スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

美辞麗句のみ列ねた空虚な文章は厳に戒めよ=陸機「文賦」16

陸機の「文賦」シリーズ(明治書院「新書漢文大系26・文選<賦篇二>」)の16回目です。浮いている文をいかに扱うかのこたえはありませんでした。恐らく対処法は無くそんな文章を書いてはいけないと陸機は戒めているのでしょう。引き続いて内容よりも表現で奇を衒う文章です。陸機は「そんな文章は情も愛もない」と嘆いています。


或いは理を遺てて以て異を存し、徒に虚を尋ねて以て微を逐う。言は情寡なくして愛鮮なく、辞は1)フヒョウして帰らず。猶お絃のア)にしてイ)の急なるがごとし、故に和すと雖も悲しからず。或いは2)ホンポウして以て3)カイゴウし、務めてウ)嘈囋として4)ヨウヤたり。

1)フヒョウ=浮漂。うわついて実質が無いさま。「浮~」の熟語は、浮淫(フイン=舟に乗り魚をとって楽しむこと、行いが軽薄でみだらなこと)、浮雲(フウン=あてにならないことのたとえ、縁遠くてまったく関係の無いことのたとえ)、浮栄(フエイ=はかない世俗的な栄華)、浮華(フカ=うわべばかりきれいに飾って実質がないこと)、浮気(フキ=空に漂う気、蜃気=シンキ=)、浮言(フゲン=根拠のないうわさ、流言、デマ)、浮誇(フコ・フカ=うそをいう、文章などで、内容が無くはでで大袈裟なこと)、浮浅(フセン=あさはかで物事の表面しかみないこと)、浮疏(フソ=軽軽しくておおざっぱなこと)、浮躁(フソウ=うわっ調子。軽薄なこと)、浮屠(フト=仏、僧侶)、浮蕩(フトウ=うかんでゆらゆらと動くこと、うわついていて信用できない)、浮嚢(フノウ=泳ぐとき使う浮き袋)、浮泛(フハン=舟遊び、かるはずみで中身が確実でないこと)、浮白(フハク=酒を飲み残した者を罰するために飲ませる杯、「浮」は、罰として酒を余計に飲ませること、「白」は、杯)、浮靡(フビ=うわついてぜいたくなこと)、浮萍(フヒョウ=池などの表面に浮かんで生える草、ところさだめずさすらうこと)、浮沫(フマツ=水に浮かんでいる泡)、浮誉(フヨ=実績のない栄誉)、浮梁(フリョウ=舟を並べその上に板などを置いてつくった橋、浮橋=フキョウ=)、浮弄(フロウ=鳥が水に浮かんでたわむれていること)。

2)ホンポウ=奔放。勢いよく走ること。ここでは、詩や文章の勢いのよいさまをいう。「奔」は「はしる」とも訓む。奔佚(ホンイツ=非常に速く走る、走って逃げ去る、自由気ままに行動する)、奔営(ホンエイ=利益を得ようとして忙しくつとめること)、奔渾(ホンコン=川の流れが急で凄まじいさま、≠香港)、奔趨(ホンスウ=はしっておもむく、≠本数)、奔川(ホンセン=勢いよく流れる川、≠本線・本戦・本選)、奔湊(ホンソウ=はしりあつまる)、奔湍(ホンタン=川の水流の急な所)、奔馳(ホンチ=馬に乗って勢いよく走りがける)、奔北(ホンボク=戦いに負けて逃走すること、奔敗=ホンパイ=)、奔命(ホンメイ=主君の命令を果たすために忙しく努力する、≠本命)、奔雷(ホンライ=激しく轟く雷鳴、≠本来)、奔浪(ホンロウ=激しく荒れる波、≠翻弄)。

3)カイゴウ=諧合。調和すること。「諧」は「やわらぐ」「ととのえる」とも訓む。調子を合わせて打ち解ける状態をいいます。諧謔(カイギャク=人を笑わせるような、おかしみのあることば、冗談)、諧協(カイキョウ=よく調和する)、諧語(カイゴ=たわむれにいう、調子のよい滑稽な言葉)、諧声(カイセイ=六書の一つ、形声のこと)、諧調(カイチョウ=やわらぎととのう、調和してやわらぐこと、よくととのった音楽の調べ)、諧比(カイヒ=やわらぎ親しむ、うちとけて肩をならべる)、諧和(カイワ=調和してよくととのう、調和させてととのえる、やわらぎ、よく調和していること)。

4)ヨウヤ=妖冶。人の心を惑わすほどあでやかなこと。妖艶(ヨウエン)、妖婉(ヨウエン)ともいう。「妖」も「冶」も「なまめかしい」と訓む。妖異(ヨウイ=不思議な出来事、怪奇現象)、妖魅(ヨウミ=人をたぶらかすあやしい化け物、妖怪、妖鬼)、妖氛(ヨウフン=よくないことがおこりそうなあやしい気配、戦乱、妖気)、妖孼(ヨウゲツ=災い、また、災いの起こるきざし)、妖言(ヨウゲン=人を惑わすことば)、妖蠱(ヨウコ=人を惑わせるほど美しくあでやかでなこと)、妖倖(ヨウコウ=気に入りの美人)、妖姿媚態(ヨウシビタイ=なまめかしい姿かたちと、人に媚びるような態度)、妖祥(ヨウショウ=災いと幸福、禍福)、妖彗(ヨウスイ=彗星)、妖童(ヨウドウ=美少年)、妖妄(ヨウボウ=あやしげで、でたらめなこと、≠容貌)、妖民(ヨウミン=あやしい術を使う人間)。

ア)么=ヨウ。「麽」の簡体字、「麽」は「麼」の異体字。「麼」は「マ・バ」。細かい、かすか。細麼(サイマ=こまかいこと)。似ている字に「幺」もあります。これも「ヨウ」で「ちいさい」。幺麼(ヨウマ=小さい、細かい、価値の無いつまらないこと、幺微=ヨウビ=)、幺弱(ヨウジャク=おさなくてかよわい)。このほかに、「一部の指示詞や疑問詞に付き語調を整える言葉」の意もあり、什麼(ジュウマ、ソモ、いかん=なに)、什麼生(ソモサン=なぜ、どうして、どのように)。

イ)徽=キ。琴の音の高低をつけるため、左手の指で弦を押さえる所を示すしるし、琴の糸を支える台(ことじ)のこと。「しるし」とも訓む。徽音(キイン=美しくすぐれた内容のことば、美しい音楽)、徽言(キゲン=ためになるよいことば、善言)、徽号(キゴウ=色、模様などによって区別した旗じるし、徽章=キショウ=)、徽幟(キシ=自分の所属・官位などを明らかにするための旗じるし、めじるし・標幟)。

ウ)嘈囋=ソウサツ。がやがやと騒がしいさま。「嘈」(ソウ)は「ざわつく」、「囋」(サツ)は「口数の多いこと」。嘈雑(ソウザツ=がやがやと騒がしいこと、嘈砕=ソウサイ=)、嘈嘈(ソウソウ=声の騒がしいさま、嘈然=ソウゼン=、→白居易の「琵琶行」に「大絃嘈嘈如急雨」がある)。

或遺理以存異,徒尋虛以逐微。言寡情而鮮愛,辭浮漂而不歸。猶絃麽而徽急,故雖和而不悲。或奔放以諧合,務嘈囋而妖冶。


【解釈】 ある場合は、内容を犠牲にしても、奇抜な修辞を好み、空虚で曖昧な表現を求める。このような言辞には、実感がこもらず、愛情も感じられない。表現がうわついて落ち着かない。あたかも、細い弦を急な調子で弾くようなものであり、調和するとしても、人の心を悲しませるものではない。ある場合は、奔放にして調子がよく、饒舌さと美麗のみを追求している。

うつろに響く文章というのがあります。一見すると、美辞麗句が列ねられていて華やか。しかし、その実は何の中身も欠片もない。真に伝えたいことそのものではなく、それを飾るべく修辞を凝らすことに主眼が置かれている美文とでも言えましょうか。例えば、本日の国会の代表質問。質問する側も答える側も空々しい響きしかありません。野党側はとにかく揚げ足を取ることに専念する。菅首相は応じる姿勢を見せつつもはぐらかして躱そうとすることに汲汲とする。実感もなく、愛情のない質疑応答。今回に限らないですが、一方通行の空しい議論です。「奔放以諧合,務嘈囋而妖冶」と陸機が呆れるのも無理からぬところ。実質のない空虚な文章は厳に戒めなければなりません。人を拊心する文章は、そんなに簡単に書けるはずがありませんよ。そんな失敗を積み重ねてこそ産み出すことのできる難物ではないでしょうか。やはり、ここでも古の名文を玩味することが捷径かもしれません。お手本は身近にあるのです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。