツ=ふかい知恵があること、また、その人)。「叡」は「エイ」で似ているので弁別しておきましょう。

オ)菽=まめ。マメ類の総称。音読みは「シュク」。菽水歓(シュクスイのカン=マメを食い、水を飲む貧しい生活をしていても親を喜ばせようとすること、貧苦の中でも親孝行を尽くすこと)、菽粟(シュクゾク=人間の常食としてのマメ類と穀物類、≠シュクリツ→菽栗)、菽粒(シュクリュウ=マメ粒のこと)。

カ)橐籥=タクヤク。橐(ふくろ)の中に籥(くだ)をしかけて、火を吹き起こす道具。ふいごう、鞴(ふいご)。「橐」は「ふくろ」。筒型の布の中へ物を詰め、両端をひもでくくるふくろ。鍛冶屋が火を起こす時に用いる、風を送る道具。両側の口のあるふくろ状の箱であるところから。橐駝(タクダ=ラクダ、背中にふくろ状のコブがあることから)、橐中装(タクチュウソウ=袋に入れて持ち歩く物、金銀宝玉などをいう)。「籥」は「ふえ」。穴が三つ、あるいは、六つある短いふえ。

普辭條與文律,良余膺之所服。練世情之常尤,識前脩之所淑。雖濬發於巧心,或受(山+欠)於拙目。彼瓊敷與玉藻,若中原之有菽。同橐籥之罔窮,與天地乎並育。



【解釈】 言葉や文章の法則を知り尽くすことは、私の常日頃からの願いである。そのために、世間によくみられる失敗例と、先人の優れた成功例について、熟知しているつもりだ。しかし、自分では技巧の限りを尽くしたはずの作品も、時には目の無い連中に嘲笑される始末である。一体、宝玉の如き立派な文章は、野原に生える豆のように、いくらでも生れてくる。万物と同様に、無限に増えていき、天地のある限り、永遠に作り出されていくものだ。

「普辭條與文律」――。言葉や文章の法則を世の中に広めることが宿願であるといます。「練世情之常尤」、すなわち世間の人が犯しがちな失敗例(既に多くのサンプルを紹介)を取り上げ、「識前脩之所淑」、すなわち先人の素晴らしい成功例(これも多く紹介済み)を知らしめた。「山+欠」は漢和辞典にも掲載が無い難語。「嘲笑」という意味のようです。「拙目」は「めくら」。どんなに技巧をこらした文章を書いても、めくらの連中には理解されないことだってあるという。それでも、いい文章はいくらでも書くことができる。それは無限。この世のある限り、人間のいる限り、次から次へと文章は澎湃と生まれるのです。どんなに人から理解されなかったとしても書き続けること。陸機は、文章のそんな特性を見抜いており、思いを表現することが無限であることを説く。成功も失敗もある。とはいえ、連戦連勝は無理。一回成功しても十回は失敗するくらいの低確率ではないでしょうか。それであったとしても一生涯精進あるのみです。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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