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文章を書く際は「ターゲット」を的確に形にせよ=陸機「文賦」8

陸機の「文賦」シリーズ(明治書院「新書漢文大系26・文選<賦篇二>」)の8回目です。

体に万殊有り、物に一量無し。1)フンウン2)キカクとして、形状を為し難し。辞は才をア)りて以て伎をイ)し、意は契を司りて匠と為る。有無に在りてウ)僶俛し、浅深に当たりて譲らず。方を離れて員をエ)ると雖も、形を窮めて相を尽くすを期す。故に夫の目に夸る者は奢を尚び、心にオ)う者は当を貴ぶ。窮を言う者は3)アイなること無からんや、達を論ずる者は唯カ)し。


1)フンウン=紛紜。複雑に入り混じるさま。「紛」は「みだれる」とも訓み、「小さい物がいりみだれた状態、混乱、混沌」の意。「紜」は「もやもやと乱れているさま」。紛郁(フンイク=咲きみだれるさま)、紛衍(フンエン=草や木がみだれはびこる)、紛嘩(フンカ=みだれて、さわがしいこと)、紛淆(フンコウ=複雑にみだれもつれる、紛糾)、紛喧(フンケン=やかましい、かまびすしい、紛諠=フンケン=、紛呶=フンド=)、紛訌(フンコウ=うちわもめ、内訌=ナイコウ=)、紛囂(フンゴウ=みだれてやかましい)、紛奢(フンシャ=はででおごっている)、紛揉(フンジュウ=入り乱れ、もつれあうこと、紛糅=フンジュウ=)、紛擾(フンジョウ=みだれる、紛騒)、紛沓(フントウ=多くの人が出てごたごたと混雑すること)、紛鬧(フンドウ=あれやこれやとさわがしいこと)、紛葩(フンパ=乱れ咲く花、入り乱れた声)、紛紛聚訴(フンプンシュウソ=多くの人がいろいろなことをかってにいうこと)、紛綸(フンリン=物が多く、入り乱れているさま)。紜紜(ウンウン=物が多く入り乱れているさま、人の往来の盛んなさま)。

2)キカク=揮霍。はやいさま、勢いがはげしいさま。ここは違うが「無駄使いするさま」の意もある。「揮」は「ふるう」。「霍」は「状態が急激に変化するさま、にわかに、ぱっと」。揮毫(キゴウ=筆を走らせて書画をかくこと、揮筆=キヒツ=、揮墨=キボク=)、揮灑(キサイ=筆を振り回し、墨を紙に注ぐ、書画を書くこと)、揮斥(キセキ=手を振って邪魔者を除く、かってにどんどん行く)、揮掃(キソウ=払いのける、勢いよく筆を振るって書画をかく)、揮涕(キテイ=涙を払いのける、揮涙=キルイ=)。霍奕(カクエキ=はやくかけるさま)、霍霍(カクカク=ぴかぴかとひらめくさま)、霍閃(カクセン=いなずま、いなびかり)、霍然(カクゼン=ぱっと消え失せるさま、はやいさま、広々して大きいさま、霍焉=カクエン=)、霍乱(カクラン=かっと急に襲う日射病、夏に起こる急性の病気、激しく吐いたり下痢をしたりする、→鬼の霍乱)。

3)アイ=隘。くびれてせまい。場所が狭い。また、度量がせまい。「阨」が同義語。要隘(ヨウアイ=要害の地)、関隘(カンアイ=難関の関所)、隘路(アイロ=大きな車が通れないほどに狭い道、物事をすすめていくときに妨げとなる問題や困難、難関)、隘窮(アイキュウ=物事に行き詰まる、動きがとれずくるしむ、IQではない、阨窮=ヤクキュウ=、阨困=ヤッコン=)、隘巷(アイコウ=狭い通り、狭い路地)。

ア)程り=はかり。「程る」は「はかる」。程度をはかる。

イ)効し=いたし。「効す」は「いたす」。力を出しつくす、効果を上げる。効死(コウシ、しをいたす=命を捨てる、死ぬほど努力する、死力を尽くす)、効命(コウメイ=命をささげる)。

ウ)僶俛=ビンベン。つとめ励む。僶勉(ビンベン)、黽勉(ビンベン)とも書く。「僶」は「つとめる」。つとめ励む、また、そのさま。粘り強く頑張るの意。もちろん配当外ですので漢検志向者は「黽勉」を覚えましょう。「俛」は「フ」が一般的で「伏せる、身をかがめたり頭を垂れた李するさま→俛仰之間=フギョウのカン=、俛首帖耳=フシュチョウジ=」の意ですが、「ベン」と読む場合は「むりをおしてつとめる、つとめはげむさま、勤勉の勉に当てた用法」となることに注意しましょう。こちらは漢検必須語。。だよなぁ…

エ)遯る=のがる。「遯れる」は「のがれる」。ある場面から退く、また、その場から逃げ出す。「遁」と同義。遯走(トンソウ=こっそりはしりにげる、遁走、遁北=トンホク=、遁亡=トンボウ=)、遯竄(トンザン=人目につかない所に、にげてかくれる、遁竄、遁蔵=トンゾウ=)、遯辞(トンジ=責任などを免れるためにいうことば、言い逃れの口上、遁辞)、遯思(トンシ=この世をのがれたいという望み、遁思)、遯世(トンセイ=俗世間とのかんけいを絶ち静かに暮らすこと、遁世)、遯迹(トンセキ=俗世間を離れて隠棲する、遁迹)、遯甲(トンコウ=人の目をくらまして自分の身をかくし、災いをのがれる術、遁甲、遁術=トンジュツ=)、遯逸(トンイツ=しりごみしてとまどう、ためらう、遁逸)、遯逃(トントウ=こっそりかくれてのがれる、遁逃、逃遁=トウトン=)。

オ)愜う=かなう。ぴったりと調和がとれる、また、うまくあてはまる。「こころよい」の訓みもあり、「心にかなって気持ち良い」の意。音読みは「キョウ」。漢検配当外。和愜(ワキョウ=心なごんで落ち着いているさま)、愜志(キョウシ=満足した気持ち)、愜然(キョウゼン=満足するさま)。

カ)曠し=ひろし。むなしいさま。広々として何もないさま。「むなしい」とも訓む。音読みは「コウ」。曠達(コウタツ=心が広々として物事にこだわらないこと)。曠然(コウゼン=広々として何もないさま)、曠土(コウド=広々と開けた土地)、曠蕩(コウトウ=広々と開けているさま、度量が大きいさま)、曠望(コウボウ=広く眺めわたす、遠くをながめる)、曠遠(コウエン=がらんとして遠い、はるかに遠い)、曠恩(コウオン=広大な恩、大きな恩み)。


體有萬殊,物無一量。紛紜揮霍,形難為狀。辭程才以效伎,意司契而為匠。在有無而僶俛,當淺深而不讓。雖離方而遯員,期窮形而盡相。故夫夸目者尚奢,愜心者貴當。言窮者無隘,論達者唯曠。



文章の体(構成)には多くの種類があり、描かれる物(対象)もさまざまである。その結果、文章の様相はめまぐるしく変化し、その形を正確に表現することは難しい。いずれにせよ、言葉がそれぞれの技量を発揮できるように配慮しつつ、作者の構想が主体となって、基準に沿って組み上げていかねばならない。ある語の取捨について思いを凝らし、より深い表現を追求してやまない。たとえ四角や円形のような、きっちりした形にならなくても、あくまで対象の形状を描き尽くすことに務めるべきである。それゆえ、見た目をたっとぶ人の文章は、表現の華麗さを求めるし、読者を納得させようとする人は、言葉の適切さを重んずる。細部にこだわる者が書くと、この上なく瑣末になり、壮大な議論を好む者が書くと、自由気ままなものとなる。

文体にはさまざまの形がある。そして、当然ながらその文章で述べられるターゲットは無数にある。どの文体を用いると最も効果的に、的確にターゲットを言い表すことができるのか。これは古来現代に至るまで永遠のテーマと言っていいでしょう。そこで、「辭程才以效伎,意司契而為匠」と陸機は言います。言葉の意味や効果が最大限に発揮されるように文章家は意を尽くさなければならない。よりよい言葉。よりよい表現。これらを模索することが文章を書くということなのです。「在有無而僶俛,當淺深而不讓。」とも陸機は述べています。形のあるなしはともかくより深いものを探求せよ。この「有無」と「浅深」は所謂、偏義複辞でそれぞれ「有」と「深」の意に重きが置かれています。

続けて出てくる面白い漢字が「員」。その前段にある「方」の対義語で「まる、まるい、円」の意味です。この意味では「イン」ではなく「エン」と読むことに注意しましょう。員闕(エンケツ=宮城のまるい屋根の楼門)、「員石」(エンセキ=まるい石)などの熟語がありますが、なかなか慣れませんよね。余裕があれば。。。つまり、四角形や円形といった明確な形状のあるものとは限らないが、自分が書きたいものはしっかりと形に収めるようにしないといけない。

華麗な美辞を連ねる文章(尚奢)。内容を重んじ納得させたい文章(貴當)。細部にこだわる文章(言窮)。大言壮語とも言っていいほどの大袈裟な文章(論達)。いずれも読み手にとって好みの差異こそあれ、書き手の立場からすればありです。それぞれは各人が書きたい内容に合致していれば、文章の形として認められるのです。続けて陸機は事細かな「文体論」を展開します。次回をお楽しみに。。。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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