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華麗なる語彙の連続…酔わずに書けるかぁ?=陸機「文賦」7

陸機の「文賦」シリーズ(明治書院「新書漢文大系26・文選<賦篇二>」)の7回目です。これまで既に六回を連ねてきましたが、鮮やかな語彙のオンパレードに目を見張られたことと思います?「賦」というのは対句なんですね。そういう意味では技巧に走りがちな面は否めません。しかし、そこに鏤められている豊富な語彙を吸収しようとすると大いに勉強になりますな~。とりわけ本日は語彙が多いです。じっくり、ゆっくりやりましょう。


ア)れ茲の事の楽しむ可き、固より聖賢のイ)む所なり。虚無に課して以て有を責め、1)セキバクを叩きて音を求む。ウ)綿邈を尺素にエ)み、オ)滂沛を2)スンシンに吐く。言之をカ)いにして弥広く、思い之を按じて逾々深し。芳蕤の3)フクフクたるをキ)き、青条の森森たるを発す。4)サンとして風のごとくに飛びてク)のごとくにケ)ち、鬱として雲のごとくに5)カンリンに起く。

1)セキバク=寂寞。ひっそりして静かなさま。「ジャクマク」とも読み、「寂莫」「寂漠」とも書く。寂爾(セキジ)、寂乎(セッコ)、寂然(セキゼン)、寂如(セキジャク)も同義。

2)スンシン=寸心。心のこと。心の大きさを一寸四方であると考えられたことから。寸毫(スンゴウ=ほんの少し)、寸楮(スンチョ=自分の手紙を謙遜していう、寸信=スンシン=、寸書=スンショ=、寸簡=スンカン=、寸紙=スンシ=、寸箋=スンセン=)、寸隙(スンゲキ=少しの暇、寸暇=スンカ=、寸閑=スンカン=)、寸腸(スンチョウ=わずかばかりの真心)。

3)サン=粲。あきらか、あざやかではっきりしているさま。粲然(サンゼン=くっきりとあざやかなさま、美しい白い歯を出してあざやかに笑うさま)、粲花(サンカ=ことばが美しく、すぐれていることのたとえ、李白の詩を李白粲花之論と持て囃した人々の言葉)、粲粲(サンサン=装飾や色彩が多く、あざやかで美しいさま、あざやかではっきりしたさま)、粲爛(サンラン=衣裳・容貌、詩文の表現などが、美しくてあざやかなさま、粲麗=サンレイ=)。

4)カンリン=翰林。文人・学者の仲間。「翰」は「ふみ」。長い羽毛でつくった筆、転じて、筆で書いた物、手紙や文章を指す。

5)フクフク=馥馥。かおりがゆたかにこもるさま。馥郁(フクイク)とも。「馥」は「かんばしい」「かおり」とも訓む。馥気(フッキ=よいにおい)。

ア)伊れ=これ。語調をととのえる発話のことば。さあ、さて。

イ)欽む=つつしむ。偉いと思ってかしこまる。尊敬して慕う。音読みは「キン」。欽仰(キンギョウ=敬いあおぐ、尊敬してうやまう)、欽欽(キンキン=つつしむさま)、欽差(キンサ=勅命によって派遣すること、欽命=キンメイ=)、欽若(キンジャク=つつしんで従う、かしこまってつかえる)、欽崇(キンスウ=敬い尊ぶこと、欽尚=キンショウ=)、欽羨(キンセン=人を尊敬してうらやむこと)、欽定(キンテイ=法令等を天子自身が決定し制定すること)、欽天監(キンテンカン=天門測候・暦法などをつかさどる役所、明代に名付けられた)、欽慕(キンボ=敬い慕う)、欽明(キンメイ=つつしみ深くて道理に明るいこと)、欽明文思(キンメイブンシ=心身をつつしみ、道理に明るくて威容が外に輝き、考えの深いこと、古代堯帝を褒める言葉)。

ウ)綿邈=メンボウ。はるかに遠い様子。緬邈(メンボウ)とも書く。この「綿」は「つらなる」とも訓み、「わたの糸のようにまつわりついて切れないさま」をいう。綿延(メンエン=長くつながりのびる)、綿亙(メンコウ=長く続く)、綿篤(メントク=命の糸が細まる、重病で今にも死にそうなさま)、綿力薄材(メンリョクハクザイ=弱い力とわずかな才能、微力菲才=ビリョクヒサイ=)、綿歴(メンレキ=長く続くこと)。

エ)函み=つつみ。「函む」は「つつむ」。はこのなかにいれるようにつつむ。やや特殊な訓みです。音読みは「カン」。函使(カンシ=手紙を運ぶ使い、ふみ使い)、函丈(カンジョウ=先生と自分の席との間に一丈(約3メートル)の距離をおくこと、先生を尊敬していうことば)、函人(カンジン=よろいをつくる人)、函封(カンプウ=箱に入れて封をする、封筒に入れて閉じる)、函嶺(カンレイ=箱根山のこと)。「つつむ」はほかに、「温む、繃む、苞む、葆む、裹む、贏む、韜む、韞む」。

オ)滂沛=ホウハイ。意気の盛んなさま。「滂」は「ひろい」とも訓む。滂沱(ボウダ=水・涙・雨などが盛んに流れるさま)、滂湃(ホウハイ=水の勢いの盛んなさま)、滂洋(ホウヨウ=四方に広がるさま、ひろすぎてとりとめのないさま)。「沛」は「ぱっとふき出て広がるさま、勢いよく広がるさま」。沛然(ハイゼン=雨が激しく広がって降るさま、水が激しく流れるさま)。

カ)恢いに=おおいに。ひろいさま。音読みは「カイ」。恢偉(カイイ=大きくて目立つさま)、恢恢(カイカイ=ひろく大きいさま)、恢廓(カイカク=わくを広げて大きくする、拡張)、恢奇(カイキ=大きくてすぐれている)、恢詭(カイキ=非常に奇怪な)、恢弘(カイコウ=ひろく大きい、ひろめる、恢宏=カイコウ=)、恢達(カイタツ=心が広くて大きい)、恢誕(カイタン=おおげさででたらめ、大きい)、恢復(カイフク=回復)。

キ)播き=しき。「播く」は「しく」。通常は「まく」「ちらす」。音読みは「ハ」。播越(ハエツ=もといた場所からあちこちにちらばって、他国をさすらう)、播種(ハシュ=たねをまく)、播植(ハショク=種をまき苗を植える)、播遷(ハセン=遠方の土地をさすらう)、播蕩(ハトウ=あちこちをさすらい歩く、流浪する)、播揚(ハヨウ=広く知れ渡るようにする)。

ク)猋=つむじかぜ。うずをまきながら吹き上げる風。「飃」「飄」「飆」と同義。音読みはいずれも「ヒョウ」。猋迅(ヒョウジン=つむじ風のように速いこと、飆塵=ヒョウジン=)、猋飛(ヒョウヒ=つむじ風のようにとぶ)、猋風(ヒョウフウ=つむじ風、飄風=ヒョウフウ=、猋忽=ヒョウコツ=)。

ケ)豎ち=たち。「豎つ」は「たつ」。⏊型にじっと立つ、また、じっと立てる。音読みは「ジュ」。豎立(ジュリツ=まっすぐにたつ、恐れや寒気で身の毛がよだつ、竦立=ショウリツ=)。「たて」の訓みもあり、横豎(オウジュ=たてよこ)。「こもの」の訓みもあり、豎子(ジュシ=こども、小僧め)、豎吏(ジュリ=小役人)、豎宦(ジュカン=宦官)、豎儒(ジュジュ=儒者を軽蔑していうことば、つまらない学者、JUJUではない)。


伊茲事之可樂,固聖賢之所欽。課虛無以責有,叩寂寞而求音。函綿邈於尺素,吐滂沛乎寸心。言恢之而彌廣,思按之而逾深。播芳蕤之馥馥,發青條之森森。粲風飛而猋豎,鬱雲起乎翰林。



【解釈】 そもそも文章を書いて喜びを感じることは、誠に聖人賢者の重んじたところである。虚無の中から有を見出し、静寂の境から音を引き出そうとするのが、文章の作用というものである。わずか一尺の布の表に、悠久の時が書き記され、小さな胸の内より、大いなる文章が流れ出すのである。言葉によって、文章はより壮大になり、思索によって、より深遠なものとなる。こうして作り上げられた文章は、香り高い花を咲かせ、青々とした枝葉を茂らせる。輝く風のように飛び、つむじ風のように舞い起こり、文章の林の上に、雲のように湧き起こるのである。

いかがですか?こんなにも短い文章の中にこれだけの語彙が凝縮されています。そして、文章というものが持つ価値、意味が書き綴られているのです。文章は古来、人々に喜びを与えてきた。古の聖人賢者もそれを旨として文章を書き連ねてきた。無から有を生み出す。静寂から音を導き出す。はるかかなたの歴史が語られる。そして、一つ一つの言葉の集合体が文章であり、その言葉をわれわれは受け継いできたのです。思索の過程や結果を記録に残してきたのです。「播芳蕤之馥馥,發青條之森森」―。「蕤」(ズイ)とは草木の花や葉がしなやかに垂れ下がるさま。陰暦五月のことを「蕤賓」(ズイヒン)ともいいます。まさに草木が生い茂る豊かな季節です。そのような青々と茂り、芳しい馥りを漂わせて人々の心を豊かにするのが文章である。それはさながら、「粲風飛而猋豎,鬱雲起乎翰林」。風が突然舞ったかと思うと、雲が湧き起こるような勢いを持つ。そして文章の林となるのである。「翰林」。いい言葉です。ぜひとも覚えておきましょう。でも、陸機さん、ちょっと酔いすぎ?…

いえいえ、いいんです。文章家は酔ってナンボ。酔わずに書けるかあぁあぁあぁあぁあぁ。。。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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