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「際物」は「際どい物」だけどエログロぢゃないんです…=守貞謾稿

 岩波文庫の「近世風俗志」(守貞謾稿=もりさだまんこう)をいま読んでいます。江戸末期に書かれた風俗、風物の百科事典ですね。これ面白いですよ。著者は喜田川守貞という人です。絵心もある人で、自身の手による挿絵も豊富。これがまた洒脱な筆致でお上手。それほど配当外の漢字は見えませんが、とりわけ熟字訓に関しては漢字学習のテキストとしても十分堪え得る書物です。なによりも言葉の宝庫です。知らないことだらけです。

 江戸・神田神保町のとある書肆で5冊セット・2350円で売られているのを見つけ、思わず購入。1~5巻まであって分量は多い(1巻当たり約400頁)ですが、あっという間に読了できそうです。折に触れて面白いなと思った件を不定期で取り上げていくことにします。

 本日は(一)の「巻之五生業上(なりわい)」から。ここでは「今世、江戸にありて京阪にこれなき生業」の中に、「献残屋」(けんざんや)と「際物師」(きはものし)のことを紹介しています。意外と「きわもの」の意味を間違って受け取っていませんか?音のニュアンスから「際どいもの」として、エロっぽい物かと勘違いしてないですか?「際どい」と言ってもその内容がではなく、時期が限定的だというのですよ。。。

 献残屋(けんざんや) 諸武家献備および各互ひの音物、あるひは市民より献進の諸物、その余残を売るを本とするの名なれども、今は献備の諸品は実用に用ひず、この賈に売り下すなり。これを買ひて献進再用する物はなはだ多く、あるひは私用・他用にもすることなり。

 上り太刀と名付けて、木太刀を黒漆ぬり真鍮具の物、ただ太刀の形のみなる物、太刀献上の例にはこれを用ふ。太刀代と号して価を副ふるなり。この太刀等他用しがたく再三用ふるなり。

 熨斗蚫沽魚、塩鳥、昆布、檜台、折櫃、樽の類なり。

 葛粉、片栗粉、水餅、金海鼠干蚫、くるみ、唐墨、海鼠腸雲丹

 右の献残、大阪になしと思ひしに、御祓筋本町より以北にただ一戸これあり。江戸城辺は数多これあり。京師にもあるべし。

 ■「音物」(インモツ)=進物(シンモツ)。

 ■「賈」(コ)=商売人、商人(あきんど)。1級配当で「う・る」「か・う」「あきな・う」「あきな・い」「あたい」と訓む。「良賈は深く蔵して虚しきが如し」は「賢者はその学徳や才能を深く隠して、ひけらかすことはしない」。

 熟字訓問題にぴったり。下線を引いた漢字を読んでください。ノーヒント。いずれも本番試験で出るものばかりです。

 正解は順に、「のしあわび」「ひもの」「おりびつ」「はこ」「きんこ」「ほしあわび」「このわた」「うに」。このうち、「沽魚」はやや難問かも。というか、「沽」には「ひもの」に通じる意味はない。訓みは「う・る」「か・う」「ねうち」で、宛字にしてもちょっと遠いような気がします。「沽券」(コケン)。。。というか、もしかしたら「枯魚」の紕繆かもしれませんね。誤字訂正問題にいいかも。

 「献残屋」とはあまり馴染みがありませんが、「大名に献上した品物の残り物や不要な物を買い取って、これを利用して慶事の祝い物・結納物などの調整を業とした」。今なら、金券ショップかぁ?


 際物師 きはものしと訓ず。一字限りの物を売る生業を云へども、ただ江戸のみこれを唱ふ。京阪もまたその賈あれども、この名目これなきなり。春時の凧、正月二日初夢宝船図、七日薺、十五日削掛、三月雛祭りに係る諸物、五月節句物、七月乞巧奠、同魂祭物、蠟月注目縄、飾松、その他正月祝物を始め四時とも一時限りの物枚挙に暇あらず。皆惣じてきはものと云ふ。これまた一種の小賈なり。

 ■「薺」は訓み問題=1月7日に食べる七草粥の代表選手。正解は「なずな」。ほかは、「芹」(せり)、「御形」(ごぎょう)、「繁縷」(はこべら、はこべ)、「仏の座」、「菘」(すずな)、「蘿蔔」(すずしろ)。これらは基本ですので書けるようにもしておきましょう。

 ■「削掛」(けずりかけ)=正月十五日の小正月に神仏などに供える飾り棒。楊・ニワトコなどの枝を薄く削いで渦状に残しておく。幣(ぬさ)の古い形といわれる。削り花、穂垂、掻垂ともいう。

 ■「乞巧奠」(キコウデン、キッコウデン)=陰暦7月7日の夜、供え物をして牽牛・織女星をまつる行事。中国の風習が伝わって、日本では宮中の儀式として奈良時代に始まり、後に民間でも行われるようになった。

 ■「魂祭」(たままつり)=陰暦7月に祖先の霊を迎えてまつること。もとは、12月晦日にも行われたことが「徒然草」などに見える。于蘭盆、精霊会。

 ■「蠟月」(ロウゲツ)=陰暦12月のことですが、恐らく「臘月」の誤まりでしょう。誤字訂正問題にも最適か?


 ■「注目縄」(しめなわ)=通常は「注連縄」と書くでしょうか。

 さらに別のところでもまた似たような解説がありました。

 際物師 江戸にて節物賈を云ふ。京阪この名目なきなり。限日ある賈物にて、当日を過ぐれば廃物となり、あるいは来年同日を待たざれば、買ふ人なき品物を云ふ。

 第五巻の云へるごとく、一時限り品物を商ふ者、京阪その名目これなし。江戸にて、きは物師と云ふ。正月二日宝船、七日薺、十五日削掛、三月雛物、五月端午物、七月七夕、生竹、同月盆燈籠と云へども、今は燈籠は売らず、絵挑灯を売り、于蘭盆物諸品、八月十五夜、九月十三日月に供す芒、十月日蓮宗用きせ綿および造り花、十一月酉の町さらひ、かしう玉、十二月下旬より正月用物数品等を云ふ。けだし薺・雛物・端午飾り物・七夕竹・于蘭盆物・正月用物、三都相似たり。その他宝船・削掛以下、京阪なき所なり。

 また大阪正月十日今宮夷市、江戸にはなき所なり。

 けだし三都ともその大略を記す。なほこの他にもこれあるべきなり。


 ■「節物」(セツブツ)=その時節の物、時の物。

 ■「挑灯」(チョウチン)=「提灯」の宛字か。

 ■「芒」(すすき)=薄とも書く。

 もう覚えましたね、「際物」の意味。エロイんじゃないんです。グロでもない。。。

 本日は以上です。

 【今日の1級配当漢字】

謾、肆、鍮、賈、熨、蚫、沽、櫃、筥、祓、紕繆、薺、縷、菘、蘿蔔、奠、于、臘、芒
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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