スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

友の裏切りに傷つくも進むべきは己の道のみ=陶淵明「擬古」1

陶淵明の新シリーズは、「擬古」九首。岩波文庫「陶淵明伝(下)」によると、「擬古(古詩に擬す)とはいっても、実は折り折りの感懐を詠じたもの。劉裕が晋室に禅譲を迫って宋王朝を開祚した永初年間(420-422)、淵明56~57歳の作」とあります。かなりの晩年の作品です。人間を信じられなくなった淵明。かつての友との交流を振り返り、友情とは何か?を問いかけます。信じていた人の裏切りは心を抉り、傷つけます。昔も今も普遍的なテーマです。

「其一」

栄栄たり 1)ソウカの蘭

密密たり 堂前の柳

初め君と別れし時

謂わざりき ア)当に久しかるべしとは

門を出でて万里の客たり

中道にして嘉き友に逢い

未だ言わざるに心先ず酔う

杯酒を接するには在らざるに



1)ソウカ=窓下。

窓の下。「なぁ~んだ、そうかぁ」と思うかもね。同音異義語では「創価、草加、僧伽、簇火、葱花、走舸、霜戈」などが浮かびますが、意外なほど平易な漢字に驚きです。「窓前草不除」(ソウゼンのくさのぞかず=自然のままの状態をたのしむさま、宋の周敦頤が天地自然のままを好み、窓の前の草を刈らなかった故事から)。

ア)行=たび。

よそへ出発すること。やや特殊な表外訓み。行嚢(コウノウ=旅行用の荷物を入れる袋)、行游(コウユウ=故郷を出て他郷でたびをすること)、行色(コウショク=旅立ちのようす、旅に立つときの天気)、行子(コウシ=たびびと)、行器(コウキ=旅行用の道具、ほかい=食べ物を盛って運ぶ道具、形はまるくて高く、ふたがあり、三本の脚が外向きに反ってついている)、行客(コウカク=たびびと)、行衣(コウイ=旅のよそおい)。

榮榮窗下蘭 密密堂前柳
初與君別時 不謂行當久
出門萬裏客 中道逢嘉友
未言心未醉 不在接杯酒



春になって窓の下には蘭が咲き誇り、座敷の前に柳がこんもりと茂っていた。あの日、諸君と別れたとき、諸君の旅がこんなに長引こうとは思いもよらなかった。門を出て万里の客となった君たちは、途中、良い友に出会った。ものも言わぬ先からその人にまいってしまって、酒杯のやりとりをするまでもなかったのであろう。


蘭枯れ 柳も亦た衰う

遂に此の言をしてイ)かしむ

2)タシャす 諸少年

相知ること忠厚ならざりき

意気 人命を傾く

3)リカク 復た何か有らん



2)タシャ=多謝。

くれぐれも申し上げる。この場合の「謝」は「告げる、申し上げる、言葉を飾って言う」。日常用語では「感謝の意をあらわすあいさつのことば」。謝病(シャビョウ=病気を理由に、ことわったり辞職したりすること)。

3)リカク=離隔。

間を離して隔てる、間が離れ隔たる。離弐(リジ=別の考えや気持ちを持つようになってそむく、ふたごころをもってそむく)、離襟(リキン=人にわかれるときの気持ち、別離の情)、離曠(リコウ=別れ別れになって何の便りもないこと、離曠之怨=リコウのうらみ=)、離筵(リエン=別れの酒盛り)、離闊(リカツ=遠く間をあけて離れている、長い間便りもなく離れていること)、離披(リヒ=花がぱっと開くこと、離れてばらばらにひらくこと)、離憂(リユウ=心配事、遠く離れているためのつらさ)。

イ)負かしむ=そむ・かしむ。
「負く」は「そむく」。裏切る、約束を履行しない。負畔(フハン=そむく、「畔」も「そむく」)、負約(フヤク=約束にそむく)。「そむく」はほかに、「孤く、背く、乖く、倍く、剌く、北く、反く、叛く、愎く、畔く、舛く、詭く、辜く」。

蘭枯柳亦衰 遂令此言負
多謝諸少年 相知不忠厚
意氣傾人命 離隔復何有



それからいつしか秋が来て、蘭も枯れ柳も衰えてしまった。とうとう諸君はわたしとの約束(仕官せずにすぐ帰ってきて共に隠棲しようという)を反故にしてしまった。若い気の諸君に申し上げる。あれは深い信頼関係ではなかったのだね。ほんとうに意気投合したのなら、進んで命さえ投げ出すものなのだ。遠く離れていたからとて、何の障害にもなるはずないのだが。

友人と約束を交わしたつもりが一方通行だったというわけです。よくあることです。「安易な爾汝の交わりは危険だ」と曾てこのblogで警鐘を鳴らしたことがありますが、友達だと「認定」できるのは、双方の思い、ベクトルが完全に一致して初めて言えること。言い換えれば、そう簡単には友達を名乗ることはできないのですよね。一見、当たりが良く、馬が合いそうだと思うのもつかの間、ほんの些細なことで相手が気に入らなくなる。

日々顔を突き合わせる「リアルの世界」ならキャラも分かるし、距離感も取れますが、氏素性の知れぬネット上ではあまりにも危険極まりない。調子いい奴らが多いですからね~。いい時はいいがちょっと御機嫌を損ねるとぷい。淵明が経験したことも全く同じですわ。奴さん達は恐らく淵明の決意が本物だとは思わず高をくくっていたのでしょう。冗談だよと。。。甘いなぁ。淵明はそんな軽い奴等とは付き合うべきではなかったでしょうね。残念ながら見る目がなかった。後悔の念も感じつつ、それでも自分は自分と割り切って自分の進むべき道を進むだけです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。